広島県の転出超過が4年連続で全国最多となった。若者の県外流出が深刻で、特に就職のタイミングでの転出が多い。これまでの調査やアンケートによると、広島への郷土愛は強いが、一度は東京や大阪の企業で働きたいという声が多い。
4年連続で全国最多の転出超過
総務省によると、2023年の広島県の転出超過数は1万711人。

前年より6%減少したものの、全国で唯一1万人を超え、依然として全国で最多の状況が4年続いている。

今回から新たな指標として、国外との移動も含めた「社会増減数」も発表されたが、広島は減少数が2,352人となり、1位ではないが、全国で10番目に減少が多かった。
こうした状況を受け、広島県は10代から40代までの広島県出身者や県内の大学などを卒業した人およそ2万人を対象に若者の県外流出の要因を調査した。
若者が流出する3つのタイミング
調査によると、転出超過には主に以下の3つの波がある。

それは「大学進学」「新卒時の就職」「20代後半~40代のUIターン転職」だ。
転出が最も多いのは「新卒就職」のタイミングで、その際の決め手として「居住地」と「就職先」のどちらを重視するかに分かれる。

「居住地を重視する」のは約7割で、そのうち3割が広島県外を選択。その理由として「遊ぶ場所が少ない」「アミューズメント施設が不足している」という声が多い。

もう一つのポイント「就職先を重視する」は3割で、そのうち6割が広島県外を選択。東京や大阪の大企業を志望する傾向が強く、職種や給与面の魅力が理由となっている。
「居住地」「就職先」それぞれの県外選択者を合わせると、新卒就職者の約4割が県外へ出ることになる。

広島の10代の大学生は「東京など都会へのあこがれがある。勤めたい会社が広島にはなく、都会にしかないという人もいる」と住む場所と仕事、両方を広島を出ていく理由としてあげた。
「県外に出て戻るつもりない」4割以上
テレビ新広島はNPO法人ドットジェイピーの協力のもと、広島県内の大学生に「将来、広島で生活したいか」についてアンケート調査をした。

結果は「県外に出て広島に戻るつもりはない」が42%で最も多く、「広島で生活し続けたい」と「一度は県外に出たいが広島に戻るつもり」を合わせても35%だ。
ただ「広島の魅力度」を5段階で評価してもらうと3.99と、ほぼ4つ星という結果。決して低い評価ではない。特に「生活しやすさ」では9割以上の人が評価している。このほかは、以下のような意見が多かった。

ポジティブな意見としては「程よく田舎、程よく都会」「食べ物が美味しい」など。
一方、ネガティブな意見としては「就職先が少ない」「ライブが少ない(いわゆる“広島飛ばし”)」「アミューズメント施設が不足している」など。
現在、東京で暮らしている広島出身の若い社会人に聞くと、暮らしやすさで広島を評価する声が多かった。

就職で東京に来た社会人2年目の女性は「同じ条件の職場が広島にあれば、帰りたい。街や人の雰囲気が自分に合っているから」と語る。

また、やはり就職で東京に来た新卒入社1年目の女性は「いろいろな人と関わり、仕事以外でイベントにも行く機会が多くあるのは良いが、生活面ではやはり広島のほうがいいかなと思う」と、Uターンが頭をよぎるという。
広島でも大手企業で働けるリモートの仕組みを
広島の転出超過を抑えるためには「若者が働きたくなる企業」や「アミューズメントの充実」が必要だ。大学生からは以下のようなアイデアも寄せられた。

「広島に住みながら大手企業で働ける仕組み」が必要。これはリモートワークなどによって、場所を選ばない働き方の構築を意味する。
また「海を活かした観光施策」という瀬戸内海の魅力を活かす方法、そして若者が首都圏に出ていくのなら、結婚後の子育て世代をターゲットに「子育て世代が住みやすい街づくり」を目指すというものもあった。
若者の流出を食い止めるには、「広島の暮らしやすさ」をより際立たせ、大都市に負けない魅力を打ち出すことが求められている。住みやすさを感じる人が多いのなら、新卒就職は県外に出ても、数年後のUターンをターゲットにするのも一手ではないだろうか。
(テレビ新広島)