休日や祝日に体調を崩した子どもを支えてきた岩手県盛岡市の「小児科休日救急当番医」。県内で唯一、小児科を独立して設けているこの制度が、2026年4月から広域化される。医師の高齢化と担い手不足が背景にある一方、少子化が進む中でも受診者数は増加し、現場の負担は深刻だ。制度の現状と課題を追った。

県内唯一の小児科当番制度が広域化

盛岡市の小児科休日救急当番医は、休日や祝日に子どもが体調を崩した際、小児科医による診療を受けられる制度だ。
岩手県内では各自治体が休日当番医制度を設けているが、診療科を分けずに当番医を割り当てている自治体もある。

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その中で盛岡市は、「小児科」「内科」「外科・整形外科」と診療科ごとに当番医を設定しており、小児科を独立して設けているのは県内で盛岡市だけとなっている。
制度は、市から委託を受けた盛岡市医師会が運営している。

この小児科休日当番医が、2026年4月から広域化される。これまでは盛岡市内の12の医療機関が持ち回りで対応してきたが、新たに滝沢市、雫石町、矢巾町、紫波町の5つの医療機関が加わり、計17カ所での持ち回り制に移行する。

この変更により、盛岡市民であっても、状況によっては市の境を越えて受診しなければならないケースが生じることになる。

医師の高齢化で維持が困難

広域化に踏み切った背景には、小児科医の高齢化と担い手不足がある。
盛岡市の小児科休日当番医に参加している医療機関は、2026年3月時点で12にとどまっているが、20年前の2006年には20あった。

当番医は基本的に開業医が請け負っているが、この間、新たに開業したクリニックは4つにとどまり、辞退や閉鎖などにより12の医療機関が当番医を担えなくなった。

2024年時点で、小児科当番医を担う医師の平均年齢は63.4歳。最高齢は76歳で、70歳以上の医師は3人いる。
高齢化は今後も進むとみられ、将来的に担い手がさらに減少することも懸念されている。

少子化でも患者数は増加

一方で、少子化が進んでいるにもかかわらず、休日当番医を受診する患者数は増えている。

盛岡市医師会によると、小児科休日当番医の年間受診者数は、2008年度が6898人だったのに対し、2023年度は7752人と、約850人増加している。

盛岡市向中野「杜のこどもクリニック」
盛岡市向中野「杜のこどもクリニック」

背景にはさまざまな要因があるとみられるが、医療機関がニーズに十分対応しきれない状況に陥っているという。

休日は患者数が1日百人超も…

盛岡市向中野の「杜のこどもクリニック」では、休日当番医を担う日の忙しさが深刻だ。

杜のこどもクリニック・金濱誠己院長
杜のこどもクリニック・金濱誠己院長

金濱誠己院長は「今年度は一番多くて、1日の患者数が130人くらい。休憩は取らずに対応するしかない」と話す。
休日は平日より患者が多い傾向があり、感染症の流行期には2~3倍に増えることもあるという。

盛岡市向中野「杜のこどもクリニック」
盛岡市向中野「杜のこどもクリニック」

当番医の診療時間は原則午後5時までだが、実際にはそれを大きく超えることも少なくない。

金濱院長は「午後5時までの診療だが、それを過ぎて8時、9時と続き、特に年末年始などは日付が変わるまで頑張っている医療機関もある」と現場の実情を語る。

広域化は一時的対応策

当番医を担う医療機関が12から17に増えることについて、金濱院長は「負担は軽減される」と一定の効果を認める。

杜のこどもクリニック・金濱誠己院長
杜のこどもクリニック・金濱誠己院長

一方で、「小児科当番医は減ることはあっても、なかなか増えることはない。今回の体制変更は、持続可能な状態にするための一時的な対応になると思う」と、将来的な対策の必要性を指摘する。

初期救急医療を担うセンター整備検討を市に要望(2025年11月)
初期救急医療を担うセンター整備検討を市に要望(2025年11月)

担い手不足が深刻化する中、盛岡市医師会は2025年11月、小児科を含む初期救急医療を担う新たなセンターの整備を検討するよう市に要望した。

看護師や医療事務、薬剤などを備えた拠点施設に医師が出向くことで、持続的な医療提供が可能になるとしている。これに対し、市は「検討中」としている。

市民に求められる備え

盛岡市保健所の田村聡課長は、「休日当番医の広域化は、あくまでも診療を受ける機会を確保するためのもの。状況を見ながら医師会と連携し、サポート的に対応していきたい」と話す。

杜のこどもクリニック・金濱誠己院長
杜のこどもクリニック・金濱誠己院長

広域化により移動距離が長くなる場合もある中、金濱院長は「子どもに体調の変化がみられた場合、まずは受診の必要性を考えながらケアしてほしい」と呼びかける。

受診を迷った際は、休日や夜間に365日対応している小児救急医療相談「#8000」の活用も勧められている。

岩手めんこいテレビ
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