買い物客が自分で会計作業をする「セルフレジ」。最近、コンビニやスーパーなどでよく見かけるようになった。
スーパーマーケットを運営する企業を対象にした全国調査によると、約8割の企業が、店員が商品をスキャンし支払いは客がする「セミセルフレジ」を導入していて、増加傾向だという。
カートに入れる際、客が自分でバーコードを読み取っていくスタイルや、「完全なる手ぶら決済」など、進化するセルフレジの最前線を取材した。
レジで待たない!?「レジゴー」
岡山市のイオンモール岡山にあるスーパーマーケット「イオンスタイル」で2024年4月、セルフレジ「レジゴー」が導入された。
この記事の画像(18枚)専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンか、店頭で借りられる専用端末機器のどちらか1つをカートにセットして買い物はスタートする。
イオンリテール中四国カンパニー広報・山名貴美香さんの説明を受けながら、OHK・佐藤樹理アナウンサーが「レジゴー」を体験。
まずはサニーレタスを手に取った佐藤アナ。アプリのスタートボタンを押し、スキャンボタンを押す。そしてカメラでバーコードを読み取り、商品をかごに入れる。端末には商品の名前と価格が表示され、アプリの画面上には「サニーレタス 1点」と表示されていた。
レジゴーは、買い物の最後にレジでまとめてスキャンするのではなく、カゴに入れる時に商品をその都度スキャンする仕組みだ。
「イオンスタイル」を運営するイオンリテールが2020年に始めたサービスで、2024年9月現在、全国で300店舗以上が導入している。
利用者からは「レジゴーだとすぐに会計を終わらせられるので、たくさんまとめて買う」「この子(子供)が好きなので(使っています)。必ず使います」「設置されているのが珍しくて子供が使いたがる」などの声が聞かれ、一緒に買い物をしていた子供は「楽しい」と答えていた。
商品を全てカゴに入れたら残るは会計だけ。レジ待ちの時間がほとんど発生しないため、時間を有効に使うことができる。
しかし、なかには「(スキャンを)忘れて(カゴに)入れてしまい、スキャンしないことがたまにある。それでいやです」といった声も聞かれた。
レジゴーで平均購入額が約1.3倍に
レジゴーの導入店舗でこのサービスを利用している客の割合は約2割。しかし、店側にはある意外な効果があった。導入後、客1人当たりの平均購入額が約1.3倍になったという。
イオンリテール中四国カンパニー広報・山名さんは「レジゴーを使わずにレジを通った人よりも、レジゴーを使ってレジを通った人のほうが、1人当たりの客単価が約130パーセント多いとのデータが出ている」と話す。
小売業のIT事情に詳しい、店舗のICT活用研究所 郡司昇代表は、その理由について「カートを使うから楽。スキャンしてカートに入れるだけでいい。商品を売り場から持ってきてスキャンすることに専念できる。重さを感じないので、買い上げ点数が必ず上がる」と分析する。
レジゴーの利用者の多くは買い物カートを使うため、たくさん商品を買っても重さを感じることなく身軽に歩くことができる。そのため店内を広く周り、普段よりも多く買い物をする可能性が高まるという。
郡司代表によると、スーパー・ドラッグストア、ホームセンターなど業態にもよるが、一般的にカートを使うと2~3割上がるという。
レジゴーの導入で1人当たりの客単価が30%上がったというデータは、とても興味深い数字だ。
店側のメリットはもちろんだが、スキャンすることが習慣づけば、端末を見ればカゴの中身をひと目で確認でき、買い忘れの防止にもなるということで、客側から見てもメリットがありそうだ。
一方、OHKが行ったアンケートでセルフレジを使ったことがない人に理由を聞くと、「面倒くさい」「使い方が分からない」と回答した人が大半を占めた。
使いこなせれば便利なセルフレジだが、最初は戸惑う人も多いようだ。
財布・スマホも不要“手ぶらで決済”
こうした中、香川県でも人気のうどん店「こがね製麺所」などを展開する会社が2023年、滋賀県でセルフレジを開発する「自動レジ研究所」と協力して開発した画期的なセルフレジを発表した。
それが「完全なる手ぶら決済」。そのセルフレジがあるのは、滋賀県の「こがね製麺 草津栗東店」だ。
まずタッチパネルで、うどんの種類を選ぶ。
一見、普通のセルフうどん店のようだが、実は天井にある複数のカメラが1人1人の客の動きを追跡している。天ぷらや唐揚げなどを手に取ると、その重さの変化から客がどの商品を選んだか自動で把握し、レジにデータを送る。そして最後は、顔認証で会計を行う。
あらかじめ情報を登録する必要はあるが、財布やスマホを取り出すことなく、手ぶらで全て終了する。
店員を介さずに買い物ができる店は今後、増えていくとみられる。
店舗のICT活用研究所 郡司代表は「セルフレジの導入で人件費が削減でき、店には新たなサービスを考える余裕が生まれる」と話す。
店側も消費者側もwin-winとなるようなセルフレジの進化が今後も期待される。
(岡山放送)