「ホームの目の前に桜島見えるの最高すぎませんか」。“映えスポット”として若者にも人気のJR仙巌園駅が、2025年3月15日で開業から1年を迎えた。この新駅の誕生は、鹿児島市磯地区に新たなにぎわいと経済効果をもたらしている。
SNSで注目、一過性ではない人の流れ
3月8日のJR仙巌園駅。週末とあって列車からは多くの人が降りてきた。宮崎・都城から来た家族、そしてドイツからの観光客と、様々な人が桜島と錦江湾を臨む雄大な景観に魅力を感じて足を運んでいる。
「すごい感動しちゃって。『(特急の)指宿のたまて箱』で指宿から来てパチパチ(写真を)撮ったけどここが一番よかった」と話すのは神奈川からの観光客だ。
開業後まもなく、桜島と錦江湾を臨む雄大な景観が注目された仙巌園駅。SNSには日々、磯地区で撮影された様々な写真や動画が投稿されている。「TikTokで見てて『行ってみたいな』って。誰かが行ったのを(SNSに)上げていて」と話す若い女性2人組のように、SNSを通じて磯地区を知り、実際に訪れる人も多い。

経済波及効果は予想の2倍以上
街の変化は確実にデータにも表れている。幕末に島津家別邸として造られた仙巌園。2025年1年間の入園者数が、2024年と比較して約14%増加した。さらに駅の設置を進めてきた磯新駅設置協議会が2025年12月に公表した駅開業に伴う磯エリアでの経済波及効果は、駅開業前の2018年度の試算を2倍以上上回る約15億6000万円にのぼった。

「非常に喜ばしいことだと思う。(予想の)倍ぐらいの数字が出てるっていうのは満足している」。既に解散した磯新駅設置協議会の会長だった藤安秀一氏は振り返る。
駅周辺の飲食店も、一過性ではない人の流れを実感している。郷土菓子・ぢゃんぼ餅(両棒餅)店の店主は「(仙巌園駅の)開業当時だけじゃない。ずっと客が来る。仙巌園駅を見に来たという人は終わった。仙巌園駅を利用する人が増えている印象」と話す。
新たな観光スポットが続々オープン
このような街の活性化を受けて、磯エリアでは新たな観光スポットが続々とオープンしている。
2026年1月には仙巌園に県特産のサツマイモを使ったスイーツを提供する新店舗がオープン。駅の開業日には磯ビーチハウスにカフェが開業し、2025年4月から2026年1月までに約3万人が利用している。
「学生、若い方の男女のカップルだったり、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒にご家族で来られる方も増えている」とグッドフェローズダイニングの鬼塚智也さんは客層の変化を語る。

2025年9月には磯ビーチハウスの2階に宿泊施設も誕生した。桜島を望むオーシャンビューの絶景が広がる部屋には、県産の竹を使った天井、桜島の溶岩を使った浴室の壁など、県産素材へのこだわりが随所に込められている。もう一つの部屋は畳を基調とした和がモチーフで、個室サウナも設けられ、外壁には桜島のシラスを使った石、室内には霧島産のひのきが使われている。

若者や外国人の新たな楽しみ方
JR鹿児島中央駅から約7分という便利なアクセスにより、高校生をはじめとした若い人や、クルーズ船で鹿児島にやってきた外国人にとって新たな選択肢が生まれた。
地元住民からは「学生なんかが多いかな。きょうも結構(多い)」「海や浜に遊びに来る子たちも多い」との声が聞かれる。浜辺で遊ぶ人たちも「電車で来た」「(電車が)なかったら来ていない」「海がかわいいから(来た)」「写真が映えるので」と新駅の効果を実感している。
卒業証書を手に写真を撮ったり、カフェテラスでのんびり時間を過ごしたりと、磯地区では今、多様な過ごし方がみられるようになった。

海外旅行者も視野に入れた今後の展望
関係者は磯地区がまだ大きな可能性を秘めているという。藤安元会長は「クルーズ船の乗降客をこっちに引っ張ってくる。船を出して、錦江湾の観光やりながら、そして磯に係留してもらう。そういうことも将来考えていくと、海外の旅行者もさらに喜ぶのではないか」と今後の展望を語る。
新駅の誕生に伴い、若者や外国人にもアピールできる観光地としての魅力を高めつつある磯地区。変わり続ける街のこれからに注目だ。
(動画で見る▶「ホームで桜島を眺める贅沢」 JR仙巌園駅が生んだ新しい日常と街のにぎわい)
