10万人に数人といわれる「脊髄腫瘍」を患い突然、車いす生活を余儀なくされた母親が岡山・倉敷市にいる。5歳の娘の夢は「もう一度、お母さんとプールに入ること」。母と娘…共に夢がかなった瞬間を取材した。

胸から下がまひ…車いすでの生活

倉敷市に住む長尾優子さん(41)は、2022年に発症した病気により胸から下がまひしていて、感覚はほとんどない。足を上げようとする際は、腰の辺りの力を使っているという。

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長尾さんは「『脊髄海綿状血管腫』という、まれな病気。簡単に言うと足などにできるあざが、たまたま脊髄にできてしまった」と話す。

長尾さんは、フルマラソンを何度も完走するなど運動が得意だったが突然、車いす生活を余儀なくされた。手術を行い7カ月入院した時、長女の茉南ちゃんは4歳になったばかりだった。

5歳になった茉南ちゃんは「その時、泣いたよ」と振り返り、優子さんも「時々保育園でも涙が出ますと言われたり。今となれば懐かしいけど、長かったね」と語った。

夢が実現 お母さんともう一度プールに

茉南ちゃんには、大切にしている思い出がある。

お母さんが車いす生活になる前、家族でよく遊びに行っていたのがプールだった。

茉南ちゃんの夢は、「もう一度お母さんとプールに入ること」。そこでアミューズメント施設を運営する「イオンファンタジー」の夢を叶えるプロジェクト「ララゆめ」に応募したところ、全国2600以上の中から茉南ちゃんの夢が選ばれた。

優子さんとプールでしたいことを尋ねられ、「一緒に滑りたい」と答えた茉南ちゃん。滑り台で遊びたいようだ。

倉敷市の児島マリンプールを訪れた優子さんたち。茉南ちゃんが「どこ?プール」と、優子さんに問いかける。家族でプールに出かけるのは2年ぶりだ。優子さんは水中用の車いすに乗り換え、シャワーが終わるとゆっくり水の中へと入った。

今回は、障害者の泳ぎを支援するプロが大阪から駆け付けサポート。優子さんと茉南ちゃんは競争を楽しんだ。

さらにお母さんと水中で「あっぷっぷ」と、にらめっこ。茉南ちゃんがプールでやってみたかったことの1つだ。優子さんが「変な顔した!変な顔したでしょ」と笑顔を見せる。

そして優子さんにもうれしいことが!浮力を使うことで、自分の足で少しの間歩くことができた。

親子にとって忘れられない日に

目一杯遊ぶこと約2時間。楽しい時間は、あっという間に過ぎた。

優子さんがプールを歩く姿を見た茉南ちゃんは「びっくりした。潜って、本当に誰も持たずに歩いていてびっくりした」と話し、「楽しかった、まだやりたい」と名残惜しそうだった。

そして優子さんは「忘れられない日だし、これを機会に私も挑戦したいし、娘も自分のやりたいことに挑戦してほしい」と幸せそうに語った。

親子にとって突然の出来事から2年。茉南ちゃんが夢をかなえた日は、お母さんにとってもまた、人生の大きな1ページとなった。

(岡山放送)

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