奄美市住用町の市中学校で、全校生徒ただ1人の卒業式が行われた。卒業生は中村海莉さん1人。在校生もおらず、同校唯一の生徒が学び舎を後にした。2025年度を最後に休校予定の学校で、静寂の中にも温かな感動が包んだ特別な式典となった。

小学校の恩師からスクリーンを通したエール

卒業式では、小学校時代の担任らがスクリーンを通して中村さんにエールを送った。離れた場所からの温かなメッセージに、中村さんは深い感謝の気持ちを表した。

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「中学3年生として過ごしたこの1年は、全校生徒1人という特別な1年でした。決して忘れることのできない私の大切な大切な宝物です」

中村さんの言葉からは、困難な状況の中でも前向きに学校生活を送ってきた様子がうかがえる。一人だけの中学校生活という稀有な体験を、かけがえのない思い出として受け止めていた。

創立150年の歴史に幕 かつては100人以上の児童生徒が学ぶ

市中学校は2025年、併設する小学校と共に創立150年という節目の年を迎えた。長い歴史を持つこの学校は、多い時には児童生徒合わせて100人以上が学んでいたという。しかし時代の流れと共に生徒数は減少し、既に小学校は休校。中学校も2025年度を最後に休校する予定だ。

卒業式に出席した市集落の渡邊正勝区長は、地域住民の心境を代弁するように語った。

「子どもの活気ある声が聞こえないのは寂しい。海莉さんには自分の道を新しく切り開いて歩んでもらいたい」

渡邊区長の言葉には、学校を失う地域の寂しさと、それでも若い世代への期待が込められていた。

9年間の思い出を胸に新たな一歩へ

中村さんは小学校と中学校を同じ校舎で過ごし、実に9年間をこの学校で送った。部活動がなかった中学校生活を振り返りながら、高校への希望を語った。

「小学校、中学校を同じ校舎で過ごしていたので、本当に9年間いろいろな思い出があふれている。中学校で部活動がなかったので、部活に入って仲間と一緒に頑張りたい」

人口減少で各地で学校がなくなる時代。卒業の日に寂しさを抱きながらも、中村さんは次の一歩を踏み出そうと意気込んでいた。一人きりの学校生活で培った自立心と、これから始まる新しい環境への期待が、彼女の表情に表れていた。

150年の歴史を刻んだ市中学校は、最後の卒業生を送り出すことで一つの区切りを迎える。地域の宝として育った一人の少女が、今度は自分の力で新しい道を切り開いていく。

(動画で見る▶「全校生徒1人が巣立つ日」 創立150年の学校が休校へ、贈られた“最後の卒業式”)

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