心身に重度の障害のある子どもたちは全国に約4万3000人、そのうち在宅介護をうけているのは約2万9000人と推計されている。「重い障害があっても、できるだけ他の子どもと同じように子育てをしたい」。そう願いながら懸命に寝たきりの息子の在宅介護を続ける、岡山市のある母親の姿を追った。

在宅介護を選んだワケ

野田山理奈さん(35)と理奈さんの息子・竜晴くん(13)、中学1年生だ。好奇心旺盛でとても活発な子だったという竜晴くん。しかし、1歳半の時に突発性発疹に伴う急性脳症を発症。全身にまひが残り、寝たきりの状態になった。

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母・理奈さん:
病院でひきつけを起こして2時間けいれんして、その日にはもう「峠です」と先生から言われて。その時お腹に下の子がいたが、ショックで早産しかけた。なんでうちの子が、なにか悪いことしたかなとか、なんで私の子だけがこうならないといけないのかとすごく思ったし、当時は毎日泣いていた

自分の意思では身体を動かすことができず、話すこともできなくなった竜晴くん。当時24歳だった理奈さんは病院側から施設に預けることを勧められたが、竜晴くんは夫婦にとって3回の流産を経験したのち、ようやく授かった待望の我が子。片時も離れたくないという思いから、自宅に連れて帰ることを決めた。

母・理奈さん:
(夫婦)2人ともすぐ家に連れて帰ろうとなった。毎年ひきつけを起こした日がくるのが怖かったが、だいぶ落ち着いた時には毎年の誕生日をすごくうれしく思えるようになった。日々の竜ちゃんの成長がいつもうれしかった

介護に仕事…大忙しの日々

現在、岡山市から受け取っている手当は特別児童扶養手当と障害児福祉手当の2種類。しかし竜晴くんの介護には医療費や生活必需品の調達に月10万円ほどかかるため、手当の支給額だけでは十分に足りない。

夫の健太さん(38)は塗装会社で働き、理奈さんはパートに出て家計を助けてきた。

仕事のある日は朝から大忙し。まずは竜晴くんをデイサービスに預けに行く。
理奈さんは、「看護師が医療的ケアや入浴の介助を行ってくれるため安心して仕事に行ける」と話す。

すくすくyell・平田晶奈社長:
看護師が必要な医療的ケアを、家にいる時と同じタイミングで同じようにさせてもらいながら、施設に通院してくる他の子どもたちと一緒に触れ合う時間を作っている

理奈さんは現在、訪問美容師を目指すため、週に5日、美容サロンで働いている。サロンのスタッフは全員女性で、理奈さんのように子育てしながら働く人も多く柔軟な働き方に理解があるといい、理奈さんもデイサービスの利用時間に合わせたシフトで働いている。

IPSE・森本美恵子店長:
(理奈さんは)明るいし前向き。本当に頑張ってくれているし、心強いパートナーだと思っている。一緒に子育てをしていくような気持ちで、もっとたくさんの女性が美容の仕事をあきらめずにやっていけるようにしていきたい

2人の息子を育てながら得た「家族の時間」

仕事が休みの日は、竜晴くんの様子を見ながら昼食を準備する。

母・理奈さん:
ご飯の代わりになる栄養剤。これで普段ご飯を食べている。薬は溶かして注射器に入れて、このまま注入できるようにしている

午後3時。次男の天晴くん(11)が小学校から帰って来る時間だ。
天気が良かったこの日は、お散歩がてら天晴くんを迎えに行くことにした。

帰りは天晴くんがバギーを押して歩く。家ではいつも一緒にいるという2人。帰宅してゲームを始めた天晴くんを竜晴くんも横で見守る。

次男・天晴くん「(Q:お兄ちゃん好き?)めちゃくちゃ。100%」
母・理奈さん「お兄ちゃんの面倒見てくれるんじゃろ?」
次男・天晴くん「うん、いいよ」
次男・天晴くん「(Q:将来何になりたいの?)お医者さん」

次男・天晴くん「(Q:どんなお医者さん?)優しいお医者さんになる」
母・理奈さん「病気治してくれる?」
次男・天晴くん「うん」
母・理奈さん「ありがとう、期待しとくな」
次男・天晴くん「うん」

母・理奈さん:
お互い、いい影響を与えているというか、親としてはいい兄弟だなと思う。2人そろっているのを見た時にすごくうれしいし、楽しい。1人欠けてもダメだと感じる

障害があっても、一生懸命生きていることを知ってほしい。野田山家にはきょうも家族の明るい声が響いている。

(岡山放送)

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