次期衆院選の目標に「野党第一党」と「自公過半数割れ」を掲げる日本維新の会。共に達成すれば「馬場政権」さえ現実味を帯びる。その時、維新が組む相手とは?彼らが目指す国の形とは?FNNの単独取材で迫る。
この記事の画像(10枚)立憲と異なる立ち位置
維新は2024年3月の党大会で、次期衆院選の目標を「野党第一党」と「与党の過半数割れ」とした。立憲民主党とは真っ向勝負になるから、野党同士の選挙協力は一貫して否定する。
政治資金問題でも、立憲とは主張が異なる。たとえば立憲は「政治資金パーティーの全面禁止」をうたうが、維新は「企業団体によるパーティー券購入を禁止」とした。筆者が「弱くないですか?」と聞いてみると、維新・馬場伸幸代表は「今の段階では、高めの球を投げようと思ったらいくらでも投げられる。格好いいことを言うけど、やりませんよ」と立憲に疑いの目を向ける。
維新が掲げる政治改革案は、まず自分たちが率先して実行するという。それが野党各党に広がれば、与党も同調するしかなくなり、政治全体が変わる…という主張だ。実際、会計責任者を議員本人に変更するよう党内に指示。政治資金規正法違反があれば、ダイレクトに議員が罪を問われる仕組みだ。
一方で、個人の政治資金パーティーについては、むしろ推奨する。馬場氏は「後援会の結束を固める、“地力”を強めるためのイベントもある。十把一絡げにすべきではない。党内でも『パーティーはやらなあかん。後援会総会的なパーティーはやった方がいい』と言っている」と語った。
「野党第一党」の座を争う維新と立憲だが、「自公過半数割れ」が実現したらどうするのか。衆院選後の国会では、総理大臣を決める首班指名がある。気が早い話だが、衆院で自民党総裁が過半数を獲得できなければ、野党第一党の党首との決選投票になるだろう。だから、立憲・泉健太代表は「ミッション型内閣」を呼びかけている。政治改革など、限られたミッション(使命)のための連立政権を作ろうというものだ。
これに対し馬場氏は「仮定の話だから、その時が来ないと、どう判断するかは分からない」と前置きした上で、「外交、安全保障、憲法、エネルギーという国家の基本になるところが合致していなかったら、そこから派生してくる政策、法律がうまくまとまるはずがない。今の立憲と組んでも、ろくなことにならないとしか、今は思えない」と疑問を投げかけた。
「『今は』ですか?」と質問を重ねると、「今はね」と答えた馬場氏。立憲の変化次第では可能性がありそうだ。では、自民のことはどう思っているのだろうか。
本音は…自民の方が「まし」?
馬場氏は「自民党って、腐ってもやっぱり、目の前の課題とかこなしていく立場にいるし、責任もある。悪いこともいっぱいあるけど、いいことも時々やっている。野党第一党(立憲)の方々って、何もいいことしてないから」と語る。現時点では、立憲より自民の方が「まし」と考えているようにも聞こえる。
与党過半数割れなら、自民も立憲も、維新に秋波を送るだろう。その際の判断基準について馬場氏は、「どういう組み合わせになったら我々が目指す改革ができるのか、というのが判断の物差しになる。やりたい具体的な政策を、できることが確約される、担保される、そういうポジショニングを必ず取ると思う」と、自らの未来を予想する。
維新が掲げた目標は他にもある。「今後3回以内の衆院選での政権奪取」だ。維新が目指すのはあくまで、「単独過半数による単独政権」である。
維新の「首相候補」は誰?
維新はどんな国を目指すのか。馬場氏は「経済も、政治もちゃんとやって国民が納得してくれるような政治。高齢者の皆さんが安心できる社会づくり。若い人もワクワクドキドキ。少子化の一因は経済的な部分が大きいから、教育無償化もやっていく」と語る。
それを推し進める維新の「首相候補」は、馬場氏なのか。本人は「自信はあんまりないけど、覚悟はしている」と語る。31年前、初めての市議選で「内閣総理大臣を目指してやります」と支援者に約束した瞬間に、腹を固めたのだという。
党内には、吉村洋文共同代表(大阪府知事)もいる。大阪では街頭に立てば黄色い声援が飛ぶ人気者だ。万博が終わったら、知事を辞めて国政に戻るとの見方もくすぶる。馬場氏は「俺は野球で言うと8番キャッチャー、吉村は今や4番でエース。タイプが違う。俺とかが吉村みたいにやったら絶対失敗する。自分は自分らしくやる」と静かに笑う。
維新は過去の常識が通用しない不思議な政党だ。今後何を仕掛けてくるのか、注目する状況が続きそうだ。
執筆:フジテレビ政治部 鈴木祐輔(関西テレビ)