ナワリヌイ氏の葬儀を前に、モスクワ南部バリソフスカエ墓地周辺では、ロシア当局が警戒を強めており、バリケード設置や警察車両での入り口の封鎖を行っている。
ナワリヌイ氏の陣営は、一連のセレモニーをYouTubeで配信する予定だ。

墓地の周辺は厳戒態勢

ロシアの反体制指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏の葬儀が日本時間の1日夜に行われるのを前に、ナワリヌイ氏の遺体が埋葬される予定のモスクワ南部のバリソフスカエ墓地にはバリケードが運び込まれ、警察車両が入り口を封鎖するなどロシア当局が警戒を強めている。

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ナワリヌイ氏の陣営は、日本時間の1日午後8時から教会で葬儀を行い、遺体を埋葬すると発表している。

支持者らに「最後の別れになる」と呼びかけていることから、ロシア当局は多くの人が集まることで抗議活動や暴動に発展するのを警戒しているとみられる。

ここからは、取材センター室長・立石修がお伝えする。

ナワリヌイ氏の葬儀が数時間後に迫ったモスクワでは、緊張が高まっている。
2月29日、FNNモスクワ支局の取材班が撮影した、ナワリヌイ氏が埋葬されるバリソフスカエ墓地の周辺の映像には、バリケードを準備している様子が見え、また警察車両も配備され、既に厳戒態勢が敷かれていた。

墓地の入り口には警察官が立っており、墓地の周りの電柱に監視カメラを取り付けている警察官の姿もあった。

一方で、墓地の建物の屋上では、パラボラアンテナとみられる物体を設置する人の姿が確認できる。ナワリヌイ氏の支持者らは一連のセレモニーをYouTubeで配信する予定で、それに向けて準備をしていると見られる。
通常の回線が遮断されることを警戒して、衛星アンテナを準備しているのだろう。

葬儀が行われるのはモスクワ市内のマリーノ教会で、ナワリヌイ氏がかつて暮らしていた地域にある教会だという。ここも、警察がバリケードを運び込むなど厳戒態勢が敷かれている。
ただ、教会の中を見てみると、ロシア正教の教会で、独特の美しさがある教会だ。
妻のユリアさんは、「伝統的なロシア正教の葬儀で夫を見送りたい」と話していた。
なかなか葬儀を受け入れるところが見つからなかったが、その部分に関しては願いが叶い、良かったという印象を受ける。

これまでも当局は、ナワリヌイ氏を追悼する人々を拘束してきたが、無事に行われるのだろうか。
支持者らは、もちろん警戒している。妻のユリアさんも2月28日にフランスのEU議会でスピーチを行った際に、「警察が葬儀への参列者を拘束する恐れがある」と述べている。
そのため、支持者らも一部始終をカメラで映し、世界に向けて生配信しようとしている。

「血塗られたモンスター」

緊迫した状況が続くロシアだが、2月29日、プーチン大統領はモスクワで年次教書演説を行い、西側と戦う姿勢を改めて強調し、核攻撃についても言及した。

プーチン大統領は「特別な軍事作戦の全ての任務を解決し、国民の主権と安全を守るためにあらゆることをする。戦略核兵器は、確実に使用できる準備が整った状態にある」と話した。
またNATO軍がウクライナに派遣されれば、核戦争の危機があるとも述べた。

先日、フランスのマクロン大統領が「ウクライナへの派兵の可能性も除外するべきでない」と発言したことを受けて、慌てて他の加盟国が否定した。こういった西側の乱れをあざ笑うように、牽制している印象だ。

この年次教書演説はテレビ中継に加えて、映画館でも上映されていて、多くの市民が注目している。映画館での上映は初めてで、改めて強いプーチンを国民にアピールしようとしていると見られる。

ナワリヌイ氏の妻のユリアさんはEUでのスピーチで、プーチン大統領を「血塗られたモンスター」と述べて強く批判した。
しかし、全く意に介していない印象を受ける。

そのスピーチの際、ユリアさんはEUの西側諸国に向かって「一連の制裁ではプーチンを倒せない。考えるだけではプーチンは倒せない」とも述べて、西側諸国の対応にいらだちを見せている。

同様のいらだちは、ゼレンスキー大統領などプーチン氏とダイレクトに戦っている人々に溜まってきている。こういったことを受けて、西側諸国の混乱も今後起きる可能性もあり、それをプーチン大統領は狙っているかもしれない。

反プーチンの人物が亡くなり、ウクライナ劣勢が続いているが、独裁国家が勝利すると、他の独裁国家に拡大する懸念もある。
核を持っている国が強く、持っていない国は侵略されてしまう。
ウクライナも核を持っていたが、放棄させられ、このような事態になっている。
そのことを考えると、自分の国を守るのは自分、他の国は頼れないということを、真剣に考える必要がある。
(「イット!」 3月1日放送より)

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