国内ゴルフツアーの2024シーズン開幕まで約1カ月。注目の集まる男女の新世代選手3人に今季にかける意気込みを聞いた。
2022年全米女子アマチュア選手権で日本人として37年ぶりの優勝を果たし、このオフにプロテストに合格した馬場咲希(18)は、世界を主戦場に見据えている。
この記事の画像(10枚)去年11月のプロテストでは、トップと2打差の2位タイで合格。
「プロと呼ばれることも増えて、自分がプロになったという自覚が湧いているので、これから“馬場咲希プロ”として活動していくという気持ちが芽生えています」
“マニュアル免許”取得に奮闘のワケ
そんな馬場は、最近ゴルフ以外で取り組んでいることを話してくれた。
「マニュアル車の免許を取っている最中です。」
オートマ車全盛の中、なぜマニュアル車の免許なのか。
「今まで車の運転は父にしてもらっていたので、自分はよく車の中で寝ていたんですけど、(これから)自分で運転するとなると車の中で寝るというのもできなくなるんですよね。マニュアル車だったら左手も左足も動かしているので、寝る暇はないかなと思って(笑)」と、独自の眠気防止策を披露して記者会見の会場を沸かせていた。
今年のオフシーズン、馬場はタイで合宿を行い、改めて自分のゴルフと向き合う予定だ。
「シーズン中は特にアプローチの練習ができなかったので、オフ期間中にアプローチの距離感とかを取り戻したいです。あとはティーショットでフェアウェイキープがあまりできなくて、安定感に欠けたので、今年のシーズンインに向けてドライバーで自信を持ってまっすぐ打てるように練習を重点的にやりたいです」
“プロゴルファー馬場咲希”として歩む1年目に期待が集まる。
初優勝へ 期待高まる桑木志穂
そして、女子プロゴルファーの中でツアー初優勝に最も近い、と言われるのが桑木志帆(21)だ。
去年は未勝利ながらメルセデスランキング10位に入るなど、飛躍のシーズンを過ごした。
「優勝こそできなかったんですけど、シード権獲得を目標に1年間やってきて難なくクリアできましたし、メルセデスランキングTOP10で終わることができたので、すごくいい1年でした」
大会の順位に応じて得られるメルセデスポイント。ポイントランキング上位50名には翌シーズンのシード権が付与されるため、50位と51位では雲泥の差がある。
「2022年、ランキング51位だった時は、最終戦を1打差で予選落ちしてしまいました。それがすごく悔しくて、今でも泣いたのを覚えています。昨シーズンはそういった気持ちを絶対にしたくない、と思いながら1試合1試合集中してやってきたので、すごく成長できたなと感じています」
順風満帆な1年間に見えるが、『資生堂レディス』ではプレーオフで敗れ2位、『TOTOジャパンクラシック』では1打差の2位など、悔しさも人一倍味わってきた。
「すごく悔しいというのが一番だったんですけど、『最終日、最終組、3人で戦っている』という感じがして、なかなかない緊張感でプレーできたのは大きな財産になりました」
そしてプロ4年目の2024年シーズンに向けては意欲を見せる。
「(新ボールで)年明けに沖縄で風の強い中ラウンドを回りましたが、風に負けることなく飛距離を出せたので感動しました」
ニューボールとともに、今年こそ、念願の初優勝をつかみ取るに違いない。
そして更なる先を見据えている。
「今シーズン必ず初優勝はしたいんですけど、世界ランキングも上げて海外メジャーに挑戦できるような順位で終えたいです。最終的には日本でもトップ5になれるような選手になりたいです」
ゴルフ界を牽引する存在へ 清水大成
さらに、初優勝が待たれる若手選手が、男子プロゴルフ界でもトップクラスの飛ばし屋、清水大成(25)だ。
去年はスイング改造に着手したという清水。その成果は1年間で少しずつ体に染みついてきたという。
「前のシーズンよりは理想のスイングができるようになってきたんですけど、試合では求められる場所に打てていない時の方が多かったので、去年のオフで足りなかった分を今年のオフで補ってシーズンに向かいたいです」
2022年、ドライバーの平均飛距離は全体2位の302.72ヤード。
昨シーズンはさらに飛距離が伸び、最終成績でも自己最高位タイの3位に入るなど、優勝争いに絡むことも多くなってきた。
「夏場はスイングもなじんできて、『勝ちに近づいてきたな』というところで、シーズン終盤に失速してしまいました。一つのミスによって、それまでやっていたスイングが信じられなくなってしまう状況に陥ってしまったので、今年のオフで改善したいです」と語り、あと一歩に向けて前を向いた。
ボールとクラブがコンタクトする瞬間は一瞬。わずか数センチ、数ミリの精度の世界で戦っているプロゴルファー。2024シーズンをともに戦うボールについて、清水は信頼を寄せる。
「イメージ通りのボールが打てますし、スピンがかかりすぎるなどの悩みは新ボールにしてからないですね」
新ボールが初優勝に向けて背中を押してくれることは間違いない。
「応援してくださっている方に恩返しできるように早く優勝して、たくさんメディアで見ていただけるように今年一年も頑張りたいと思います」
我々メディア陣に対する気配りも忘れない25歳。今年大ブレイクを予感させる逸材は、白い歯を輝かせて会場を後にした。