「戦うということが楽しすぎて」
その言葉には原英莉花(24)らしさが詰まっていた。
2023シーズン、日本女子オープンで優勝を果たし、通算5勝目をマーク。ドライバー平均飛距離は国内女子ツアー全体で8位の255.21ヤード。パーオン率でもツアー3位の75.3%と、高水準のパフォーマンスを見せた。

「2022年シーズンは勝つことができなかったんですけど、昨シーズンは優勝できたので、悔しいこともありましたけど満足できるシーズンだったと思います」
2024シーズン開幕まで約1カ月。彼女の現在地とこれまでの軌跡について、胸の内を語ってくれた。
「腰のヘルニア手術」大きな決断の理由
昨シーズンはまさに激動の1年だった。
シーズンが始まって約3カ月経った5月。ゴルファーにとって全ての動きの軸となる腰の手術に踏み切ったのだ。
原は手術を決断した理由をこう振り返る。

「3年間痛みには悩まされていたんですけど、動けなくなってしまったというのが一番大きい理由でした。満足できる練習すらできないまま試合に挑むのがすごく嫌で、このままだとゴルフを辞めるしかないなと思ったので手術を決めました」
不退転の覚悟。その決断には少しの後悔もない。
「痛みがあったのが長かったので、フィールドに立っていても楽しくない、自信がないけど勝ちたいという気持ちでプレーするのがすごく辛かったので、手術をして良かったなと思います」

入院生活やリハビリなど、我々が想像もできないような日々を乗り越え、8月の『北海道Meijiカップ』で復帰。
「戦うということが楽しすぎて、日々反省と試行錯誤をしながらツアーを転戦するのがとても楽しかったです。落ちるところまで落ちたので、成長していくことしかなかったので、毎日がすごく充実していたと思います」
そして復帰してからわずか2カ月後の10月、奇跡的な復活を原は成し遂げる。
『日本女子オープン』優勝。約2年ぶりの勝利だった。
「初日に予想もしていない天気などもあったんですけど、その中でも運良く試合展開を運べたので、これは頑張るしかないなと思って4日間戦い抜きました」

「これから前向きにゴルフに取り組んでいく、背中を押してくれる結果でした」
さまざまな経験を乗り越え、迎えた今シーズンのオフ。原はどのような取り組みに着手しているのか。

「自分に期待してオフシーズンに入ったんですけど、トレーニングできていなかった期間が長かったので、理想と現実のギャップに落ち込んだ時期もありました。ただ、無理せず一歩一歩と考えながら、シーズンに入ってからもトレーニングや体のケアを重点に置いて、一つずつ成長していけることをメインに頑張りたいです」
そんな原は今シーズン、これまで使っていたボールの新モデルを使用し戦いに臨む。
その記者発表の場で今回のインタビューに応じてくれた原は、その感触をこう話した。

「ラフが深いアプローチの時も、雨が降ってボールが濡れている時もボールが滑らなくなりました」
今シーズンは、相棒ならぬ“相ボール”でさらに安定感が向上することが期待される。
イメージは「毎日違う脳みそ」
最後に、以前聞いた言葉の意味についても聞いてみた。
自分の中で大切にしているマインドは何か、と尋ねた際に「毎日違う自分」と答えていたからだ。
これは『毎日脱皮する』イメージなのか、それとも『毎日違う自分が卵から生まれる』イメージなのか。その答えを尋ねると…。

「毎日脳みそが違う、みたいな。寝て起きたら違う人みたいな。こんな感じです(笑)」
なかなか独特な表現である。自分の中で内容を咀嚼をしていると、思わぬ言葉が返ってきた。

「逆に、毎日同じ人ですか?」
そう問われると、たしかに”毎日同じ人”という訳ではない。
芯を食った、説得力のある言葉には原英莉花の人生が詰まっているような感じがした。
「今年も優勝して、できれば複数回優勝したいのと、海外を見据えた戦いができるように頑張ります」
常に未来に目を向け、成長を続ける“毎日違う原英莉花”に、今年も目が離せない。