暑さの原因は窓にあった?

夏場の電気代が気になる季節。冷房の効きが悪いと感じる原因のひとつは家の中で最も熱の出入りが激しい「窓」にあると言われている。そこでいま注目されているのが既存の窓の内側に新たな窓を設ける「内窓」だ。断熱や防音に加え、省エネにもつながるとされ国の補助金対象にもなっている。

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きっかけは防音──後藤さん宅の事例

沖縄県の南風原(はえばる)町に住む後藤岳二さんが内窓の導入を決めたのは家族が弾くピアノの音が近隣に漏れるのを防ぎたいというのがきっかけだった。調べていくうちに内窓には遮熱効果があり冷暖房の効率が格段に上がることを知った。 

光熱費が高止まりする中、電気をこまめに消すなどの努力にも限界がある。窓からの熱の出入りを抑えることで冷房効率を上げる──その効果に期待を寄せた。

工事を終えた後、妻の恵美子さんは「二重窓で圧迫感が出るのではと心配していたが、むしろ部屋が明るく感じられるようになった」と笑顔を見せた。

数字で見る内窓の実力

窓やドアの商品開発や販売を手掛けるYKK APのショールームには内窓の効果を体感できるスペースが設けられている。

館長の嶺井愛梨沙さんは「窓は家の中で最も熱の出入りが大きい場所。そこを断熱することで快適な住環境が整う」と話す。

内窓の構造はシンプルだ。既存の窓の内側に新たな窓を設けて空気層をつくることで外気との断熱層となる。この空気層が夏は熱気の侵入を防ぎ、冬は暖かさを逃さない役割を果たす。

ショールームでの実験では内窓のない状態ではフレーム温度が39.1℃、ガラス面は36.6℃だったが内窓を設置することでそれぞれ30.1℃、26.9℃にまで下がったという。およそ10℃の温度差は体感としても大きな違いを生む。

内窓の効果を支えているのは樹脂製の熱伝導率が低いフレームと特殊コーティングを施したガラス。冷暖房の効率向上により、エアコンの設定温度を極端に下げずとも快適に過ごせるようになり、試算では年間の消費電力量を約23%削減できるとされている。

国は補助金 沖縄では浸透せず

こうした省エネ効果を後押しするため国は「先進的窓リノベ事業」を実施。環境省の制度で家庭でのCO₂排出削減を目的に1戸あたり最大200万円の補助金が支給される。実際にこの制度を利用した後藤さんは、設置費用の約半分を補助金でまかなうことができたという。

YKK APショールームでもリビングにある2枚スライド式の大窓に内窓を設置した場合、約6万5000円の補助が出る。しかし沖縄県内での制度活用はまだ広がっていない。2024年度には全国で申請数が2万戸を超える地域もあるが沖縄での申請はわずか49戸。嶺井館長は「制度そのものが十分に知られていないことが原因ではないか」と話している。

暮らしを変える「窓リノベ」──今がチャンス

内窓の設置は単なる防音や断熱対策にとどまらず、光熱費削減や環境負荷軽減など家庭にとって多くのメリットをもたらす。国の補助金制度は予算が上限に達すると終了するため検討するなら早めの申し込みが肝心だ。

補助金申請には制度に登録された業者に施工を依頼することが条件となる。内窓の導入を検討している場合、施工業者が登録済みかどうかを事前に確認が必要だ。エネルギー価格が高騰する今だからこそ、快適な暮らしと省エネを同時に叶える“内窓リノベーション”が静かな注目を集めている。

(沖縄テレビ)

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