1月〜2月にかけて広島県内各地で開かれる恒例の「カキ祭り」。コロナ禍が明けて4年ぶりに…という矢先に、2024年は“生育不良”を理由にやむを得ず中止する動きもある。今、瀬戸内海で起きている異変とは?

中止の理由は“カキの生育不良”

広島が生産量日本一を誇る「カキ」。冬の味覚の代表格だが、今シーズンはある異変が起きている。

瀬戸内海に浮かぶカキいかだと水揚げの様子
瀬戸内海に浮かぶカキいかだと水揚げの様子
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江田島市は2月に開催を予定していた「カキ祭り」の中止を発表した。理由はカキの“生育不良”だ。

1月から2月にかけて広島県内各地で開かれる「カキ祭り」。生産者たちが協力し、例年、旬のおいしさを振る舞っていたが、今シーズンは「宮島カキ祭り」と呉市音戸町の「田原カキ祭り」も生育不良で開催が見送られるなど影響が広がっている。

気候変動で旬の時期に「ズレ」?

広島市中区にある水産加工会社「カネウ」。カキの仕入れから加工までを一貫して担っている。

五十川裕明 記者:
工場には立派な大きなカキがたくさんあるように見えますが、異変はあるのでしょうか

県内約50の生産者と幅広く取引をしているが、今シーズンは旬の時期に「ズレ」を感じているという。

カネウ・村田泰隆 社長:
海水温が上がっていることと、気候変動で雨が降る時期に雨が降らない。雨が降らないと、当然、山から水も流れてきませんし、カキが成長する上で必要な植物性プランクトンが海に出てこない。こんな傾向は初めてですね

12月まで、カキ1個あたりの身の大きさは例年と比べ1割ほど“小ぶり”だった。海水温が下がらないとカキは餌のプランクトンを食べても身に栄養分を蓄えようとしない。そのため、冷え込みが増した1月からようやく“身太り”が戻ってきた。

カネウ・村田泰隆 社長:
例年に比べてタイミングがずれています。言ってしまえば、年が明けて寒に入ったこの時期から3月~4月に一番プリプリとしたいいカキができますので

さらに、影響は市場にも波及している。

広島市中央卸売市場 吉文・吉本崇仁 専務:
カキだけじゃなく魚も、環境の変化や海の変化で水揚げが例年とは違ってきています

量と出店数を減らして開催する漁協も

一方で「カキ祭り」の開催を決めた漁協もある。大竹市玖波の漁協は、開催するものの例年とは違う対応を迫られている。

くば漁業協同組合・北林隆 組合長:
皆さんに満足いくカキが提供できるか分からない状況がありますから、出荷量を少し減らすことによっていいカキを提供させていただこうと思っています

コロナ禍が明けて4年ぶりに開く「おおたけカキ水産まつり」。1月28日に「焼きガキ」や「カキ飯」などを提供する予定だが、カキの生育の遅れを受け、出店数を縮小することにした。

画像は2011年に取材した「おおたけカキ水産まつり」
画像は2011年に取材した「おおたけカキ水産まつり」

くば漁業協同組合・北林隆 組合長:
地域の皆さんにお世話になって水産業の継続ができているという思いがあります。安く食べていただける安心安全なカキを届けられるように頑張っていきたい

カキ祭りで提供される「焼きガキ」
カキ祭りで提供される「焼きガキ」

瀬戸内海の目に見えない変化は、冬の味覚「カキ」にも密接に関わっていた。
ただし、カキ祭り中止の要因は「生育不良」だけではなさそうだ。生産者の高齢化が進む中、コロナ禍で4年ぶりの開催。「一度中断していたものを再開しようにも、人手の面で困難」と話すところもあった。広島の恒例イベントとして楽しみにしている人が多い一方で、気候変動の影響と運営側の高齢化が大きな課題になっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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