カレーの具材に何を入れる?

それでは、ルーが主流である夕食のカレーライスでは、どういった野菜が使われているのだろうか。

生鮮野菜のランキングでは、1位のたまねぎ、2位のにんじん、3位のじゃがいもは2015年と比べて減少していたが、4位以下を圧倒する使用率でカレーライスの定番野菜となっていた。

ランキング上位のうち、2015年との比較で増加が目立ったのが5位のなす。季節ごとの使用率をみると、夏から秋にかけて使用率が伸びており、旬の食材を活用しているものと見られる。

また、使用率は限られるものの、15位のさつまいもや17位のしいたけも増加していた。

さつまいもは皮をむかずに調理でき、食物繊維やビタミンなどの栄養も豊富な野菜だ。しいたけ以外にも、しめじ、エリンギ、まいたけなど多くのきのこ類がランクインしている。きのこ類も食物繊維やビタミンなどの栄養を多く含むとされており、さまざまな食材を取り入れながら、健康によいカレーを作ろうとしているものと考えられる。

減少した生鮮のにんにくやしょうがは、チューブなどの加工調味料の使用率は伸びていた。ブロッコリーやほうれん草も生鮮野菜では減少が見られたものの、冷凍野菜の使用率は増加している。できる限り手間をかけずに準備しようと工夫しているようだ。

鶏肉にシフトへ!「牛肉」の関西も変化

夕食のカレーライスで使用する、肉類のトレンドについても確認したい。

2015年と2023年で上位1~3位の顔ぶれに変化はなかったものの、1位の豚小間切れが1.09倍、2位の鶏ももが1.21倍と増えているのに対し、3位の牛小間切れが0.94倍と減少していた。

また、2023年4位の鶏むねが1.08倍と増加する一方で、5位の牛ブロック肉は0.52倍と半分近くまで減少している。コスパの良さからか、牛肉から鶏肉へのシフトが進んでいるのかもしれない。

東は豚、西は牛とも言われるように、地域によっても傾向に違いがあったのだろうか。

2023年の使用率1位が豚小間切れ、2位が鶏ももであるのは、すべての地域で共通となった。ただし、京阪神では、1位の豚小間切れの使用率が京浜・東海よりも小さく、3位の牛小間切れの使用率が京浜・東海よりも大きかった。

ただ、京阪神の2023年対2015年比をみると、2位の鶏ももが1.58倍にまで伸長。牛肉では、3位の牛小間切れは2015年の水準を維持しつつも、牛ブロック肉は0.57倍、牛すじは0.53倍にまで減少していた。同じ牛肉でも、小間切れはコスパがよく、鶏ももの人気が高まっていることから、節約志向の強まりで牛肉の使用が減少してきていると推察される。

カレーには、味や食材も多種多様だ。辛口は北海道、東北、北陸・甲信越に多かったように、好みにも地域によって違いがあることが分かった。牛肉を食べる地域性のある関西でさえ、牛肉から鶏肉へのシフトするなど、時代による変化も出てきている。

レトルトカレーの台頭には、簡便化志向の高まりがあるのだろう。簡便化志向の高さはルーカレーでも見られており、チューブ調味料や冷凍野菜を活用するなど、手間をかけないよう工夫していた。

いろいろなアレンジ方法、楽しみ方があるカレー。みなさんにとってのお気に入りのカレーはどういったものだろうか。

(執筆:インテージ市場アナリスト・木地利光)

(イラスト:さいとうひさし)

木地 利光
木地 利光

市場調査会社インテージに2012年入社。
消費財メーカーの担当を経て、現在は市場アナリストとしてデータ分析を行っている。
食品、飲料、雑貨といった消費財のPOSデータを分析し、消費トレンドを読み解く。
売れた商品ランキング、各種消費財の業界動向、年代・地域別の消費動向などを
テーマに取材・出演・寄稿の実績多数。
株式会社インテージ
マーケティングリサーチ/インサイト事業で、アジアNo.1*のインテージグループの中核企業。
全国約6000店舗の小売店から販売データを収集している「SRI+」、全国約5万人の買い物情報を収集している「SCI」、アクティブユーザー数387万人の「ネット調査」など、日本最大級のデータ・サービスを保有。
自動車、金融、テレビ・スマートフォンなどのメディア接触状況なども調査し、社内に専門家・アナリストも多数擁する。
*「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2023」に基づく(グループ連結売上高ベース)