11月10日はトイレの日。日本トイレ協会が「いいトイレ」と読めることから制定した日だ。トイレに必要なトイレットペーパーで、コンパクトでありながら従来品よりも長く巻かれた長尺タイプの人気が高まっている。店舗に行った時に、2倍巻き・3倍巻きなどの文字を目にすることも増えたのではないだろうか。

長尺が人気!ダブルはシングルの1.6倍

従来品よりも1.5倍以上長く巻かれたものを長尺とした場合、2022年の長尺トイレットペーパーの市場規模金額は5年前の2017年と比べおよそ3倍にまで拡大した。交換回数を減らせること、省スペースで備蓄できることなどの特徴が支持されているのだろう。

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長尺タイプの中でも特に人気となっているのがダブルで、2022年時点ではシングルよりも1.6倍も多く売れている。

長尺タイプは、従来品よりも圧縮して作られているため肌触りが硬くなりがちだ。ダブルは長尺タイプでも肌触りを維持しやすいため、人気となっていると考えられる。

シングル・ダブルどっちを購入?
シングル・ダブルどっちを購入?

シングル・ダブルの人気に違いが見られるのは、長尺タイプだけではない。

インテージが全国の男女約5万人の生活者から買い物データを継続的に聴取している「SCI」から、トイレットペーパー全般でも、地域や家族構成などによってもシングル・ダブルの人気が異なっていることが分かった。

「東でダブル、西でシングル優勢」の説は…いかに!?

まず地域別にみると、全国計ではシングル42.4%に対しダブル57.3%と、ダブルが優勢となっている。トリプルも微量ながらあるものの、シングルとダブルが主流だ。

ところが、近畿の63.4%を筆頭として、四国55.4%、中国51.4%とシングルが優勢な地域も見られた。これらの地域では、以前からシングルの構成比が大きく、シングルを好む傾向があるようだ。

一方、ダブルの構成比については、東海が75.0%と最も大きく4分の3を占めていた。東北が67.0%、九州が61.2%と続いている。

あなたの地域は?表でわかりやすく見る

東海は全国の中でもトイレットペーパーの生産量がとりわけ多い地域だ。東海だけではなく、東北や九州でも、各地域の地場メーカーが取り扱うダブルの商品の寄与が見られた。

これらの地域では、再生紙を使用して価格を抑えた商品が取りそろっているが、シングルだとゴワゴワしてしまうこともあるので、ダブルの人気に拍車がかかっているのだろうか。

子どもの成長に合わせシングル増加の傾向

次に、家族構成別にみると、子供の年齢が高くなるほど、シングルの構成比が大きくなることが分かった。

子供の年齢が0~2歳ではダブルが66.6%とおよそ3分の2を占めているが、12歳以上ではシングル47.7%、ダブル52.0%と両者が拮抗している。また、子供の年齢が高くなるにつれ、トイレットペーパー全体の購入量が多くなる傾向も見られた。

子供の年齢で変化?各年齢別に表でわかりやすく見る

子供の年齢が低い時は、親が子供の世話をすることが多い。子供の肌も刺激に対して敏感な時期であり、少しでも肌触りがよいものを使いたいという親心でダブルが優勢となったのかもしれない。子育ての負担自体が重い時期でもある。さっと巻き取って使いやすいダブルの方が、親にとっても優しいようにも捉えられる。

子供は成長にするにつれ、自分でトイレに行くようになるが、トイレットペーパーの使用量も多くなりがちだ。自分で買っていない子供は、親と比べて節約意識が弱く、ダブルではついつい必要な量以上に巻き取ってしまうこともあるのだろう。そうした使い過ぎを防ぐために、シングルを買う家庭が多いものと推察される。

子供は成長すると1人でトイレに行くように!
子供は成長すると1人でトイレに行くように!

トイレットペーパーのシングル・ダブル事情は、地域性だけではなく、子供の年齢によっても違いが見られた。生活者の価値観やライフスタイルによる影響と言えるだろう。今日どういった商品を買うのかといった選択にも、人それぞれの理由があるのかもしれない。

※数値インテージSCI調べ 2023年1月~9月

(執筆:インテージ市場アナリスト・木地利光)

(イラスト:さいとうひさし)

木地 利光
木地 利光

市場調査会社インテージに2012年入社。
消費財メーカーの担当を経て、現在は市場アナリストとしてデータ分析を行っている。
食品、飲料、雑貨といった消費財のPOSデータを分析し、消費トレンドを読み解く。
売れた商品ランキング、各種消費財の業界動向、年代・地域別の消費動向などを
テーマに取材・出演・寄稿の実績多数。
株式会社インテージ
マーケティングリサーチ/インサイト事業で、アジアNo.1*のインテージグループの中核企業。
全国約6000店舗の小売店から販売データを収集している「SRI+」、全国約5万人の買い物情報を収集している「SCI」、アクティブユーザー数387万人の「ネット調査」など、日本最大級のデータ・サービスを保有。
自動車、金融、テレビ・スマートフォンなどのメディア接触状況なども調査し、社内に専門家・アナリストも多数擁する。
*「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2023」に基づく(グループ連結売上高ベース)