冬の代表的な定番料理と言ったら鍋。近年では、鍋に入れるだけで手軽に楽しめる鍋つゆが人気だ。

とりわけ好調なのが、ポーションや固形状のものなど1つで1人分と小分けにされた個食鍋つゆだ。単身世帯や夫婦のみの世帯のように少人数の世帯でも、必要な量だけ使うことができる商品である。

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鍋つゆ市場全体の市場規模が5年前の2017年の430億円と比べ、2022年には504億円と1.2倍に増加。その内、個食鍋つゆは、2022年に116億円と1.5倍にまで成長した。(インテージSRI+より)

鍋料理には全国津々浦々のご当地鍋があるように、鍋つゆの売れ筋商品も地域により異なっている。実際にあなたが住んでいる地域ではどうなのか。インテージが全国の男女約5万人の生活者から買い物データを継続的に聴取している「SCI」から、1人当たりの購入金額を地域別に見てみたい。

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四国には鍋好きが多い!?全体で1.2倍に

鍋つゆ全体の購入が多かったのは四国で、全国平均の1.2倍となっている。寄せ鍋やキムチ鍋といった定番系だけではなく、豆乳鍋やトマト鍋などさまざまな鍋つゆが多く買われていた。

四国は特産品に讃岐うどんがあり、うどんやそうめんなど麺類の消費が多い地域だ。また、海に囲まれた地形から海産物に恵まれている。麺類や海産物などの具材を生かせる料理として、鍋が人気なのではないだろうか。

九州はご当地鍋が圧倒的人気

一方で、地域色が鮮明となった地域も見られた。

全国平均と比較して、九州では水炊き3.36倍、モツ鍋2.25倍となっている。九州には豚骨ラーメンや明太子などもあり、独自の食文化が根強いのか。九州名物とも言えるご当地鍋が圧倒的に人気のようだ。

東海もカレー鍋1.62倍、味噌鍋1.52倍と地域性が顕著となっている。東海に本社を置くカレー専門店チェーンが監修した商品や、東海名物の辛味噌を使った商品が人気だ。

北海道でも味噌鍋が1.27倍と多く買われているが、人気なのは札幌の味噌ラーメン店が監修した商品。同じ味噌鍋でも、東海と北海道では売れ筋商品に違いが見られた。

世帯でも違う!購入トップは「夫婦のみ」

世帯構成によっても、鍋つゆの購入に違いが見られた。

夫婦のみの世帯では、鍋つゆ全体の購入金額は、平均の1.11倍となっている。種類別にみると、水炊き1.71倍、モツ鍋1.34倍、魚介鍋1.29倍と特徴的な味の鍋が多く買われていた。夫婦だけなので、自分たちの好きなものを自由に選ぶことができるためだろう。幅広い鍋が多く買われていることから、飽きがこないよう、いろいろな種類の鍋を楽しんでいるようだ。

夫婦のみの世帯と対照的なのが単身世帯で、購入金額が平均の0.68倍と目立って少ない。単身世帯では、個食鍋つゆの購入が伸びているものの、3~4人向けなどの大きなサイズの商品の購入が2人以上の世帯と比べると少ないためだ。

一方、2世代同居の世帯では、トマト鍋1.17倍、カレー鍋1.11倍と子供の好きそうな味が多く買われていた。子供が喜んで食べてくれそうなものを優先して選んでいるようにも見える。カレー鍋では、子供の好きそうなチーズ入りのものがとりわけ人気となっている。

3世代同居の世帯では、寄せ鍋1.15倍、味噌鍋1.12倍と昔からある定番の鍋の人気が見られた。どの年代の人にとっても食べやすい味が選ばれやすいものと考えられる。

地域だけではなく世帯構成によっても、鍋つゆの売れ筋商品が異なることが分かった。味も種類も多様化し、定番の鍋料理も人それぞれなのだろう。

(執筆:インテージ市場アナリスト・木地利光)

(イラスト:さいとうひさし)

木地 利光
木地 利光

市場調査会社インテージに2012年入社。
消費財メーカーの担当を経て、現在は市場アナリストとしてデータ分析を行っている。
食品、飲料、雑貨といった消費財のPOSデータを分析し、消費トレンドを読み解く。
売れた商品ランキング、各種消費財の業界動向、年代・地域別の消費動向などを
テーマに取材・出演・寄稿の実績多数。
株式会社インテージ
マーケティングリサーチ/インサイト事業で、アジアNo.1*のインテージグループの中核企業。
全国約6000店舗の小売店から販売データを収集している「SRI+」、全国約5万人の買い物情報を収集している「SCI」、アクティブユーザー数387万人の「ネット調査」など、日本最大級のデータ・サービスを保有。
自動車、金融、テレビ・スマートフォンなどのメディア接触状況なども調査し、社内に専門家・アナリストも多数擁する。
*「ESOMAR's Global Top-50 Insights Companies 2023」に基づく(グループ連結売上高ベース)