駅のロッカーの多機能化が進んでいる。荷物を預けるだけでなく、宅配業者の荷物が受け取れたり、コインロッカーに入れた荷物を宅配業者に発送できるようになるのだ。

JR東日本スマートロジスティクスとJR東日本は、「予約・預入・受取・発送」の4つの機能を1台で利用できる多機能ロッカー「マルチエキューブ」を10月31日に東京駅(改札外・丸の内地下南口)に1台、11月1日に新宿駅(改札外・ペンギン広場前階段下)に1台、2日に大宮駅(改札外・北口ニューシャトル改札前)に2台設置した。

多機能ロッカー「マルチエキューブ」イメージ図(画像提供:JR東日本スマートロジスティクス)
多機能ロッカー「マルチエキューブ」イメージ図(画像提供:JR東日本スマートロジスティクス)
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ロッカーを多機能化することにより、駅を物流の拠点とし、ECビジネスにおけるラストワンマイルの課題や物流の2024年問題が抱えるドライバー不足などの社会的課題の解決に貢献することを目指しているという。

「受取」については、今後、宅配物や各種ECサイトの商品をマルチエキューブで受け取りができるように準備を進めている。「発送」についても、現在、準備中ということだ。

「マルチエキューブ」が実現するサービスの将来像(画像提供:JR東日本スマートロジスティクス)
「マルチエキューブ」が実現するサービスの将来像(画像提供:JR東日本スマートロジスティクス)

多機能ロッカーは、この3駅を皮切りに今年度内に首都圏の駅構内に約100台(約3000口)、そして今後3年間で約1000台(約30000口)を導入する予定だ。

まだまだ準備中の部分も多いが、駅のコインロッカーで荷物が受け取れれば、宅配業者の負担軽減になりそうだ。また昼間は不在がちな人も、仕事帰りに受け取れるのであれば便利なはずだ。

では、この多機能ロッカーの整備が進むことで、私達にどんな利点があるのか? JR東日本スマートロジスティクスの担当者に詳しく話を聞いてみた。

狙いは「駅ロッカーの受取で再配達を削減」

――なぜ多機能ロッカーの整備を進めている?

予約・預入・受取・発送の4つの機能を有するマルチエキューブですが、首都圏ターミナル駅は預入を中心とした利用、郊外駅では受取・発送を中心とした利用、と場所やニーズに応じて割り当てるサービスに可変性を持たせております。

お客さまにとっては最寄り駅、通勤先、旅行先で同じロッカーでいろいろな用途でご利用頂けます。この可変性(フレキシビリティ)はマルチエキューブの魅力の一つですが、いろいろな駅に設置することでいろいろなサービスでご利用いただくために増やそうと計画中です。


――ネット通販の荷物を受け取りたいという要望はあった?

サプライ側の視点になりますが、ネット通販をご自宅まで再配達することが2024年問題で厳しくなるなか、駅のロッカーでの受取で再配達を削減したいというニーズがありました。

またネット通販ではないですが、エキナカ店舗や駅ビルでも営業時間には受け取れないけど何とか営業時間外に受け取れないかというご要望もあり、それをロッカーでの受取で解決できないかとご提案をしているところです。


――最も想定しているのはどんな利用?

首都圏ターミナル駅では預入を主に想定しております。郊外駅は平日を中心とした受取・発送と預入のハイブリッドを目指しています。


――ロッカーが設置されている場所は、もともとどんなスペースだった?

現在コインロッカーを置いている箇所が中心となります。従来のコインロッカーから多機能ロッカーに切り替わることで、ボックスの稼働を預入以外でも受取・発送に割り当てるという考え方で新たなニーズを掘り起こしたいと考えております。

地域活性化や手ぶら観光も視野

――今後、どんな駅に設置される予定?

預入、予約は首都圏ターミナルを中心にニーズが高い一方、郊外駅では受取や発送のニーズが高いことを想定しており、首都圏ターミナル駅以外にも郊外駅にも設置を検討しております。


――増える予定の機能はある?

駅ビル商品の受け取り、駅ナカ商品の受け取り、更には宅配便事業者との連携をすすめます。今後駅で預かった荷物をホテルや空港へ届ければ手ぶら観光に貢献できます。


――利用者からの反応は?

まだ10月31日に設置したばかりなので特筆すべきことはございません。一方通常の駅のロッカーは「常開」で開いているボックスに荷物を預けその後決済となりますが、マルチエキューブは「常閉」で最初に決済し、その後扉が開き荷物を預けるというように「順番」が変わります。

この順番の変化が気になっておりましたが、初日の東京駅でお客さまがスムーズに預入れてくださりホッとしています。


――多機能ロッカーが増えることは、私達にどんなメリットがある?

例えば働くビジネスマンを中心に店舗の営業時間には受け取れないけれど何とか営業時間外に受け取れるようにすることで家族へのプレゼントを受け取れるような機会を増やします。これはお客さまにとっても営業時間外に、すぐ受け取れるというメリットがあるほか、店舗側でも売り上げの拡大が見込めます。

また、ロッカーでの受取を活用することで、地域の生産者が首都圏で地域産品の受け渡しができたり、駅前商店街の商品を駅のロッカーで受け渡しができるようにすることで駅のロッカーを中心に地域振興、活性化にもつなげたいと考えております。

また、スーツケースを預け、ホテルや空港に発送するという機能も充実させ、インバウンドを中心として観光客の手ぶら観光を推進します。これにより更なる消費拡大と新幹線や電車の社内混雑緩和にも貢献したいと考えております。



多機能ロッカーの用途として、今後、駅前商店街の商品の受け渡しやスーツケースをホテルや空港に発送することなども考えているということだ。機能が拡充されることで、私達の暮らしはより便利になっていきそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。