かつてないほどの注目度だ。広島の路面電車が、いよいよ駅ビル2階へ乗り入れる。
新しい「駅前大橋ルート」は8月3日開業。その瞬間を待ちわびる声が広がる中、一足早く報道陣や関係者に試乗の機会が与えられた。
“駆け上がる”路面電車を初体験
7月27日、試乗会当日。大の鉄道好きで知られる野川諭生キャスターが乗り込んだのは、広島電鉄(広電)の最新鋭「グリーンムーバー・エイペックス」。広電全体でも10編成目となる新しい車両だ。

「稲荷町の電停から乗ります。これが、新しい駅前大橋線をのぼっていくんですね。楽しみです」
駅前大橋ルートは広島市南区の比治山町交差点からJR広島駅の駅ビル2階に至る約1.1キロ。緩やかに見えるその軌道に、実は4%という勾配が潜んでいる。

野川キャスターを乗せた路面電車が動き出した。新ルートの取材で何度も訪れたエリア。しかし、ここからは完全に未体験ゾーンだ。
「電車が駆け上がっていきます。比治山通りとクロスしながら、ぐんぐんと加速するのがわかります」
最新鋭の車両とあって振動はほとんどなく、静かで力強い走行音。窓の外では、となりを走る自動車が坂を下るように遠ざかっていく。やがて眼下に大州通りをまたぎ、視界が一気に開けた。
駅ビルの新ホームに集まる視線
「いよいよ駅ビル2階。広電の新ホームにスーッと入っていきます。いいですね~」
3月にオープンした「ミナモア」の影響でにぎわう2階フロアに、路面電車が吸い込まれるように入線していく。

この景色そのものが注目の的。あらゆる方向から視線が注がれ、駅ビルの舞台に路面電車という“主役”が登場したようにも見える。
このようにJRの駅ビルに路面電車が乗り入れるのは、全国で初めて。

この日は広島市の松井市長やJR西日本広島支社の飯田支社長など、広電と共にプロジェクトを進めてきた関係者も一足先に試乗。その乗り心地を確かめた。
広島電鉄・仮井康裕社長は新ホームで「上からも横からも、すべて見られている空間。非常に注目度が高く、期待の大きさをひしひしと感じます。最後の仕上げをきっちり行い、8月3日を迎えたい」とあいさつした。
駅前大橋ルートは8月3日開業。運転士の習熟訓練や全車両の乗り入れ試験も順調に進み、いよいよ舞台の幕が上がろうとしている。
(テレビ新広島)