日本で初めてJRの駅ビル2階に路面電車が乗り入れる広島電鉄の新ルート。開業が迫り試運転の光景に鉄道ファンや市民から熱い視線が注がれる。
一方、長年親しまれた旧ルートは一部区間が廃線に。惜しまれつつも、街は次の時代へと動き出している。

「寂しさもある」 消えゆく路線

2025年8月3日、広島電鉄の新たな歴史が始まる。
広島駅南口の再整備に伴い、路面電車が駅ビル2階に直接乗り入れる「駅前大橋ルート」が開業予定。大部分の工事が完了し、現在は運転の習熟や設備確認のための試運転が連日行われている。

一方、新ルート開業の陰で、姿を消す区間もある。広島駅〜猿猴橋町〜的場町のルートが、8月3日をもって廃線となるのだ。

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鉄道ファンからは惜別の声が聞かれた。
「この路線は昔から乗ってきた路線なので、新線開業は嬉しい反面、一抹の寂しさもありますね。ただ、荒神橋の道路幅が狭く、交通状況を考えると致し方ないと思う」

猿猴橋町電停を週1回ほど使っていたという利用者は「ちょっと目的地まで遠くなるが、道が狭いので新しくなるのはいいと思います。特に荒神橋は1車線なのか2車線なのかわからない幅になっているので、線路が撤去されて2車線になるなら嬉しい」と話す。

廃線となる広島駅〜的場町ルート
廃線となる広島駅〜的場町ルート

広島駅を発着するすべての路面電車が通るこの区間。とくに猿猴橋町電停付近は、車の混雑や信号の影響を受けやすく、ラッシュ時には広島駅手前で“電車の渋滞”が発生しやすい地点だった。

“廃線跡”の再整備、にぎわい空間計画

廃線後の空間がどう活用されるのか。広島市と地域の町内会などは2022年冬から勉強会を重ね、再整備の方針を検討してきた。

廃線となる区間の再整備イメージ
廃線となる区間の再整備イメージ

レールのあった中央部には2車線の車道を整備。歩道の幅も広げ、現在の車道部分にはベンチや植栽を設ける“にぎわい空間”が誕生する予定だ。
また、猿猴橋町電停の歴史を伝える解説板や、レールのモニュメントなどを設置する案も出ている。

さらに、駅前大橋ルートの開業に合わせて、広島市中心部の回遊性を高める「循環ルート」の工事を8月3日から開始。これに伴い、工事期間中は「的場町」「段原一丁目」の両電停が利用できなくなる。

変わりゆく広島の玄関口。
新たな“顔”としての機能を担う駅前大橋ルートと、長年市民に親しまれてきた旧ルート。消えゆく風景に寂しさをにじませつつも、未来への期待が膨らんでいる。
歴史的なスタートまで、あと1カ月を切った。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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