4つの市民襲撃事件で、1審で死刑判決などを受けた特定危険指定暴力団「工藤会」最高幹部2人の控訴審の2日目。1審での無罪主張から一転、犯行を指示したことを認めた組織ナンバー2が証言台に立った。

控訴審の第2回公判 注目の被告人質問

9月27日に福岡高裁で行われた被告人質問。弁護人から自身が関与した事件について聞かれた田上不美夫被告(67)は、「看護師事件と歯科医師事件です」と二つの事件に関与したことを認めた。

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また、「どう関与したか」については「傷つけるように指示をしました」と答えた。

初めて本人が口にした事件への関与。殺人や組織犯罪処罰法違反などの罪に問われ、1審で無期懲役の判決を受けた「五代目工藤会」ナンバー2で会長の田上被告。

9月27日、福岡高裁で開かれた控訴審の第2回公判。注目の被告人質問が行われた。

起訴状によると田上被告は、工藤会トップで総裁の野村悟被告(76)と共謀し、1998年、大型港湾工事などへの影響力を持っていたといわれた元漁協組合長、梶原国弘さん(当時70)が射殺された事件など4つの市民襲撃事件を起こしたとされている。

田上被告らは、一貫して全面無罪主張を続け自らの潔白をアピールした。

弁護人(2020年8月・福岡地裁):
工藤会は、組員が“カタギ(一般人)”に迷惑をかけることを認めているのか?

田上被告:
認めてはおりません

また、組員に対し、カタギの人に迷惑をかけないよう指導していたのか、との質問に対しては
「毎月していました」と答えた。

全面無罪主張から一転…

2021年8月、1審の福岡地裁は、犯行を裏付ける直接的証拠がない中、野村被告を4事件の「首謀者」と認定。野村被告に死刑、田上被告に無期懲役を言い渡した。野村被告と田上被告は判決を不服として控訴した。

9月13日に始まった控訴審では、冒頭からこれまでの主張を大きく覆す発言が飛び出した。

控訴趣意書(看護師刺傷事件 9月13日・福岡高裁):
看護師に少し痛い思いをさせる必要があるとして、「ほおをはつって(傷つけて)、尻を刺せ、大きなけがをさせるなよ」と指示して犯行を実行させた

弁護側は、4つの事件のうち2つの事件について、田上被告が当時組織ナンバー3の菊地敬吾被告(51)に“独断で犯行を指示した”と主張を変えたのだ。

さらに弁護側は、菊地被告が個人的な恨みで元警部銃撃を指示したと主張。元漁協組合長が射殺された事件については、元工藤会幹部たちが独断で実行したと訴えた。

田上被告「無罪判決が出ると思っていた」

そして9月27日に行われた控訴審の被告人質問。田上被告は1審の全面無罪主張を変更した理由について、野村被告に下された死刑判決が理由だと語った。

田上被告:
びっくりしました。無罪判決が出ると思っていました。何で総裁が共犯になるのかと思いました。何で死刑なのか。私も否認すれば(無罪主張が)通ると思ってました。総裁まで巻き込んで本当に申し訳ない気持ちです

弁護人:
家族は?

田上被告:
泣いていました。「お父さんは、そんなことしてないよね」って。やるせない、恥ずかしいです。情けない。事実は話したくなかった

さらに、田上被告は野村被告へ抱いている自らの心情を語った。

(テレビ西日本)

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