もうすぐ迎える食欲の秋。
そんな季節に外食する際、シェフのこだわりがキラリと光るレストランで料理を楽しみたい。一方で世の中には、こだわり過ぎて想像より“ナナメ上”に変化を遂げたレストランも存在する。
今回の「ナナメ上調査団」は「コスパこだわり過ぎレストラン」「食べづらい!?レストラン」「一口目こだわり過ぎレストラン」まで、ナナメ上なレストランを取材した。
まずは、味や内装のこだわりが光る、“ひと味違う”ステキなレストランから。
少量多品なレストラン
今年4月に東京ソラマチにオープンした中華レストラン「Series the Sky(シリーズ ザ スカイ)」。
3年連続ミシュラン一つ星の「Series(シリーズ)」の総料理長・金子優貴さんが手がける店だ。
この記事の画像(23枚)そんな金子さんがこだわったのは料理の品数。「少量多品というコンセプトでやっていて、全部で26品小さなお料理が出てくるんです」と語る。
「いろいろな種類をたくさん食べて欲しい」という思いから、26品のディナーコースを8800円から堪能できるという。
中でもオススメは、A5ランクの山形牛サーロインをさっとお湯に通して特製ダレに絡めて食べる「よだれ牛(ぎゅう)」。
艶のある、なめらかな食感がたまらない、ひと品となっている。
味だけでなく、入口や内装にこだわったレストランも。
入口が分からないレストラン
東京・品川区の目黒駅近くにある、創作料理が自慢の「なっぱごちそう 目黒」。
鶏肉のジューシーさとネギのシャキシャキ感がクセになる迫力満点の「鶏のざくざく揚げ 葱たっぷりたれ」や「霜降り和牛の特大サーロイン寿司」などが人気の店だ。
しかし、この店では一風変わったこだわりがあった。
それが入り口。本棚のように見えて、実はこの本棚が入り口なのだという。
店長の新井雅人さんは「隠すなら徹底的に隠す!隠しきりたいというところでやっていますね」と語るが、確かにこれは分かりづらい。
店内に入るためには、本棚の一部の取っ手をつかんで開けて入っていく。
さらに中へ入ると9個のボタンが設置されている。
どれか1つのボタンを押すと自動扉が開き、店内に入ることができるという仕掛けになっている。
発見するワクワクや喜びを感じて欲しいと、こんな入り口にしたのだそう。
ちなみに、正解のボタンは毎日設定し直しているため、来店するたびに答えが違うという仕掛けも楽しむことができる。
ステキなこだわりが光るレストランがある中、シェフや店主のこだわりが、ちょっとナナメ上に進化したレストランもあった。
コスパに徹底的にこだわるレストラン
1998年オープンの滋賀・近江八幡市にある「ROSIER SAUVAGE(ロジェ ソバージュ)」。
本格的なフレンチのフルコースを1650円という破格の値段で楽しめるという。
なぜ、そんなコスパの良さを実現できるのか。
店内は24席のアットホームな空間。
見た目は一般的なレストランと変わりはないが、ランチの忙しい時間でも、オーナーシェフの萩野幸男さんが1人で忙しく切り盛りしていた。
萩野さんは「パートさんもいましたけどコロナの直前ぐらいに1人でやり始めました。オードブルの量を増やしたんです。ということは原価がかかる。それでもう1人でやり始めました」と話す。
つまり、値段を変えず、お手軽に本格フレンチのフルコースを楽しんで欲しいが、材料費はかかるため、人を雇う余裕もない。
そうであれば全部1人でやってしまおう、と徹底的にコストをおさえているのだという。
しかし萩野さん1人であるため、ランチの準備を行いながら、ディナーの仕込みも同時進行で行う。そのため、料理を食べてもらうまでに、とにかく時間がかかってしまうのだそう。
一体、どれほど時間がかかるのか。
実際に全7品のランチ「オープン記念コース」をオーダーするが、1時間経過しても、何も出てこない。
さらに時は過ぎ、間もなく2時間が経過するというところで、1品目が登場する。
1品目は、牛肉や鴨肉、サーモンやマグロなどの食材をふんだんに使用したオードブル。
調査員は「この(バジルの)ソースとお魚がすごく合っておいしいです」と待ちに待ったオードブルを堪能。
その後は、約30分後にパン、その20分後にスープが届き、さらに、待つこと1時間強。
4品目のオーブン焼きにしたマダイをパートブリックというパイで包んだ魚料理が出てくる。
時間はかかりまくっているが、見た目も味も本格派だ。
そして、ステーキの上にきのこの詰め物とチーズをのせ、グラタン仕立てにした肉料理が登場。
サラダ、デザートのケーキ、食後のコーヒーと続き、結局、全ての料理が出揃ったのは最初のオーダーから約5時間後だった。
「忙しくても手抜きはだめ」と、妥協は許さないオーナーの荻野さん。
気になる方は、時間に余裕をもって行ってみてもいいかもしれない。
続いては、メッセージ性が強すぎるレストラン。
食べづらい!?レストラン
名古屋市にある「レスト ケイ ヤマウチ」。
この店は、地元・愛知で育てられた食材の命に感謝して食材と正面から向き合い、本来の味を最大限に引き出した本格フレンチが食べられるという。
独創的な「景色」を皿の上に描くなど、さまざまな料理を見た目でも楽むことができる。
オーナーシェフの山内賢一郎さんは「おいしく料理ができるのは当たり前なのですが、お料理プラス楽しいというものがお料理を通じて提供できたら」と語る。
そして名物料理が“名古屋メシ”として知られる手羽先。
しかし、白い布が覆いかぶされている大きめのモノが運ばれてきた。
手羽先にしては大きすぎる気がすると思っていると、白い布が取られ、中から出てきたのは鳥かご。
手羽先を鳥かごに入れて提供する、この料理名は“さえずり聞こえる手羽先”。
鳥かごの中には、ちょっとリアルな鳥の人形と手羽先もあり、さらに「ピヨピヨ」と、鳥かごの中に仕込んであるスピーカーから鳥の鳴き声も聞こえてくる。
正直、食べにくい料理のような気もするが、なぜ鳥かごに入れようと思ったのだろうか。
「愛知県の名物で何か作れればいいなと思っていたところ、ホームセンターに行った時、たまたま鳥かごが目に入ってきた。『ここに手羽先を入れたら面白いんじゃないか!?』というのが最初ですね」(「レスト ケイ ヤマウチ」オーナーシェフ山内賢一郎さん)
直感的に思いついたこのサプライズ料理。
オーナーシェフの山内さんは客に提供したときの様子を「ずっと鳴き声がなりながら食べているので、お客様によっては『食べづらい』『ピヨピヨ鳴いている』…異様な風景ですね」と語った。
続いては、“一口”を大切にしすぎるレストラン。
“最初の一口”にこだわりすぎるレストラン
佐賀市にある、カレー専門店「白山文雅(しらやまぶんが)」。
クラシックな雰囲気の店内で本格カレーが楽しめる名店だ。
そこで調査員は「“最初の一口”で記憶に刻みたい!」というオーナーの思いが込められた、一番人気の「セレクト2色カレー(1600円)」を注文。
ビーフやシーフード、チキンなど9種類の中から2種類選べるというもので、調査員はビーフときのこをチョイスした。
甘み・辛味・塩味が調和した深みのある味わいの「伝統のビーフカレー」と、4種類のきのこをふんだんに使用し、牛乳をベースにしてまろやかに仕上げた「森のきのこカレー」だ。
調査員は「お肉がほろほろでとてもやわらかくておいしいです」と食事を楽しむが、オーナーの言う“記憶に刻まれる”のは、カレーのおいしさだけではないという。
ご飯は“マンガ盛り”派の調査員が衝撃を受けたライスの量だ。
調査員にとって「ライスの量が少なすぎる!」とついツッコんでしまう量だが、出てきたライスは、大皿の中心にちょこんと乗せられ、その量は35グラム。
しかし、この盛り付けも先代からのこだわりだと、オーナーシェフの上野さんは言う。
「フランス料理を食べていただくイメージ。(先代は)フランス料理屋と並行して、カレーも提供していたのですが、その提供の仕方だったり、味の深みだったり、そこから逸脱しないようにして、意識してやっています」
確かに最初の一口で記憶に刻まれる味と量になっている。
ちなみに、ライスはおかわり自由なのだという。
気になるナナメ上なレストランで、おいしい料理を楽しんでみるといつもとは違う食欲の秋を過ごせるかもしれない。
(ノンストップ!『ナナメ上調査団』より 2023年8月29日放送)