何かと忙しい年末年始に重宝するグルメの一つが「レトルトカレー」。
オーソドックスな定番だけでなく、実は今、その土地ならではの味、地元の名店の味などを手軽に食べられる“ご当地レトルトカレー”も続々と登場している。
特定のカルチャーをより深く味わう「沼から来た。」では今回、「レトルトカレー」の沼にハマった専門家が、底知れない魅力を紹介する。
“フランス料理とマリアージュ”した絶品フレンチカレーや、合わせるのは“ライスではなく麺”の“スリランカカレー”も登場。
さらに、達人直伝のレトルトカレーをよりおいしく食べられるテクニックも紹介していく。
あなたも“レトルトカレー沼”にハマってみては。
約1万食の味を知るマニアが解説
オススメを紹介してくれる“レトルトカレー沼の住人”は、カレー総合研究所所長・井上岳久さん。
全国にあるカレーの店など9000軒以上を制覇し、レトルトカレーは約1万種類以上の味を知る。
この記事の画像(18枚)昔は独特の“レトルト臭”があったが今は改良され、いろいろな種類のカレーを作ることができるようになり、おいしく進化しているという「レトルトカレー」。
「ご当地食材や地域性の発信ツールとして、全国で飛躍的に数が増えており、毎日新発見のカレーを楽しんでいます」という井上さんのレトルトカレーを紹介していく。
北海道の「スープカレー」や石川県の「金沢カレー」など、王道のカレーから珍しいカレーまでを挙げてくれたがが、実はカレーは主に3種類に分けられるという。
・欧風カレー系…粉やルウを使った王道カレー
・インドカレー系…キーマカレー・スパイスカレーなど
・進化形カレー系…スープカレー・和風カレーなど
「『欧風カレー』はヨーロッパで生まれた、カレー粉やルウなどを使い、洋風のだしで作る、みなさんが慣れ親しんでいるカレー。
『インドカレー』はキーマカレーや、小麦粉を使わずスパイスで作るスパイスカレーなど。さらにスープカレーや和風など「進化形」があります」
大阪「あまからカレー」
次は“レトルトカレーマニア”の井上さんがオススメする、5つのレトルトカレーをピックアップ。
一口食べると甘くて、その後に辛みがくる大阪「あまからカレー」。大阪では定番で人気なのだという。
エスビーのレトルトは、“あまから”の代表格の店「白銀亭(はくぎんてい)」が監修しており、大阪で定番のカレーの味を再現している。
「大阪は“あまから”文化みたいのがあって、『インデアンカレー』という有名なお店に弟子入りした方が独立したり、インスパイアーされて同じような味を作ったりしているので、大阪では“あまから”カレーが多いです」
ちなみにこのカレーを食べる時に「飲んで欲しい!」と、井上さんオススメするのは「炭酸水」。
「カレーに合わせるのは水が一番ですが、最近はよりスッキリする『炭酸水』にハマっています。炭酸水だとカレーを食べた後のキレがよく、後味がスッキリするのでオススメです」
大阪「スパイスカレー」
“カレーマニア”の井上さんがオススメする2つ目のレトルトカレーも大阪。
大阪「スパイスカレー」だ。
「欧風カレー」が人気な大阪だが、実は全国的にブームの“スパイスカレー”の発信地でもあり、スパイスカレーの名店が多いという。
中でも井上さんオススメなのが「牛豚キーマカレー」。
「カルダモンの香りが存分に味わえ、ブナシメジやゴボウなどが入った独創的なスパイスカレー。牛と豚両方のひき肉が入っており、両方のコクや旨みを引き出しています」
ちなみにカレーに入れるお肉は、明確な線引きをするのは難しいが、使われるお肉にも地域差があるという。
「カレーの肉は、東日本では『豚肉』、西日本では『牛肉』が定番とされています。九州では養鶏場が多いので『鶏肉』が多い傾向で、鳥取県も鶏肉の需要が高いですね」
神奈川「フレンチカレー」
“カレーマニア”の井上さんがオススメする3つ目のレトルトカレーは、神奈川「フレンチカレー」。
「フレンチカレー」とは、フランス料理のソースの技法で作るオリジナルカレー。
「昆布だしのカレーとジャガイモのポタージュという2種類のルーが入っています。それぞれ食べてもおいしいですが、“あいがけ”すると、和と洋、それぞれの味やマリアージュも楽しめます」
横浜は多国籍の街のため、外国人向けの料理店が多い。
働く外国人も多く、ランチ用にカジュアルフレンチの店が増え、手軽に食べられるカレーを提供するようになり「フレンチカレー」の人気が広がったと言われている。
「カレーは普通、最初から最後まで基本同じ味だが、それだと飽きることも。これは2つを合わせることで味の変化を楽しむことができます」
山形「大人の甘口遊佐カレー」
4つ目のオススメは山形の「大人の甘口遊佐カレー」。
山形県遊佐町(ゆざまち)から誕生した「遊佐カレー」。
子ども向けの甘口を大人でも楽しめるように、辛みなどが融合した味わいに仕上げ、「大人の甘口」としている。
具材がないように見えるが、具材が溶けるほど煮込んでおり、遊佐町の特産品「パプリカ」がたっぷりカレーに入っているという。
「調査してみると山形だけでなく、東北の方は『甘口』派が多い。山形県の人は外食でカレーを食べようという人が少ない。おうちカレーが主流で、中でも甘口の代表格『バーモントカレー』が人気で、甘口派が多いのはその影響と言われています」
福岡「スリランカカレー」
5つ目のオススメが福岡の「スリランカカレー」。
「スリランカカレー」とは辛さがとても強く、とろみがない、さらっとした口当たりのカレーのこと。
ライスなどを真ん中に、囲うように数種類のカレーを盛って混ぜて食べるのが特徴。
「ツナパハのヌードルカリー完全再現セット」はすべて手作業で作るため、週に120食が限界で、売り切れ必死の人気のカレーだという。
スリランカではカレーを注文すると「観光客用にします?現地用にします?」と聞かれるほど辛いそう。
「ツナパハ」のカレーはスリランカのシェフが作っているが、日本人に合うように、福岡風スリランカカレーとしてアレンジされているという。
「私はカレーを食べる時、ビーフンで食べることが多いです。ご飯だとそんなに量が食べられないけど、ビーフンだとサラサラと食べられます。スリランカでもカレーをビーフンで食べる料理がいっぱいあり、オススメですよ」
ここまでたくさんのレトルトカレーを紹介してきたが、最後は「レトルトカレーをよりおいしく食べるワザ」を紹介していく。
レトルトカレーの調理テク
井上さんいわく、レトルトカレーをおいしく食べるための大切なポイントは3つ。
・温め方
・温めた袋をかける前によくふる
・お好みの具材をトッピング
パッケージに書いてある推奨方法で温めるのが基本だというが、井上さんのオススメは「湯せん」。
「湯せんか、電子レンジかはもちろんお好みですが、湯せんの方が均一に温められるので、私は湯せん派です」
そして温めた後にも重要なポイントがある。
「温めてからすぐにライスにかけるのではなく、袋の端をもってよく振るのがポイントです。保存している間に油などが分離しているレトルトがあるので、よく振って混ぜることで、本来の味わいを引き出せます」
また、食べる時の一手間でよりおいしく食べることができるという。
「レトルトは家やお店のカレーと比べると、どうしても具材が少なめなので、お好みの具材を追加でトッピングがオススメです。炒めた野菜や肉、フライドオニオンなどが彩どりや食べ応え、食感なども楽しめます。
またレトルトカレーに入っているスパイスだけでなく、さらに追いスパイスするのもオススメで、よりカレーらしさを堪能できると思います」
まだまだ底が知れない“レトルトカレー沼”。
今後もどんな新しいレトルトカレーが出てくるのか、目が離せない。
(ノンストップ!『沼から来た。』より 2023年12月20日放送)