気温とともに“湿度”が上昇する中、熱中症とみられる症状で病院に搬送されるケースが増えている。

総務省消防庁によると、今年5月の熱中症での救急搬送人数は、去年同月を上回った。

本格的な暑さが到来する前に、我々はどういった準備をすれば良いのか。

今やるべき「体質づくり」と外出時の熱中症対策について、埼玉慈恵病院の藤永剛副院長に聞いた。

高い“湿度”に要注意

ーー熱中症の一番の要因は?

熱中症は、同じ気温でも「湿度」が高いか、低いかによって救急車の搬送台数が違います。
湿度が高いと熱が体にこもってしまうため熱中症になる方が増えるんです。

なんで湿度が高いと熱中症が多くなるかというと、汗を上手に蒸発させられないからです。

埼玉慈恵病院・藤永剛副院長
埼玉慈恵病院・藤永剛副院長
この記事の画像(7枚)

体が熱くなると、熱を下げるために汗が出ますが、その汗が乾くときにはじめて熱が下がります。

汗の役目はそこにあるのですが、湿度が高く空気がジメジメしていると、洗濯物が乾きにくいのと一緒で、汗も蒸発しにくくなります。

つまり、湿度によって汗が蒸発しにくいから、「熱を下げる作用」が十分に働かなくなってしまい、それで熱が体内にこもりやすくなってしまいます。
 

ーー今年の熱中症患者の増え方は例年に比べてどう?

出だしが早かったのと、総務省消防庁の統計によると、今年5月の熱中症での救急搬送の人数は、前年同月を上回っています。

5月1日~28日のデータで、去年は1948人だったのに対して、今年は3441人です。

今年はこれから梅雨入りするのでどうなるかわかりませんが、増え続ける可能性はあります。
(※インタビュー時は梅雨入り前)

適度な運動で“汗をかく”体質づくり

本格的な夏を迎える前に藤永副院長は、こまめな水分補給の習慣と、適度な運動による“汗を自発的にかく”体質づくりが大事だと話す。

特に筋肉には水分が貯えられるため、ウォーキングはお勧めだという。

(イメージ)
(イメージ)

ーー今できる対策は?

今すぐできる対策としては、日々の気温、湿度、暑さ指数をチェックして、室温が28度を超えるようだったら躊躇なく冷房をつける。

蒸し蒸しする場合は、湿度は60%以下を目標にしてエアコンをつける。

服装は脱ぎ着しやすい上着を活用し、こまめな水分補給の習慣をつけましょう。

そして、めまいや立ち眩み、だるさなどといった体が出すサインに気付いて熱中症を疑いましょう。

(イメージ)
(イメージ)

一方、事前に準備が必要な対策としては、“暑熱順化”といって、汗を自発的にかく体質づくりです。

例えば、少し暖かい日に外で運動したり、多めに歩いたり、大股で早歩きしたりしてちょっと汗をかくことをお勧めします。運動することで筋肉もつくので、筋肉には水分が貯えられるため、大変お勧めです。

運動ができない方は、半身浴でもいいのでお風呂に入るとかサウナで自発的に汗をかくことをしましょう。

(イメージ)
(イメージ)

最後に、日常の体調管理です。

3食しっかり食べて、質の良い睡眠をとる。酒の飲み過ぎは脱水状態になるので適度な量に抑えることが大切です。
また、持病がある方はいつも以上にしっかりと管理することが大事です。

手のひらの「AVA血管」を冷却

そして最近注目なのが、冷えたペットボトルで“手のひら”を冷やす熱中症予防。

手のひらには体温調節を担う「AVA血管」という特殊な血管があり、それを冷やすことが効果的だという。

ーー手のひらを冷やすコツは?

これは最近のトレンドですが、手のひらには「AVA血管」(動静脈吻合)という特殊な血管があって、この血管の役目は主に、体温調節です。

手のひらにある「AVA血管」(動静脈吻合)が体温調節
手のひらにある「AVA血管」(動静脈吻合)が体温調節

特に暑い時は、この血管が熱を放出してくれるので、この血管を適度に冷やすことが効果的です。そのためには自動販売機から出てきてちょっと置いた程度の10~15度のペットボトルを握ることが良いです。

昔は、洗面器に両手を浸けていましたが、それだと持ち歩きできないので、外でもとれる対策として、暑いなと思ったらペットボトルを手のひらに持つとそれだけで予防になります。

保冷剤や氷だと冷たすぎて血管が閉まってしまうので逆効果になります。

(イメージ)
(イメージ)

一方、すでに熱中症になってしまっていたら、首の付け根や脇の下、足の付け根を保冷剤などで強力に冷やすのが救急の処置になります。

とにかく今は、暑さに体を慣らすために、汗を上手にかくための準備と水分補給、さらに暑さを感じたらペットボトルで手のひらを冷やすことが有効です。