連日、広い範囲で危険な暑さとなり、厳重な警戒が必要になっている。熱中症予防のため「こまめな水分補給」が呼びかけられているが、何を飲めば良いのか、何が適しているのか首をかしげる人もいるだろう。

猛暑日が続き、水分補給が欠かせない中、適した飲み物、飲むタイミング、飲む量などを熱中症対策に詳しい済生会横浜市東部病院・患者支援センター長の谷口英喜先生に聞いた。

水・お茶→スポーツドリンク→経口補水液

室内にいても外出時でも、こまめな水分補給が求められる今の季節。谷口先生はまず水分補給をする際に望ましい飲み物を「アルコール以外で、水・お茶が適切」と前置きしつつ、「ただ、何度も飲む場合は水やノンカフェインのお茶、麦茶などがいいでしょう」と話す。

蒸し暑い中で飲みたくなってしまう炭酸飲料も、ノンシュガーであれば「胃腸も刺激し、食欲も増すので良いです」とのこと。スポーツをしている時は、スポーツドリンクで水分を摂取することが望ましいという。

水分補給に適しているのは「水・お茶」(画像:イメージ)
水分補給に適しているのは「水・お茶」(画像:イメージ)
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ただし、アルコールは利尿作用があるため、水分補給の飲み物としては適していない。

また「糖分や塩分が多い飲み物は、取り過ぎると臓器に負担がかかるので、日常的な水分補給としてはよくありません。特に、糖分過多は肝臓に負担がかかり、疲れやすくなります。加えて、糖分は血糖値を上げてしまうため、お腹がすかなくなり、食事を抜いてしまうことにつながります」と谷口先生。

気になるカフェインに関しては「人間にカフェインの耐性がつくため、飲み慣れている人はカフェイン入りでも問題ないです。逆に慣れていない人がカフェイン入りの飲み物を水分補給として飲むと利尿作用が出やすくなることもある」ため注意してほしいとのこと。

しかし、カフェインに慣れている人も緑茶やコーヒー類などを1日中飲み続けるのは、カフェイン中毒にもなりかねないため、水やノンカフェインの飲料とバランスを取りながら水分を摂取してほしいと谷口先生は言う。

「ごく普通の生活をしているのであれば、水またはお茶。少し汗をかくような行動をする場合はスポーツドリンク。脱水症になったら経口補水液、この3段階での水分補給を意識してみてください」

かつて水分と塩分を素早く補給できる経口補水液は、「おいしいと感じたら脱水症の可能性がある」とされることもあった。

しかし、谷口先生は「確かに3~4年前まではおいしくなかったんです。そこから味の改良が加えられたため、『おいしく感じたら脱水症』ということはなくなりました。今は味付きの経口補水液も出ていて、脱水状態でなくてもおいしいです」と話す。

ただし、経口補水液は熱中症予防のために飲むものではなく、「少しでも脱水状態であると感じたときに飲むものです」と強調した。

飲むタイミングは起床後・入浴前後・寝る前

では、いつ、どのタイミングでどれくらいの量を飲めば良いのだろうか。

頭に入れておきたいのは、水分補給は夏だけの行動ではないこと。

「季節を問わず、1年を通して意識してほしいです。特に高齢者はその習慣をつけて、喉が渇いてなくても飲んでください」

まず、1日の中で意識したいタイミングは起床時。「絶対的に体が乾いているため、食事よりもコップ1杯の水を飲んでください」と谷口先生。

起床時以外は、入浴の前後、寝る前のタイミング。特に就寝前は、コップ半分ほどの量を意識して飲んでほしいそうだ。

1度起きて水分補給することで夜間の熱中症も防げる(画像:イメージ)
1度起きて水分補給することで夜間の熱中症も防げる(画像:イメージ)

寝る前の水分補給は、夜中にトイレに行きたくなって起きてしまうことを心配する人もいるかもしれない。

ただ、谷口先生は「むしろ、今の季節は夜間の熱中症がすごく多いため、6~7時間通して寝るよりも、途中1度トイレ等で起きて、そのときにも水を飲んだりする方がいいのです」と語る。

たとえ、冷房等で部屋を涼しくしていたとしても、「この時期は体のどこかで汗をかいている」からだという。

子どもや高齢者は意識的に飲むように

起床時・入浴前後・就寝前以外で、飲むタイミングと飲む量は一般成人・子ども・高齢者と世代別に異なる。

まず、一般成人は「喉が渇きそうになったら、渇いたら飲む」ことを心掛けてほしい。

1回で飲む量は120~150ミリリットルほどが適量。これは、人間の体が1日1200~1500ミリリットルほど飲料で水分を補給するため、例えば1日水を10回飲むとすれば、1回につき120~150ミリリットルという量になる。

次に、子どもや高齢者は「喉の渇きを自覚しない、しにくいため工夫が必要」と谷口先生は言う。

子どもは子どものペースで水分補給を(画像:イメージ)
子どもは子どものペースで水分補給を(画像:イメージ)

「特に子どもは“喉が渇いたか、渇いていないか”理解できていないこともあります。かつ、大人より水分を必要としているため、自由に飲める環境を作ってください。大人に合わせず、子どもたちのペースで水分補給できるように。大人は、糖分や塩分を取り過ぎない飲み物の種類をアドバイスするだけでいいのです」

子どもが1回につき飲む量は「少なければ少ない方がいいです。体に水分をためておく能力が養われていないため、ペットボトルのキャップに1杯ずつくらいでも良いです。遊んでいる間も15~30分に1回ずつ飲ませてあげたりしてください」と話す。

また、決して大人の基準に合わせることなく、まずは「好きなように飲んでいいよ」と促し、いつでも飲める状態にしておくことが、子どもの水分補給の習慣を身につけることにもつながるという。

高齢者は時間を決めて意識的に飲む(画像:イメージ)
高齢者は時間を決めて意識的に飲む(画像:イメージ)

最後に、高齢者は「『自由に飲んでください』と言っても飲みません。そして喉が渇きません。お薬を飲むのと同じように時間を決めてこまめに飲むことが重要です」とのこと。

起きている間、1時間に1回ほどコップ半分の約100ミリリットルの水分を補給するようにする。10時間ほど起きていると仮定すると、1日1リットルは水分を摂取することができる。

水分補給のタイミングや飲む量は、特に子どもや高齢者は一般成人の基準とは異なることを意識しておきたい。

そして、ついゴクゴクと喉を潤してしまうこともあるだろうが、「飲み過ぎたとしても尿として出るだけです。普段の生活をしている中で、こまめに飲みつつ、汗をかいた場合は多めに水分補給すること」だとして、自分の生活スタイルに応じて、補給する量を調整してほしいと話す。

飲み過ぎて「トイレばかり行ってしまう」ことも不安に思うかもしれないが、谷口先生は「トイレに行くほど飲んでいれば大丈夫です。『気づいたら半日もトイレに行っていない…』と思ったら、意識して飲んでください。トイレに行くのは水分補給できている証しで、体内の水分が足りている証しでもあります」と語る。

水分補給以上に食事が大切

そもそも、なぜ水分補給が大切なのか。

人間の体内にある体液(水や塩などの電解質からなる水分)は体重の約60%。

それが毎日ほぼ入れ替わり、水分の摂取量と排出量は、毎日ほぼ同じ量に維持されるよう調整されているのだ。

例えば、成人の水分摂取量は1500~2500ミリリットル。たとえば、2500ミリリットルの場合、汗、排せつ、呼気や皮膚等からの蒸発で2500ミリリットルは出て行く。

それを補うのが食事(1000ミリリットル)、飲料(1200ミリリットル)、エネルギー代謝によって生じる代謝水(食事が分解される際にできる水のこと、300ミリリットル)の3つ。

谷口先生は「水分補給も大切ですが、あくまで補助です。水分補給は食事からが半分、飲料から半分が大原則。食事によって体に水分を確保するため、一番大切で、しっかり食事をとると熱中症や脱水症になる確率は低くなります」と水分の摂取以上に食事が大切だと念を押す。

特に、最近は在宅勤務等で1日中自宅にいることもあり、食事を抜いてしまったり、水分補給を怠ってしまったりすることもあるかもしれない。心当たりのある人は特に注意してほしい。

「熱中症の人は暑いところにいたという履歴が必ずあります。直近ではなく、24時間経って症状が出ることもあり、『涼しいところにいたのに…』と話す熱中症の患者も振り返ると数時間前に暑いところにいたということもあります。これは年齢に関係なく起こりうることです」

1日自宅にいたとしても、買い物に出たり、用事で外出することもあるだろう。しかし、食事や水分を摂らない状態で外出すると、帰宅した数時間後に熱中症の症状が出るケースもあるというのだ。

まだまだ続きそうな猛暑日。自身の生活に合わせた水分補給のスタイルを見つけつつ、食事もしっかりととり、この暑さを乗り切りたい。

イラスト=さいとうひさし