東京オリンピックの男子団体で銅メダルを獲得し、注目を集めた「アーチェリー」。次のパリオリンピック出場に期待がかかる次世代のエース候補が、岐阜県羽島市出身の斉藤史弥選手だ。成長の裏には、二人三脚で戦ってきた友達のような先生の存在があった。

18歳にしてナショナルチームに…アーチェリー次世代のエース・斉藤史弥

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2021年の東京オリンピックで、男子団体では初めて銅メダルを獲得したアーチェリー。その次世代のエース候補が岐阜県にいる。

3月1日に、岐阜県立大垣西高校を卒業した斉藤史弥選手(18)だ。

斉藤史弥選手:
この1年間、大きな試合が続いて学校に来られない時があったんですけど、みんなと仲良くできたので本当によかったと思います。ありがとうございました

高校3年間、青春の全てを捧げたのが、70メートル先の的を狙って矢を放つ「アーチェリー」。

斎藤選手は高校三冠、18歳にしてナショナルチームに選ばれ、パリオリンピック出場に期待がかかる「次世代のエース」。

斉藤史弥選手:
世界選手権のメンバーにならない限り(オリンピックへの)道がないので、そこに向けて練習をしていきたいなと思います

齋藤選手を支えた先生が唸る「10点へのこだわり」と「修正力」

約60人の部員が所属する、斉藤選手が3年間過ごした大垣西高校のアーチェリー部。県内屈指の強豪校で、斉藤選手は絶対的なエースとして活躍してきた。

斉藤選手がアーチェリーを始めたのは、小学5年の時。岐阜県のジュニアアスリート育成プロジェクトがきっかけだった。

本間隼人先生:
“1本にかける正確性”が違うんじゃないですか。他の子たちだとOKにしちゃうところを、彼はOKにしない

始めた頃から斉藤選手を支えてきたアーチェリー部顧問の本間隼人先生(34)は、斉藤選手の魅力が「1本にかける正確性」にあるという。

斉藤史弥選手:
10点のイメージは強く持っています。そこへのこだわりですね。10点を多く入れた方が勝ちなので

アーチェリーの最高点は中心の10点で、その直径はDVDのサイズとほぼ同じ、12.2センチしかない。

「10点へのこだわり」、その技術を披露してもらった。

斉藤史弥選手:
10本打って…「10・10・10」、9(点)が3本くらいでしたよね、確か。さっきは気合い入れました、カメラに撮られとったので

10本中半分の5本が、中心の10点に。

「10点へのこだわり」は、3月に全国大会に出場した実力をもつ後輩でも、歯が立たないという。

阪尾尚優汰選手(2年生):
自分だったら9点入ったら、黄色以内に入ったら「よし」って感じなんです。ですけど、史弥先輩のレベルまでいくと、10点の中のど真ん中のところ、そこじゃないとダメっていう領域に達している。次元が違うなって毎回思います

本間隼人先生:
史弥の場合は、「なんでここに行ったんだろうか」っていうのをいろんな角度から考えるので、修正する力がどんどん備わっていく

「10点へのこだわり」と「修正力の高さ」。本間先生との二人三脚で、中学時代、全国大会で優勝し、高校ではまさに「敵なし」。3年生の2022年は、「選抜・インターハイ・国体」を制して、史上初の三冠を達成した。

日本代表にも選ばれ、世界の大会にも出場している。

斉藤選手に、高校生活で一番印象に残った試合を聞いた。

斉藤史弥選手:
全日本で古川さんと決勝で戦った時は、緊張よりも楽しさが勝ってしまって。本当にあの試合は楽しかったですね

2022年10月、全日本選手権で対戦したのは、オリンピックのメダリスト・古川高晴選手(38)。

惜しくも破れたが、日本の頂点が見えた瞬間だった。

指導者と教え子の緩やかな関係

日本のトップまでのぼり詰めた斉藤選手と、支え続けてきた本間先生。「指導者と教え子」だが、2人はちょっと不思議な関係だ。

斉藤選手に、本間先生がどんな存在か聞いた。

斉藤史弥選手:
なんでもおごってくれる人

本間隼人先生:
なんだそれ(笑)。こんな感じです、いつも

本間先生はアーチェリーを教えてくれる人ではなく、あくまでサポート役だという。

本間隼人先生:
特別、僕がアーチェリーの技術をすごい教えた、斉藤史弥を育てた、なんてことは絶対ないです(笑)。長年の付き合いだから、まあ親戚くらいじゃないですか。友達みたいな

斉藤隼人選手:
いや、なんでも奢ってくれる人です

ガチガチの「指導者と教え子」ではなく緩やかな関係が、数々の優勝に繋がったのかもしれない。

卒業式では先生が涙…大学では「どんどん進化する姿を見せたい」

斉藤選手は、2023年4月からは本間先生のもとを離れて、日本体育大学へ進学する。卒業式の後…。

斉藤史弥選手:
泣いてる!泣いてるよ!

本間隼人先生:
めっちゃ辛かったです、この3年間、成績を出さなきゃいけないとか、絶対にこの子を潰してはいけないっていう気持ちでいっぱいだったので

入学前、強豪校からの誘いがいくつもあったが、本間先生が斉藤選手を引き止めていた。

斉藤史弥選手:
歳じゃないですかね。(涙腺が)緩いんじゃないですか?

本間隼人先生:
そうだな(笑)

先生との二人三脚で見えてきた日本の頂点。これからは斉藤選手自身の手で、栄光を手繰り寄せる。

本間隼人先生:
もっともっとすごい選手になってほしいなと思います。(これから)離れることになるから、オリンピックを期待しちゃってきてるかなと

斉藤史弥選手:
どんどん進化する姿を見せたいですね。常に自分が最高のプレーができるように頑張っていきたい

※斉藤選手は4月に開催された選考会で、世界選手権の日本代表に決まった。

2023年3月9日放送

(東海テレビ)

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