駄菓子を買いに来た子供たちとおしゃべりをしながら、困りごとの相談にものれたら…。こども食堂を運営してきた団体が移動販売車で“駄菓子屋さん”出張サービスを始めた。食堂に来られない子供も支援したいとの思いからだ。本音を聞きだせるよう、様々な工夫もしている。
駄菓子を積んで「会いに行く」
駿東郡長泉町に登場した1台の移動販売車。その名も「移動する駄菓子屋さん」。
運営するのは、三島市などで活動する一般社団法人「おたまちゃん食堂」だ。

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
子供たちの命を一番大切にして、「こうしたら命が守れる」「ああしたら命が守れる」ということで、お母さんもお父さんも周りの地域を巻き込んで支援していきたい

「おたまちゃん食堂」は、2016年に主婦などによるボランティアグループ「みんなのみしま こども食堂」として発足し、活動を続けてきた。

2022年に一般社団法人となり、月に4回の「こども食堂」に加えて、フードバンクや学習支援も行っている。
「こども食堂に来られない子供たちにも支援を届けたい」と思いついたのが 、「移動する駄菓子屋さん」だ。

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
いつも公民館などで子供たちを待っていますが、その時間帯にお母さんがまだ仕事から帰ってなくて、来られない子供たちもいる。私たちの方から子供たちに会いに行こうと
値段は10~30円 子供の目線にあわせ陳列
「移動する駄菓子屋さん」の企画は、県が進める「子供の居場所づくりプロジェクト」に選ばれ、資金200万円は、クラウドファンディング型のふるさと納税でまかなわれた。

出発を前に、ボランティアのメンバーたちが準備をするために集まった。
子供たちが手に取りやすいように、お菓子の値段はひとつ10円から30円まで。
お菓子を並べる高さも子供たち目線に合わせた。

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
うれしいですね。お菓子が入ると車に命が吹き込まれた感じがして。子供たちが笑っている顔しか浮かばないですね
チラシやWi-Fiに込めた思い
お菓子のそばには、メッセージを書くチラシとポストが置かれている。

チラシをひとりひとりに配り、子供たちに悩みを書いてもらうつもりだ。親がいないところでもSOSが出せるようにした。

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
(親に)殴られたりしても、親がいると言えないので
Wi-Fiも完備し、車の周辺では料金を気にせずにスマホが使えるようにした。

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
Wi-Fiが通っていれば私とのLINEもできるし、つながれる。しゃべれなかったり、大人としゃべるのが怖かったり、お母さんが近くにいるかもしれないからそこでは話ができないという子が、ちょっと離れた位置から私に連絡をくれたり、そういう時にWi-Fiをつないでずっと話ができるように
生活用品も支援 自治体は歓迎
出発を祝おうと、近所の親子連れなども集まった。さまざまな種類のお菓子に子供たちは夢中だ。

お菓子を売るだけでなく、生活用品や食品などの支援物資も届ける。支援を必要とする子供や親が見つかった場合、必要があれば市町や関係機関と連携して対応する。
生活の困窮だけではなく、DVやヤングケアラーなど、埋もれてしまっている様々なSOSの掘り起こしにつながりそうだ。

こうした取り組みを地元の自治体も歓迎している。
三島市 子育て支援課・渡辺 由美 課長:
とても心強いと感じています。とても行政では行き届かないところにも行ってもらえるというところは、とても期待しています
「子供たちの笑顔を増やしたい」

おたまちゃん食堂 代表・押田 智子さん:
手紙や会話の中で、「ちょっときのう嫌なことがあった」というところから始まるSOSもある。ゆっくりと子供たちと一緒に話しながら解決していけたらと思います。子供たちの笑顔は周りを幸せにするので、それをたくさん増やしていきたい
押田さんによると、「支援しますので困っている人は来てください」という呼び掛けでは、恥ずかしさや申し訳ないという気持が先に立って、支援が必要な人は、なかなか手を上げられないという。

こども食堂のように「支援を求めていない人も、誰でも来ていいよ」という場を作り、そこに集まった人の中から、支援を必要としている人を見つけ出すつもりだ。

今後は、月に2回三島市や周辺に展開する予定だ。
悩みを抱える子供たちや、SOSを出せずにいる子育て中の家庭に支援の手を届けたい。
「移動する駄菓子屋さん」が走り始めた。
(テレビ静岡)