雷が木を伝って集合住宅の2階へ――。関東などを記録的大雨が襲った11日午後、東京都立川市の集合住宅で発生した火災は、誰も予想できなかった“横からの一撃”によって引き起こされた可能性がある。専門家も驚く、雷が引き起こした意外な現象とは。
なぜ2階が火災?落雷の意外な恐ろしさ
撮影者:
早く早く!消火してよ
大粒の雨が降りしきる中、燃え盛る炎と、うねる黒煙。Mr.サンデーが入手したこの映像に映るのは、東京などを記録的な大雨が襲った木曜、立川市の集合住宅で起きた火災の様子だ。

よく見ると、洗濯物を干していたのか、斜めになった物干し竿のようなものも。
出火元の2階の部屋に住む86歳の女性が煙を吸って病院に搬送され、幸い、命に別状はなかったが、この火災には不可解な謎があった。

そもそも火災の原因は、近隣の防犯カメラが捉えていたこのけたたましい雷とみられている。
火災現場の真下、1階の住人は落雷の瞬間について…
住人:
窓の外に見えたのが、直径30cmから40cmぐらい。丸い玉のようなものが「ピカッ!パシャッ!」っていうような音がして光ったんです。2階から白いものがモクモクモクモク見えてきて、ベランダから火の粉が落ちてくるし「あ、これは火事だ」と。
建築基準法によって避雷針の設置が義務づけられているのは、高さ20mを超える建物。それに満たないこの集合住宅には、設置されていなかったという。
なぜ雷は、屋上や最上階の5階ではなく2階の部屋に落ちたのか?Mr.サンデーは、長年雷を観測し、分析している専門家と共に現場を取材した。
いま連日のように、全国各地で激しい雷雨が発生する中…いつ、どこから襲ってくるかもわからない、落雷の意外な恐ろしさが浮き彫りとなった。
フランクリン・ジャパン技術部長 松井倫弘博士:
他で被害がそんなに残ってないので、あそこに(雷が)直撃したんだろうなと。(雷は)屋根のへりみたいなところに当たるか、あるいは配電線のところに当たるかなんですけど、なぜかそれをすり抜けて、あそこに当たったのはすごく自分も見てて不可解。

枝に焦げた跡…木を伝って「側撃」か
専門家も首を傾げる、2階への落雷。だが、丁寧に周囲を見ていくと…
松井倫弘博士:
あっ!あの先ってなんか(枝が)枯れてる。やっぱり焦げた跡。ひょっとしたら(雷が)こういってジャンプ。そしたら確かに角度的には(2階に雷が)入ると思う。ここの木に落ちてあっち側へ流れてしまった。

専門家が指摘したのは、火災が起きた2階・角部屋のすぐ横に生い茂る木。よく見ると、2階の部屋の高さの部分が焦げているのが分かる。
雷はこの木を伝って、ベランダに落ちた可能性があるというのだ。
実際、雷には木の枝などを伝って横の人や物に広がる「側撃(そくげき)」という現象が存在する。
松井倫弘博士:
(落雷時)木の下に行っちゃいけないっていうのは、木の枝から「側撃」っていって人間に当たっちゃう。それと同じ感じ。かなり珍しいケースではあると思う。でも100%ないかっていうとそんなことはなくてあり得ると思います。

さらに、近隣住民を取材するとこんな話も。
近隣住民:
警察の人が言うには室外機に落ちたんだって雷が。
近隣住民:
室外機に(雷が)落ちたらしいんですよ。あれ(室外機)が火吹いて、あそこから燃え広がった。

つまり、雷は建物脇の木に落ち、枝を横に伝って、2階のベランダに置かれた室外機へ。そこから炎が出た可能性が高いというのだ。

しかも、その落雷は、あまりに突然のことだったという。
今回の落雷時の映像をよく見ると…午後2時19分、雨が降り始めた。雨脚は弱いまま、約10分、路面が濡れ、本格的に降り始めた。
…と思ったその時、「バーン!」と前触れなく雷が落ちた。
住人:
一発でドバンです、急にその一発ですよ。

今回の記録的な大雨に伴い、都内で観測された落雷は、約4000回。備える間もなく落ちる雷と、それに伴う火災の危険は、決して他人事ではない…。

(「Mr.サンデー」9月14日放送より)