名古屋城のほとりに、古本店と喫茶店が融合した「古本喫茶」がある。店内には約1000冊の古本が並び、店自慢のモーニングやランチも人気だ。オーナーは行動力あふれる中国人の女性。その半生と人柄が、人々を惹きつけている。

フードもコーヒーもおいしい…名古屋城近くの「古本喫茶」

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名古屋城の西側にある、「古本喫茶ShowRei(しょうれい)」。

全12席の小ぢんまりとした喫茶店だ。

「古本喫茶」の名の通り、所狭しと約1000冊もの本が並ぶ。

女性客A:
「世界一おいしい野菜の食べ方」

男性客A:
「家事は8割捨てていい」。自分、本当に家事が苦手で…

ビジネス書や育児関連、心理学に絵本など、多彩なラインナップ。

メニューを1つ注文すれば、無制限で本を読むことができる。

メニューの1つ、店主が修業したコーヒー店の味を受け継いだ「コロンビア」(600円)。酸味、苦みのバランスがとれた、芳醇な香りが自慢だ。

コーヒー豆の専門店に、この店のためだけに焙煎してもらった「ShowRei’s Premium Coffee(ショウレイズ・プレミアム・コーヒー)」(700円)は、香ばしさとほのかな酸味で飲みやすい味わいのコーヒーで、看板メニュー。

ドリンク代だけで楽しめるモーニングサービスもあり、本場フランスの職人が焼いたフランスパンに、清須市の農家が作ったオーガニック野菜のサラダがついてくる。

その野菜を使った「オーガニックサラダランチ」(1000円 ※一部のコーヒーが割引)や…。

その日入荷した材料で決める「気まぐれカレーランチ」(1000円 ※一部のコーヒーが割引)など、ランチメニューも充実している。

女性客B:
んーおいしい

男性客B:
お昼に来るのでカレー頼んでいます。カレーめちゃめちゃおいしいんですよ

そして台湾のスイーツも。

「台湾伝統お菓子 各種」(300円~)は、月餅(げっぺい)やココナッツケーキ、パイナップルケーキなどがある。

オーナーは元コンサルタントのエリート中国人女性

店のオーナーは、中国人の女性、カ・ショウレイ(34)さん。

この古本喫茶は、ショウレイさんだからこそできた、不思議な店だ。

ショウレイさん:
昔コンサルの仕事をして貿易の仕事をして、その時から溜まってきた本がたくさんあって。使っていたものを、ひとりで持つよりもそれをオープンしてみんなで使おうよって思って。本読みながらおいしいコーヒーを飲むっていうのが、最初のイメージだったんですね

ショウレイさんは元々、企業が抱える問題を改善するためにアドバイスをする「コンサルタント」や、貿易の仕事をしていた。

その頃に、食品メーカーやIT企業などさまざまな専門知識を養うために本を読みあさったという。

ショウレイさん:
この本(「ドラッカーに学ぶ「ニッチ戦略」の教科書」)が、結構私の中で役に立っている本で、経営者と同じ高い目線から全体を見る視線がすごく問われるんですね。それで参考になったのはこの本で、すごく役に立っていました

このため、店内には経営学やマネジメント、組織運営に関するものなど、一般的な喫茶店にはない本が多く並んでいる。

しかし、客はビジネスマンだけではない。

女性客C:
すごくいろんな本が置いてあって、どれ見ても楽しいです。子供向けの本とかもあるし

女性客D:
本を気軽に取って座って読めるのは、すごくありがたいですね

女性客E:
絵本とか子育ての本とかもあるので、ゆっくり読む時間がないのでここで読ませていただいたりしています

ショウレイさんの人生を豊かにした数々の本は、老若男女問わず客に人気だ。

読んだ本が気に入った場合、定価の半額で購入することもできる。(※一部購入できない本もあり)

「超ミニスカートグループに入って…」制服に憧れ日本の女子高校生に

ショウレイさんが来日したきっかけは、19年前の2003年、15歳の時だった。

ショウレイさん:
親が先に日本に来ていて、私は祖父祖母と一緒にお茶の産地で有名な福建省に住んでいて…。(旅行で)日本に来て、女子高生がいて、めちゃくちゃ制服がかわいくて、スカートも短くてギリギリくらい

ショウレイさんは当時、地元で1、2を争う進学校に通う高校生で、成績もトップクラス。

しかし、制服は日本のブレザーやセーラー服ではなく、ジャージのようなもの。「イケてない…」と不満だった。

ショウレイさん:
中国だと勉強できる子は優秀、勉強できない子は優秀じゃない、という基準しかなくて。ただ、いろんな価値観があっていいはずだなってずっと思っていたんですよ。で、日本の高校生、キラキラ光っている高校生を見て、私が求めたいことがここにあるかもと思って

日本語は全く話せなかったが、制服へのあこがれから2年間必死に勉強し、合格。

17歳で再び高校1年生となり、憧れの制服を着ることができた。

夢に向かって突き進む。卒業後はその行動力をコンサルタント業や貿易業という仕事に活かし、そして独立も果たした。

こうした経験で役立ててきた本をただ保存しておくのはもったいないと、考案したのがこの古本喫茶だ。

DIYでカウンターや本棚も作り、思い立ってからわずか1か月でオープンした。

キッズカフェやワークショップなど喫茶店の枠を超えた活動も

ショウレイさんの店には、外国人も多く訪れる。

フランス人の女性客:
名古屋はひとりで、すごくさみしかったんですよ、実は。つらい時期もあって。でもこのカフェに来ていろんな方にも話しやすくなったりとか、ショウレイさんに紹介してもらったりとかもあって、それで定期的に来るようになりました

ショウレイさん:
うちのコンセプトは、みんなが自由に楽しめる空間みたいに、その分私も自由に楽しませてもらっている感じなんですよ、お互いにね。まあ、お客さんはお客さんで大事ですけど、基本人間同士なのであんまり上下関係ここにないんですよ。フラットなんです

ショウレイさんの行動力、積極性に惹かれるようにたくさんの人が集まり、自由に寛ぎつつ客同士が輪を作り、店を通して多くの交流が生まれた。

今では、喫茶店の枠を超えて、週1回、育児中のママたちが子連れで集う「キッズカフェ」を設けたり…。

粘土細工の教室など、さまざまなワークショップも開催している。

まだまだ、ショウレイさんの興味は尽きない。

ショウレイさん:
中国の喫茶文化も日本に取り入れながら、今度日本で成熟した日本の喫茶文化も中国に持っていきたいなって思って…。喫茶文化を通して人と人の交流をもっとよくしていきたい

2022年10月24日放送
(東海テレビ)

東海テレビ
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