台風の大雨で山の中腹にある神社の境内が崩れ、大量の土砂が鳥居まで流れ下った。500年以上前に建てられたと伝わる拝殿は残ったものの、倒壊の恐れがあり取り壊す予定だ。氏子たちは地元で愛されてきた神社の再建を願うが、数千万円かかるとみられ存続の危機に立たされている。
500余年の歴史 県内外から参拝客

浜松市浜北区尾野にある高根神社。
海抜135mの高根山の中腹に拝殿があり、麓の鳥居から拝殿まで参道が続いている。

拝殿は500年以上前の戦国時代、1502年に建立されたと伝えられている。
古くから疫病除けの神などとして信仰され、県内外から訪れる人も多いそうだ。
土砂崩れで参道が跡形もなく…
その地域で愛されてきた神社で、2022年9月 台風15号の大雨によって土砂崩れが発生した。

落合健悟記者:
こちらの神社では台風の被害を受け、宮司や世話人は神社を取り壊すかどうか、決断をせまられています
被災から1カ月後に取材した。
この神社で氏子の代表を務める柴田眞直(まなお)さん(61)が案内してくれた。土砂崩れが起きた翌日、神社の様子を見に来ると参道がなくなっていたという。

高根神社 氏子総代・柴田眞直さん:
もともと高根神社の表参道だったところは、跡形もなくなってしまっています。一報をもらってすぐに見に来ましたが、ここまでひどいとは思っていなかったので本当にがく然として、どうやって修復していけばいいのだろうかと

元々は木が生い茂った参道で、曲がる回数から「十八曲がり」と呼ばれる参道だった。参道が流されてしまったうえ、再び崩れる危険性もあることから木も伐採されていて、以前とは全く違う様相となっている。
境内も崖崩れ 土砂は鳥居に押し寄せて
そして被害は参道をのぼった先の境内にも甚大な被害があった。

氏子総代・柴田眞直さん:
もともとは拝殿から6mか7mくらい前まで境内になっていて、(参道で)正面から拝殿に上がれるようになっていました。(境内の端に)安全柵があったのですけども、それごと一気に全部崩れ落ちた状態です

境内から崩れた土砂は参道があった場所を流れ、鳥居を超えて道路まで下っていたという。

境内から鳥居を見下ろすと、土砂が崩れ落ちた痕跡がはっきりと確認できた。
残った拝殿にも倒壊の恐れ

戦国時代に建てられたと伝えられる拝殿が崩れることはなかったものの、建物を支える束(つか)が外れかかってしまっていた。

氏子総代・柴田さん:
基礎の石が下がった分だけ、束がちょっと傾いたという状態になっています。それ以外は特に大きな損傷は見受けられないです

以前から拝殿の基礎の劣化が進み金属の器具を使って補強している状況で、柴田さんは不安を感じている。
氏子総代・柴田さん:
地震が来たり大きな台風が来たりすれば、今の状態で拝殿を残してもいずれ時間の問題で崩れてしまうのではないかと、それが一番不安に思っている
苦渋の選択…拝殿は取り壊しか

再び崩れる危険性があり、宮司と氏子で話し合った結果、拝殿を取り壊す方向で調整が進められている。

氏子総代・柴田さん:
この状態にしたまま、万が一にも建物が崩れたときに下に住んでいる方に迷惑がかかる。被害が及ぶのを何とか解決したいと考えて動いています。好き好んで潰したいなんて誰一人思っていない。何とか残したいと思っていますが、今の有様があまりにひどいので、これ以上の被害を発生させないためにはやむを得ないと考えています。(1974年の集中豪雨の)「七夕豪雨」の時もここは崩れなかったのですけど、今回の雨では持ちこたえられなかった。相当大きな被害だったと感じています
「小さくてもお参りできる神社を建てたい」
取り壊す費用だけでも800万円にのぼり、参道を復旧させ拝殿を建設するためには、さらに数千万円の費用がかかるという。

「小さくてもお参りできる神社を建てたい」と話す柴田さん。
500年以上の歴史があり地域に愛されてきた高根神社の存続は、大きな岐路に立たされている。
(テレビ静岡)