7月28日に夏の全国高校野球・奈良大会決勝が行われた。
準決勝で強豪・智弁学園高校を破るなど、破竹の勢いで勝ち上がってきた「県立生駒高校」は、夏の大会29回目の出場を目指す王者「天理高校」に挑んだ。
しかし…

生駒高校でコロナ感染者続出…メンバー入れ替え、王者・天理高校に挑む

生駒高校・マネージャー 時田葉奈さん:
(決勝は)体調不良で16人休んで、24人で何とか…(試合は)1年生に頑張ってもらっています

決勝の前日、新型コロナの感染者が続出した生駒高校。試合メンバー20人のうち12人が入れ替わる事態になっていた。
生駒高校は序盤から失点を許してしまい…8回が終わって、何とその差は21点。
ベストメンバーで試合できず、前日に突然、決勝に出ることになった部員たち。苦しい状況で試合に挑む選手たちの姿に、声援するマネジャーたちの目から涙がこぼれる。
無念のまま、生駒の夏が終わった。ベンチで泣いている生駒高校の野球部員たち。
決勝前日に急きょ登板が決まった、2年生の浅野貴優君もがっくりうなだれる。

浅野貴優君:
(エースナンバーを)託された時に、一気にプレッシャーがかかってしまって…堂々と投げ切ることができなかったので、その部分が悔いです

この記事の画像(16枚)

天理・中村監督の打診で再試合へ…生駒・北野監督「子どもたちは感謝して成長」

9月に入っても、生駒高校のグラウンドには引退したはずの3年生の姿があった。 
決勝終了後、天理・中村監督から生駒・北野監督へ再試合の提案があり、3年生はその日に向けて、練習を重ねていたのだ。

生駒高校・北野定雄監督:
監督インタビューがされた後に、天理高校の中村監督がベンチに来ていただいて、そこで改めて「落ち着いたらゲームをしましょうか」と言っていただいて
3年生がいい顔で練習している姿を見ると、ありがたい打診をいただいて、また子どもたちはこれで感謝して成長するのだなと

チームを引っ張ってきたエース・北村晄太郎君も、決勝の舞台に立てなかった1人だ。

生駒高校エース・北村晄太郎君:
智弁学園高校に勝った夜に寝ていたら、すごく体がだるくて。次の試合を楽しみしていたので、投げれないと分かったときはかなり落ち込みました。試合を組んでくれたことは、すごくありがたいです

当時の天理高校の主将・戸井君は、甲子園出場が決まる奈良大会決勝の最終回2アウト、マウンドでチームメイトを集め、ある思いを伝えていた。

天理高校・戸井零士前主将:
相手に敬意というか、あまり喜ばないで、そのままサッと整列しようとすぐに思って

天理は、甲子園出場を決めてもマウンドに集まって“歓喜の輪”をしないで、静かに試合を終えた。

そんな天理のグラウンドには、特別な横断幕がある。甲子園に出場する天理へ生駒が贈ったもので、そこには、天理が掲げるテーマ“つなぐ”と、生駒が長年大切にしてきた“心ひとつ”の文字が。横断幕だけでなく、生駒高校の3年生も甲子園にかけつけ、直接エールを送った。

天理高校・戸井零士前主将:
2回戦は応援にも来てくださって。何とかその思いも背負って甲子園でプレーしようと思いました

生駒高校エース・北村晄太郎君:
みんなここ(甲子園)に出られなかった悔しさではなくて、純粋に天理を楽しく応援している感じでした

そして友情の再試合実現…今度こそ笑顔で

あの奈良県大会決勝の日から約1カ月半。天理と生駒の再試合の日を迎えた。きょうは“特別な日”だ。普段なら別々の試合前の練習も、きょうは一緒。ベストメンバーによる再試合がいよいよ始まる。

先発のマウンドには…生駒のエース・北村君の姿が。
天理の4番打者・内藤君を相手に三振にとると…次の打者はセカンドゴロだ。1塁の走者が2塁に走っていき、クロスプレー…アウト!セカンドが球をキャッチした。仲間のファインプレーにも助けられ、初回を無失点で切り抜ける。

3回、北村君はヒットとフォアボールでピンチを迎える…あらん限りのストレートをはじき返され、1点を先制される。
あの日の21点が脳裏をよぎるが…ここは、内野ゴロに打ち取りなんとか1点でしのぐ!

力投する北村君を助けたい生駒は6回、1番・飯田君がヒットで出塁すると…打席には、決勝の舞台に立てなかった2番・矢野君!
外野の右中間を抜けるタイムリースリーベースで、同点に追いつく!まだまだ終わらない。

打席には、これまでチームを鼓舞し続けてきた主将の熊田君。
鈍い当たりのボテボテのショートゴロだが、一塁まで全力疾走…判定はセーフ!ついに天理からリードし逆転する。

しかし…その裏。
天理にホームランを打たれ、すぐさま、同点に追いつかれる。
しかし、生駒はハイタッチで祝福。そして、天理1点リードで迎えた最終回2アウト。

あの決勝の日と同じく、天理の選手がマウンドに集まった。

天理高校・戸井零士前主将:
夏の県大会では、集まるのをやめようと言ったのですけど、今回は全力勝負ができたので、最後は全員で集まって喜ぼうと伝えました

最後の1球、生駒の打者が打った打球は浅いセンターフライに。
ボールが天理の選手のグラブに吸い込まれゲームセット。

マウンドに集り、喜ぶ天理高校の選手たち。

そこで、生駒のエース・北村君がベンチで「行こう」と誘い、生駒の選手たちも天理の“歓喜の輪”に加わった。

生駒と天理。特別な試合は、はじける笑顔で幕を下ろした。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月14日放送)