2人のシングルマザーが立ち上げたフードバンク。食品ロス削減に向けた社会貢献にとどまらず、支援のコミュニティーが広がっている。
一人親同士だから理解できる悩みや苦労…活動に込められた彼女たちの思いを取材した。

”もったいない”をお互いの笑顔に変えるフードバンク

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広島市西区にある中央卸売市場で、2人の女性が向かった先は、とある鮮魚店。準備されていた食品用コンテナの中には、魚のアラがたっぷりと入っている。

鮮魚店からフードバンクへ提供された魚のアラ
鮮魚店からフードバンクへ提供された魚のアラ

「わぁ、いっぱい!ありがとうございます。これ、おいしいんですよ。毎週、仕分けをして、一人親の各家庭に配送しています」そう言って、寄付してもらった魚を台車に乗せて運ぶ女性たち。
2人は「OYATOKO」という名前で活動している、シングルマザーだ。

OYATOKO・和田法子さん 徳重麻由乃さん:
「オヤトコ」って読みます。「親と子」って意味もあるんですけど、「親のこと」一人親をフォローするという意味です

広島市西区のスーパー「ハローズ 草津新町店」から提供された食料品
広島市西区のスーパー「ハローズ 草津新町店」から提供された食料品

オヤトコの活動の中心は、フードバンク。賞味期限が近づいたものや包装が傷んだ商品など、店頭に並べられなくなったものを寄付してもらい、必要としている人に無償で提供する取り組みだ。週に1回、一人親の家庭に食料品を届けている。

広島市中区の「アロフト 光南店」から提供されたパンを受け取る和田さん
広島市中区の「アロフト 光南店」から提供されたパンを受け取る和田さん

スーパーや鮮魚店、パン屋など、約20の団体が食品や食材を提供している。

広島市のパン店「アロフト」を営む江川良平さんは「パンが余ってしまう日があるので、廃棄することなくおいしく召し上がっていただけたら非常に光栄です」と話す。

アロフトのパンをもらって喜ぶ子どもたち
アロフトのパンをもらって喜ぶ子どもたち

協力してもらった団体へ、感謝の気持ちを込めて写真を送ることもある。江川さんは「子どもたちが喜んでパンを食べている写真を見た時に、うれしいなって思います」と話していた。

徳重さんと共に活動している和田さんは、フードバンクを始めて感じたことがあるという。

フードバンクの食料品を届ける和田さん
フードバンクの食料品を届ける和田さん

OYATOKO・和田法子さん:
協力してくださっている企業の方も「捨ててしまうものをもらってくれて、うれしい」と言われ、商品を渡しに行った先ではみんなが「もらえて、うれしい」って言う。お互いの“うれしい”を感じられるので、それを仕事にできるのは幸せなことだなって感じています。関わる人が笑顔になってくれたら、私もうれしいです

フードバンクは一人親世帯のサポートだけでなく、企業側の食品ロスを削減し”もったいない”をなくすことにも貢献している。

同じ境遇だから励みになる…シングルマザーのコミュニティー設立

オヤトコはシングルマザーの交流会も手がけている。活動のきっかけを徳重さんに聞いた。

シングルマザーのコミュニティー設立のきっかけを話す徳重さん
シングルマザーのコミュニティー設立のきっかけを話す徳重さん

OYATOKO・徳重麻由乃さん:
以前、私は個人事業主でイベント業をしていました。ところが、コロナ禍でイベントなんかできない状態が続き、収入が完全にゼロになったんですよ

シングルマザーで2人の娘を育てる徳重さん
シングルマザーで2人の娘を育てる徳重さん

シングルマザーで2人の娘を育てている徳重さん。「どうやって生活していこう」と苦境に立たされた。そんな時、徳重さんは学生時代の部活の先輩から、離婚の相談を受けた。

OYATOKO・徳重麻由乃さん:
私だけの感覚では間違ったアドバイスをしてしまうかもしれない。いろいろな人の意見を聞いて、先輩自身が良いと思うことを選択していけばいいと思いました。
それがきっかけで、同じ境遇の人たちが月1回ほど集まって話せる交流会を開いています

学生時代の先輩:
「私はこうしたよ」「今はこうしているよ」と、いろいろな人の経験を聞けてすごく励みになりました。情報を得る機会をもらえるのでありがたいです

「私だけではない」…親も子も人と違う悩みを共有できる場

オヤトコのメンバーが集まると、話題は子育てからお金のことまで、尽きることがないという。

OYATOKO・和田法子さん
OYATOKO・和田法子さん

OYATOKO・和田法子さん:
小さい子どもを抱えてのシングルマザーと、大きい子どもを抱えてのシングルでは、お金の状況なども全然違います。
例えば、子どもが18歳以上になると補助金が出ない。でも18歳以上になると、進学のことでお金がかかります。だから「貯められるうちに貯めておいた方がいいよ」ってアドバイスをもらいました

OYATOKO・徳重麻由乃さん
OYATOKO・徳重麻由乃さん

OYATOKO・徳重麻由乃さん:
彼氏の話や、再婚願望があるかとか…一般家庭の人とは違う悩みがあるじゃないですか。それこそ「彼氏なんか作ってはいけない」という雰囲気がありますよね。でも、みんながシングルなら何でも話せると思います

親子で参加できるイベント。この日のテーマは「年金について」
親子で参加できるイベント。この日のテーマは「年金について」

オヤトコは、親だけでなく子どもと一緒に楽しめるイベントも開催している。

オヤトコのイベントに参加した女性
オヤトコのイベントに参加した女性

イベントに参加した女性:
きっと子どもも同じ悩みがあると思うんです。「なんでうちは親が一人しかいないんだろう」って。自分だけがみんなと違うんじゃないかっていう壁にぶち当たることがあると思います。
そうした時に、同じ境遇の子どもたちと集まれば「私だけではないんだ」と救われるのではないかな。オヤトコのイベントはそういう場だと思います

OYATOKO・徳重麻由乃さん:
少しずつイベントを増やしていって、みんなで学べるような場を作りたいと思っています。困った時にはお互いが支えられるように、いい意味でがんばりすぎず、オヤトコの活動を続けていくことを目標にしています

詳しくは「OYATOKO 広島」で検索してほしい。

(テレビ新広島)