ようやく夏が訪れた北海道。札幌中心部の北海道大学に、独特の衣装に身を包んだ男たちが並んでいた。
ひときわ異彩を放つ"バンカラ集団"。北海道大学第110代応援団だ。団員は6人。大学の構内 で、毎日のように声を張り上げているのだ。

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北大応援団 小野寺 大輔 団長:
コロナ禍で中止となり、3年ぶりに復活。対面式に向けた練習をしている

コロナ禍で「大声はご法度」…3年ぶり"伝統の対決"

「対面式」とは、北大応援団とライバル校の小樽商科大学応援団が行う"応援合戦"だ。

その歴史は古く、明治時代から100年以上続いてきた伝統行事だが、2021年と2020年はコロナ禍で中止に。この夏、3年ぶりに復活するのだ。

北大応援団 小野寺 大輔 団長:
右の足の上げ方が小さい

留年して在学5年目の小野寺大輔応援団長が、団員を指導する。
他の5人の団員は対面式の経験がない。本来なら卒業している小野寺団長に代わり、対面式で先頭に立つのは2年生の横溝航さんだ。

「いただきます!」 

約400人が暮らす北大の学生寮「恵迪寮」。応援団員は基本的に寮生で構成されている。横溝さんが応援団に入ったわけは。

北大応援団 横溝 航さん:
自分たちが応援することで、いろいろな人たちが元気になり、喜んでくれることに楽しさを感じた

かつては大学の行事や、運動部の対外試合など出番が数多くあった。
しかし、コロナ禍で状況は一変。2021年に行われた野球部の応援は、声を出してはいけないという制限付きのものだった。

北大応援団 横溝 航さん:
僕らは声で伝えることしかできない。もどかしい気持ちが強かったです

出番を奪われていた応援団にも、ようやく明るい兆しが。新型コロナの感染状況に落ち着きが見えてきたのだ。
6月に行われた「北大祭」では、3年ぶりに学生たちの前で応援歌を披露。

北大応援団 横溝 航さん:
自分たちがコロナ禍で感じた気持ちを、一気に吐き出せたらと思います

大勢の市民が見守る中で…帰ってきた"札幌の風物詩"

いよいよ、対面式の日がやってきた。横溝さんたち応援団員は他の寮生とともに、会場となる札幌市中央区の大通公園へと向かった。
そこで待っていたのは大勢の人の姿。市民も3年ぶりの対面式を楽しみにしていたのだ。

「よいしょー!」  

北大応援団と商大応援団の対面式の始まりだ。まずは、北大から商大の団長への花束贈呈。
すると、贈られた花束を投げ捨てる。

反対に、商大から送られた花束を、横溝さんは何と食いちぎったのだ。

この一連のやり取りも伝統の一つだ。そして、最大の見せ場が。

商大応援団:
挑戦状~。今日も今日とて、ご立派なボロに身を包む白豚よ

20メートル以上の巻紙に筆で書き綴った文章、通称・檄文の読み上げだ。互いにののしり合うのが恒例なのだ。

商大応援団:
今年も商大の勝利は揺るがぬぞ~

北大が受けて立つ。

北大応援団 横溝 航さん:
応戦状~。我々のいないこの3年間は寂しかったか~。私も諸君らに会えない寂しさで、食べられるのは一日3食と3時のおやつと夜食だけだった~。今年も北大の大勝利だ~

こうして、2時間に渡る対面式が終了した。

対面式を見た市民:
おもしろいです、初めて見たので

対面式を見た市民:
若いということは、いいことだ

対面式を見た市民:
コロナ禍で何もできなかったので、にぎやかなのはいいですね

初めての対面式を終えた横溝さんは…

北大応援団 横溝 航さん:
いろいろな人に見てもらえて、いろいろな人を活気づけられたかなと思います

誰もが予想すらしなかった突然の「コロナ禍」で失われていた100年以上の"歴史"。
復活した"伝統の対面式"は2023年、小樽商大の本拠地の小樽市で開催される。

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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