北海道東部、標茶町の牧場で7月11日、放牧中の牛1頭が死んでいるのが見つかった。

見つかった牛の死骸からは、通常の病気などによる事故ではないことを物語る痕跡が残っていた。

死んでいるのが見つかった牛(提供:牧場経営者)
死んでいるのが見つかった牛(提供:牧場経営者)
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内臓や血がなく…放牧中の牛が死んだワケは

見つかったのは生後10カ月の乳牛。腹部が大きく損傷した状態だった。死骸を見つけた牧場の経営者は、その異常な状態に驚いたという。

牧場の経営者:
あばらを突き破って内臓がなく、血も一滴もなく、おかしいなと思ってすぐハンターに連絡した

異常な状態の死骸…。さらに牛の背中には爪痕のような傷も残されていた。

牛の背中には爪痕のような傷が(提供:牧場経営者)
牛の背中には爪痕のような傷が(提供:牧場経営者)

牧草地には、牛の死に関わったとみられるものの痕跡が残されていた。

付近で見つかった足跡(提供:牧場経営者)
付近で見つかった足跡(提供:牧場経営者)

ぬかるんだ地面にくっきりと残された足跡…ヒグマだ。

ヒグマのコードネームは「OSO18」

北海道で出没するヒグマの足跡は10cmから15cmほどのサイズがほとんどだが、この足跡は幅18cm。異常なほど大きい足跡が地面に深く、しっかりと残されていた。

残された足跡は横幅18cmと大きい(提供:牧場経営者)
残された足跡は横幅18cmと大きい(提供:牧場経営者)

この牛を襲ったのは、コードネームが付けられたヒグマ「OSO18(おそ じゅうはち)」とみられている。

前足の横幅は18cmで、この足の大きさから推定される体重は300kgから350kg。立ち上がると体長は3m近いとみられている巨大なヒグマだ。

その「OSO18」とみられるクマの姿が、2019年に1度だけ監視カメラで撮影された。

これまでに1度だけ撮影された「OSO18」とみられるクマ(提供:標茶町役場)
これまでに1度だけ撮影された「OSO18」とみられるクマ(提供:標茶町役場)

すぐ後ろにエサが設置されていたにもかかわらず、エサを入れた檻には見向きもしなかったとみられる。

牛の被害は60頭「人前に姿を見せない」

標茶町周辺では2019年以降、放牧中の牛が相次いで襲われ、これまでの3年間で合わせて60頭が被害に遭った。いずれも「OSO18」による被害とみられている。

標茶町や地元の酪農家が檻や監視カメラを設置したが、非常に慎重なクマで、人前に姿を現したことは、これまでに1度もないという。

役場などではこの3年間、地元のハンターが体制を組んで「OSO18」の駆除を試みた。獲物に執着するクマの習性をもとに待ち伏せをしたこともあったが、人の気配がある場所では一切、姿を現さなかった。

一夜にして消えた死骸 大胆な側面も

牧場によると今回、死んだ牛は役場などの指示でそのままにしてあったが、翌日の午後、その死骸が消えていた。

記者:
やられた牛はどうなった?

牧場の経営者:
あると思ってたらないから、びっくりです

記者:
それって…

牧場の経営者:
また来たのか、わからないけど…

牛の死骸は現場から40mほど離れた沢で見つかった。慎重な上に大胆…。巨大ヒグマとの闘いは今年も続きそうだ。

(北海道文化放送)

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