米情報機関中枢の高官が「イラン戦争はイスラエルの陰謀だった」と糾弾して辞任した。
国家テロ対策センターのジョセフ・ケント所長がその人で、17日トランプ大統領に辞表を提出したが、同所長はCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)などの情報を横断的にまとめ「大統領の対外軍事判断に関する情報を扱う司令塔的な立場」なので、関係者の動揺を招いている。
加えて公開された辞表の内容も衝撃的だったので、その全文を紹介したい。
イラン攻撃の背景に“外部圧力” イスラエルと米国内ロビーを名指し
「トランプ大統領へ
熟慮の末、私は本日付で国家テロ対策センター長官の職を辞任することを決意いたしました。
現在進行中のイランとの戦争を、私は良心に照らして支持することができません。イランは我が国に対して差し迫った脅威ではなく、この戦争がイスラエルおよびその強力な米国内ロビーからの圧力によって開始されたことは明らかです。
私は、あなたが2016年、2020年、2024年の選挙で掲げ、第一次政権で実行した価値観と外交政策を支持してきました。2025年6月までは、あなた自身も中東での戦争が、我が国の愛国者たちの尊い命を奪い、国家の富と繁栄を蝕む『罠』であることを理解しておられました。
第一次政権において、あなたは現代のどの大統領よりも、終わりなき戦争に引きずり込まれることなく、決定的に軍事力を行使する方法を理解していました。そのことは、カセム・ソレイマニの殺害や、ISISの打倒によって示されています。
しかし政権初期において、イスラエルの高官や米国メディアの有力者たちは、あなたの『アメリカ・ファースト』路線を根底から揺るがす誤情報キャンペーンを展開し、対イラン戦争を促す世論を醸成しました。この“エコーチェンバー(同調圧力空間)”は、イランが米国に対する差し迫った脅威であり、今攻撃すれば迅速な勝利への明確な道があると、あなたに信じ込ませるために利用されたのです。
しかしそれは虚偽でした。そしてこれは、我が国に数千人の優秀な男女の命を犠牲にさせた破滅的なイラク戦争へと引きずり込むために、イスラエルが用いたのと同じ手法です。私たちはこの過ちを再び犯してはなりません。
私は11回の戦闘任務に従事した退役軍人であり、またイスラエルによって作り出された戦争で最愛の妻シャノンを失ったゴールドスターの遺族でもあります。その私が、米国民に何の利益ももたらさず、米国人の命を犠牲にするだけの戦争に、次の世代を送り出すことを支持することはできません。
どうか、我々がイランで何をしているのか、そしてそれが誰のためなのか、熟考していただきたい。今こそ大胆な行動の時です。進路を転換し、我が国に新たな道を示すこともできるし、あるいはさらなる衰退と混乱へと滑り落ちることを許すこともできるのです。
決断のカードはあなたが握っています。
あなたの政権に仕え、そして我が偉大なる国家に奉仕できたことは光栄でした。
ジョセフ・ケント 国家テロ対策センター長官 (辞任)」
After much reflection, I have decided to resign from my position as Director of the National Counterterrorism Center, effective today.
— Joe Kent (@joekent16jan19) March 17, 2026
I cannot in good conscience support the ongoing war in Iran. Iran posed no imminent threat to our nation, and it is clear that we started this… pic.twitter.com/prtu86DpEr
これまでも、イスラエルのネタニヤフ首相がトランプ大統領にイラン攻撃を進言していたことはマスコミで断片的に伝えられていたが、ホワイトハウスで情報を扱う中枢の高官が大統領宛の文書で認めたことで、今後のイラン戦争の行方にも影響することになるかもしれない。
(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)
