ロシアが米共和党の勝利に期待する理由

ロシアは、来たる米国の中間選挙で共和党が勝利すればウクライナへの支援を中止すると期待しているようだ。

「議会乱入事件の公聴会は、ウクライナを掃討しようというプーチンの企みを危うくするとロシアの評論家が論じる」

ロシアの攻撃を受けるウクライナの街
この記事の画像(4枚)

英紙「デイリー・エクスプレス」電子版6月14日の記事 は、こういう見出しで逆説的にロシアの願望を伝えた。

米議会では昨年1月6日に議会がデモ隊に襲撃された事件の公開公聴会が6日から始まり、ロシアでもその経緯が詳しく報道されているが、「デイリー・エクスプレス」紙の記事は公聴会では民主党側が優位なので、ウクライナ支援も変わらず続くのではないかというロシア側の懸念を伝えていた。

「ウラジミル・プーチンの子飼いたちは、国営テレビの討論番組で米国の今年の中間選挙の影響を論じ、現在先行している共和党の優位を損ねることになるかもしれないと分析した。出演者の一人で下院議員のアンドレイ・グルリヨフ氏は、中間選挙の結果はロシアの侵攻に対するウクライナの抵抗を支える資金援助に直接的な衝撃を与えるだろうと指摘。もし共和党が勝てば米議会はウクライナに対する援助を停止するのにとまで述べた」

ロシアでは、共和党の方がウクライナ問題では対応が柔軟だと考えられているようで、このテレビ番組に先立ってロシアの著名なテレビ・キャスターのウラジミル・ソロビヨフ氏が「中間選挙で共和党が勝利すれば、ウクライナへの米国の支援は縮小するだろう」と語るビデオがロシアのSNSの間で拡散していた。

ロシアの著名キャスター・ソロビヨフ氏のビデオ

ウクライナ出身で米国のニュースサイト「デイリー・ビースト」の記者ジュリア・デイビスさんがツイッターで公開したそのビデオで、ソロビヨフ氏はこう語っている。

ロシアの著名キャスター・ソロビヨフ氏のビデオ

「今ロシアは(停戦)交渉に参加する必要はない。時が我々に利しているからだ。(戦いの)進捗具合も我々に有利にはたらいている」

「(もし11月の中間選挙で)共和党が勝てば多くのことが変わる。もちろん多くのことが変わる」

「共和党員は静かにこう言うだろう。『我々はなぜ(この紛争に)巻き込まれ、多額の我々の金を(ウクライナへ)送らなければならないのか?』と」

「共和党員は言うだろう。『なぜウクライナのような腐敗したナチスを助けなければならないのか?』と」

「彼らは自問するだろう。『我々は誰を支援しているのだ?もちろんロシアは悪だ。制裁は続けなければならない。しかし、我々も国内に学校のための資金が不足しているような時に、巨額の資金を(ウクライナに)投げ与え続けなければならないのか』と」

「『メキシコとの国境の壁を強化する代わりに、中小企業を援助する代わりに我々はその資金を腐敗したウクライナに与え続け、それが何にどう使われたのかさえ分からないのだ』と」

ソロビヨフ氏はビデオでこう語り、共和党が中間選挙に勝てば党内から必ずこういう声が上がりウクライナに対する支援にブレーキがかかるだろうと予測する。

米共和党の伝統的「孤立主義」とは?

事実、先にバイデン政権と与党民主党が提案した400億ドル(採決当時の為替レートで約4兆6000億円)のウクライナ支援予算案の採決の際、上院で11人の共和党議員が反対票を投じている。

アメリカ連邦議会議事堂

その指導的役割を果たしたランド・ポール議員(ケンタッキー州選出)は、反対の理由を議会でこう証言していた。

「私が忠誠を誓ったのは合衆国憲法に対してであり、外国に対してではない。米国の経済を破滅させながらウクライナを救うことはできない」

共和党には伝統的に「孤立主義」の考えがある。中間選挙で勝利すれば、ロシアが期待するように「他国への救済」は二の次になるかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎


アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。 NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。

国際
記事 260