日本サッカー界の一大イベント、JリーグYBCルヴァンカップ。

リーグ戦、天皇杯と並ぶサッカー国内3大タイトルの一つであり、Jリーグ最強クラブが決まるルヴァンカップFINAL名古屋グランパスvsセレッソ大阪が、10月30日、埼玉スタジアムで2年ぶりに行われる。

その舞台で戦う選手たちにある、それぞれのドラマを追った。

今回は幼馴染でもあるライバルと切磋琢磨しながらプロになり、決勝の舞台まで辿り着いたセレッソ大阪・坂元達裕。

坂元の最高のライバル・小泉佳穂

今シーズンのルヴァンカップで、大久保嘉人・乾貴士・清武弘嗣を筆頭に、超攻撃力スタイルを武器にファイナルまで駆け上がってきたセレッソ大阪。

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その中でも最も脅威となっているのが、緩急をつけた巧みなドリブルから数多くのチャンスを演出するMF・坂元達裕だ。今年6月にはA代表デビューも果たした。

そんな坂元のこれまでのサッカー人生には、切磋琢磨し合ってきた最高のライバルがいた。

「お互い夢を見ていました。目標じゃなくて、“夢”です」と子供の頃を語ったのは、現在、浦和レッズで攻撃のタクトを振るう技巧派MF小泉佳穂だ。

東京都出身の幼馴染でもある2人は、子供の頃から共にプレーし、中学時代はFC東京U-15むさしに所属。

ⒸF.C.TOKYO
ⒸF.C.TOKYO

周囲が一目置くほどの存在だったが、身体が小さいという理由で、目標としていたユースへの昇格は叶わなかった。

2人で技を盗み合い、身につけた代名詞

いきなり夢破れた2人は腐る事なく努力し、高校サッカーの強豪・前橋育英に進学。3年生で全国高等学校サッカー選手権大会で準優勝するなど、がむしゃらに駆け回った3年間だった。

特に小泉の技は、坂元にとって大きな刺激だった。

「蹴るのを止めて逆にドリブルしていく感じ。高校の時にヨシオ(小泉)がやっていて、全部相手が引っかかっていたので」

小泉の最大の武器である緩急をつけたドリブル、そこから鋭くエグる切り返し。この技に惚れ込んでいた坂元は、躊躇する事なく真似した。

「ボールを蹴るふりをして、蹴らずにそのままドリブルをする。『これ俺にもできるんじゃないか?』と思って、練習し始めて、自分もできるようになった感じです」

その時のことを小泉も覚えている。

「僕たち2人は、色々な人から色々なことを盗んでいた3年間だったので、そのうちの一つがキックフェイントで、今では(僕の)代名詞になっていますけど、他にも色々な細かい技術を盗んで盗まれてではありました」

切磋琢磨した高校時代を経て、坂元は東洋大学、小泉は青山学院大学と、共に大学リーグ2部にサッカー部がある大学へと別々に進学をした。

もちろんJリーグへという夢は常に持っていたがそれはまだ単なる夢でしかなかった。

「いつかJの舞台で対戦したい」という夢

小泉が入部した青山学院サッカー部が在籍4年間、2部だったのに対し、坂元が入部した東洋大学は坂元を中心に奮闘し、3年時に関東大学リーグの1部昇格。

2人の明暗はくっきりと分かれ、坂元にJ2モンテディオ山形から声がかかった。

たわいないことはいくらでも話せるのに、大事な話は少し照れくさい。ライバルにはそんな距離感がある。

自分のプロ入りを誰よりも喜んでくれると思ったが、そのとき、小泉選手の顔に笑顔は無かった。サッカーを諦めようとしていたのだ。

「(坂元がプロ入りの報告を)言うかどうか迷った期間があったんじゃないかと思うんですけど。当時僕がサッカーをやめようと思っていた時期にそういう話があって、タツ(坂元)にとってというよりも、僕にとっての大きなターニングポイントになったのかなと思います」

中学、高校時代、「佳穂には負けたくない!」と背中を追い続けた坂元だったが、一足先にプロになった結果、優越感に浸りたかったわけじゃなかった。

ずっと背中を押してもらっていたライバルを、今度は自分が押す番だと考え、説得を重ねた。

「僕がプロで活躍できる以上に、ヨシオ(小泉)なら絶対できるなと思っていたくらいなので、そこでサッカーを辞めるのを止めましたし、そこからまた(小泉は)プロを目指し始めたと思いますね」

その言葉の通り、小泉は知人に強化部を紹介してもらい、当時J3だったFC琉球の練習に参加し、その後プロ契約。今季浦和レッズに移籍し、FC琉球でチームメイトだった小野伸二の背番号18を引き継いだ。

そして、「いつかJの舞台で対戦したい」という“夢”が叶う日は、意外と早くにやってきた。

10月6日、10日のルヴァンカップ準決勝、セレッソ大阪vs浦和レッズ戦で2人は敵味方としてピッチに立った。2人は共に見せ場を作り、2戦合計2―1と、坂元が所属するセレッソ大阪が決勝戦へと進むことになった。

「良く本人と話すんですけど、本当に中高の頃は想像していなかったので。プロになれるという確信もなかったので、結構誇らしい気持ちは凄くあります」

そう話した小泉の想いを旨に、坂元は決勝戦へと挑む。

「やっぱライバルというか、そういう存在がいるというのは、本当に1番大事だなと自分は思っていて。ずっと負けたくないと思いながら隣にいてサッカーをやってきた選手なので、そういう仲間でありライバルがいたことが、自分がプロになれた1番の要因かなと思います」

小泉は更にライバルにエールを送った。

「自分たちみたいに全国区じゃない選手でも、Jリーグで輝けるということを、FINALという大舞台で証明して欲しい」 

2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝
名古屋グランパスvsセレッソ大阪
10月30日(土) 午後1時〜(フジテレビ系列・全国生中継)
https://www.fujitv.co.jp/sports/soccer/levaincup/index.html

LIFE WITH FOOTBALL
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