サッカー・J2の第35節で金沢を下し、ついに“J1自動昇格圏”の2位へと浮上した清水エスパルス。7月以降は黒星知らずで、次節は球団新記録となる“14試合連続負けなし”が懸かっている。監督・選手に意気込みを聞いた。

2位浮上も秋葉監督に浮かれた様子なし

エスパルスは第35節で金沢に勝利し、順位を2位とした。第32節・第33節とも“勝てば2位”となる状況だったものの力を発揮しきれず、三度目の正直でようやくつかんだ“自動昇格圏”だ。これで13試合連続負けなしと、球団の過去タイ記録にも並んだ。

3対0というスコアは第34節の山形戦と同じで、エスパルスが掲げる“超攻撃的”の看板は健在。ただ特徴的だったのは、金沢戦の得点はいずれも“キレイ”に崩したものではなく、どちらかといえば“泥臭い”スタイルだったこと。特に先制した場面は、サイドハーフの2人が相手守備陣にハイプレスを仕掛け、2試合連続先発出場となった岸本がDFからボールを奪い取った上で、カルリーニョスが押し込んだというものだった。岸本が「相手の球を奪えることは自分のストロングポイント」と話す通り、普段から秋葉監督が口にする「良い守備からよい攻撃へ」を体現させたプレーだった。

また13試合ぶりに先発出場したボランチ・竹内も鋭い危機察知能力で金沢の攻撃の芽を摘み取り、秋葉監督の的確な選手起用を証明した。リーグ戦は残り7試合と、この先しびれるゲームが続く中で今シーズン先発出場の機会が少なかった選手が積極的なプレーで試合をよい方向に導いたのは大きな収穫だ。

次節は甲府戦。前回、4月の対戦はアウェイで0対1と敗れリカルド 前監督の解任につながった。チームを率いる篠田監督はエスパルスの元ヘッドコーチ・監督と因縁が深い。ただ秋葉監督は「あの時はまだ挽回できると思っていた。監督も自分に代わったし、私情を排除して目の前の試合に集中するだけ」と落ち着いている。一方で「この流れを『誰にも止められないですよね』と言われるほどまで高めたい」とも話す。

甲府はACL出場のため20日にオーストラリアで試合をこなして第36節に挑むという強行日程。富士山ダービーは24日13時にキックオフされる。

秋葉監督「まだ何も成し遂げていない」

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-このところ複数得点が取れている要因
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
ずっと言い続けてきた「超攻撃的」「超アグレッシブ」をやり続けてきて、「右肩上がり」ばかりではなかったが、連携・連動・練度の高まり・ブラッシュアップ等やり続けてきたことが実ったということで、毎日毎日厳しくトレーニングを続けてきたたまものだと思う。

-次節はエスパルスの元コーチ・監督の篠田氏が率いる甲府戦。第7節で監督更迭つながった際の相手だが
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
アウェイの甲府戦で負けたが、あの時まだ挽回できると思っていた。エスパルスはそんな位置にいるクラブではない、とも。監督も自分に代わったし、クラブも変わった。私情を頭の中から排除して、目の前の試合に集中して勝つだけだと思う。

フットボールの本質で上回るということにフォーカスしたい。その上で、エスパルスにはいい選手がたくさんいるし「超攻撃的」というのは守備でも当てはまる。また、ホームにはサポーター・ファミリーで共に戦ってくれる人がいる。すべての人の助けを借りてホームで勝ち点3を手にしたい。

2位に上がったが「開幕7試合で勝ち点5からの昇格」という、誰も成し遂げていないことにチャレンジしている最中、期待を感じながら勝って昇格をつかみたい。

-総力戦ということで前節は竹内がいいパフォーマンスをした
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
今回の先発は竹内が自身で勝ち取ったもの。我々はいつも「勝つ確率が高くなる」ために選手を選んでいる。スタッフと話し合った上で「金沢から勝ち点3を奪うため」にふさわしい人選として、竹内の起用が一番いいと判断しただけ。

竹内自身の日頃の努力、13戦ぶりの先発…キャリア含めて本当にすばらしい選手がいる。なかなか出場機内がなかった選手の活躍がこれからも大事になる局面でとてもいいこと。

-金沢戦の勝利で2位を浮上した上で「さらにギアを上げる」と発言
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
「さらにギアを上げる」と発言したのは、したたかさや、勝負強さを高める意味。経験上、シーズンのラストになると試合で勝つのは難しくなる。

だが、我々には経験値を持った多くの選手がいる。どういうゲーム運びをするかで未来が見える。ここまでで、我々はまだ何も成し遂げていない。あと7試合での結果がすべて。垂れるか、あるいはチャンピオンになれるのか、全く違う展開がある。

一方で「遠くを見ていると船酔いしない」ということわざもある。「J1で優勝するチームになる」という5年計画の1年目という目標もブラさない。「我々がたどり着く場所」という目標を常に見据えてトレーニングして行きたい。

いろんな距離感がよくなっている。他力もあるが目の前のゲームに集中する。チームの高まりだけでなく、サポーターがアウェイにも来てすばらしい応援で支えてくれる。この流れを「誰にも止められないですよね」と言われるくらいまで高めたいと思っている。

乾選手「7つ勝てれば文句なしに昇格」

清水エスパルス・乾貴士 選手:
ボール運びは、自分がある程度うまくできる。特に前への運びやターンは常に意識して、自分がやりたいようにやっている。

守備のスイッチで役立つといわれるが…わからないが、周りが助けてくれている。残り7試合…、まあ上は見るが、とにかく1戦1戦。残り7つ勝てれば文句なしに昇格できる。優勝は「?」だが、残り全勝というのが自分たちにできるベストのこと。いつも通り、変わらずやりたい。

岸本選手「自分のよさを出せている」

清水エスパルス・岸本武流 選手:
(第34節・第35節は)今まで出られなかった悔しさが爆発した。「思いっきり自由にやったろ」という感じ。

前の試合、攻撃への指示は特になく「自由にやれ」と言われた。金沢はマン・ツー・マン・ディフェンスだったので、特にいろいろなスペースに意識して動き、外そうとしていた。狙い通りフリーになれた。相手の球を奪えることは自分のストロングポイント。流動的な動きは自由の中にも規律があり、規律の中でも自分の良さを出せている。特にゲーゲンプレスは絶対で、ショートカウンターも。距離感が最近すごくいいから、よい攻撃生まれるし、名前負けしていないプレースタイルになっていると思う。

全然まだ追いかける立場。上を目指して僕たちが勝てば、首位逆転の追い風になる。

原選手「上がらなければ意味ない」

清水エスパルス・原輝綺 選手:
ボールを持つ時間が長くなるとカウンターを受ける機会も増える。金沢戦でも取られ方が悪いシーンがあった。カウンターを完結させてしまったので減らしたい。3B・4Bといったフォーメーションの違いよりも、意識を高める方が大事。全体は悪くはなかった。

エスパルスは攻撃が得意な選手が前線にいて、自分のサイドでは中山や岸本がいるのでうまく活かしたい。今の守備陣について、最後に個人が体を張ることで耐えているところがある。守れたからOKではなく、その回数を減らすことが大切。組織的にはまだこのレベル、J1に上がればやられるイメージがある。今は個人個人で頑張るしかないが。

記録なり、連続とか、何戦負けようが、上がらなければ意味ない。勝つことに尽きる。楽しみながら頑張りたい。

竹内選手「すべて出し切ることが大事」

清水エスパルス・竹内涼 選手:
久々に出て、まずはチームが勝ててよかった。自動昇格圏に上がれた。残り全部勝つ目標の中で、まず1勝できてよかった。

金沢であんなに応援してくれるサポーターはエスパルスしかない。あれを見て自分の中でスイッチが入った。もっといいところをたくさん出してプレーしたかった。まだ全然だめ。これから試合数が少なくなる。そうすればチャンスが少なくなるし緊張感の高い試合になるので、チームの積み重ねしかない。

自分ももっとボールを回収して、チームで攻め続けたい。そうすればピンチはない。攻撃から守備になる時、もう1回行けるつなぎ役になるためによいポジションから取り返したい。チームのいいところは続けるべき。ショートカウンターもいろんなバリエーションが必要。相手はどうあってもいろいろな点の取り方をすることが大事。

勝ち点3が最も大事だが、過去の経験からチームのすべてを出し切ることが大事。(首位・町田を)追い抜くために勝ち点3は不可欠だが、思い通りに行かないこともある。この流れを止められないものにしていく。チームに穴をつくらないよう未然に防ぐのが自分の役目。

(エスパルス時代の)篠田監督には指導を受けたことに感謝している。苦しい時にチームを率いてくれた。選手もその指導で踏ん張り切れた。甲府戦に勝つことがその感謝を伝えることだと思う。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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