日本サッカー界で長年トップ選手として走り続けて来た中村憲剛(40)と内田篤人(33)。

かつて日本代表の合宿で出会い、足元へのたった一本のパスでお互いの力を特別なものと認め合ったという二人が、JリーグYBCルヴァンカップ決勝に向けた収録で、サッカーと引退後の生活を本音で語り合った。

学年で言えば7つも違う二人が、フランクに語り合った1時間の後編をお届けする。

(前編:「娘がサッカー選手連れて来たら嫌」内田篤人が中村憲剛と語った父としての本音と、サッカーへの想い

中村少年に刻まれたキングカズ・伝説ゴールの記憶

明日開催されるルヴァンカップの決勝では、2度目の優勝を狙うセレッソ大阪と、堅守を武器に初進出を果たした名古屋グランパスが対戦する。

これまで29回もの歴史を重ねて来たこの決勝戦には、中村の脳裏に焼き付けられた鮮烈なゴールの記憶があるという。

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中村憲剛(以下、中村):
個人的には、初回の92年ですね。
初回はJリーグ始まる前の年に始まったんだよね、確か。ヴェルディ対エスパルス。

内田篤人(以下、内田):
92年って、僕4歳ですよ。

中村:
私は12歳なんで覚えてますよ。

内田:
その時のこと覚えてます?

中村:
覚えてる、覚えてる。
次の年からプロ化する事になっていて、凄く期待が高まっている時で、国立競技場なんか凄い雰囲気だったんですよ。

内田:
誰が出てました?

中村:
三浦知良さん。

内田:
ラモスさんとかの時ですか?北澤さんとか、武田さんとか?

中村:
エスパルスは長谷川健太さんとか。

内田:
ヴェルディの勝利?

中村:
1-0でしたね。 カズさんが決めたんですよね。

内田:
よく覚えていますね。 

中村:
そのぐらいインパクトありましたよ。

内田:
歴史あるもんな、この大会は。 

中村:
いろんな人たちが積み上げてきて、今がありますから。

12歳の中村少年の脳裏に焼き付けられた初ゴール。
そのゴールを決めた三浦知良(現・横浜FC)もその瞬間をこう語る。

「今でも鮮明に覚えていますけど、パスがで出てきてかわした瞬間に、『もらった』っていう感じはしましたね。ゴールできる雰囲気がありましたんで、自信を持って打ちました」

超満員5万6000人の大観衆が見つめる国立競技場。

後半12分、ゴール前でスルーパスを受けた三浦がDFの逆を突くステップでかわすと、左足から放たれたシュートがネットを揺らす。このゴールが決勝点となり、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)に初代王者という栄誉がもたらされた。

「(スタンドは)今とまたちょっと違った雰囲気で、それこそ皆が鳴り物を持っていて、その鳴り物の音が凄く響いて。でも何か新しいモノを見るという雰囲気が物凄くありましたし、プロリーグがその翌年から始まるので、どんなレベルなんだろう、どんなチームなんだろう、とサッカーを知らない人たちまでも注目してくれて。

当然スタジアムは満員でしたが、これからのJリーグを占うような、どういうスタートを切れるかという意味も含めてとても大事な一戦でした。そういう意味で、自分のゴールで優勝できて本当に嬉しかったです」

こうして歴史の扉を開いた三浦知良のゴールは、ひとりのサッカー少年の脳裏に刻まれ、次のドラマを生み出して行く。

「勝つことでしか味わえない景色」

これは2年前、中村がこのルヴァンカップで初優勝した際のコメントだ。

「感無量ですね。勝ったものしか味わえない景色を見られたので。
ルヴァンカップを制して、あの場所(スタンド席)に登る憧れもあったので、ようやく辿り着いたなと。個人的に(決勝は)4回目の挑戦でしたけど、勝てて良かったです。最高ですね」

中村の所属する川崎フロンターレは00年、07年、09年、17年と4度決勝に進出したが、いずれも敗れ準優勝。“シルバーコレクター”と揶揄されながら、中村個人としては4度目、チームとして5度目の“挑戦”となったのが、2019年の決勝だった。

同点で突入した延長前半にメンバーの退場で10人となり、そこで与えたFKから得点を奪われ崖っぷちに立たされたが、延長後半に起死回生の同点ゴールを決めて3ー3に追いつくと、PK戦の末に勝利をたぐり寄せ、初優勝を果たした。

試合後の表彰式、初優勝を果たしたフロンターレのメンバーがスタンドの階段を昇ると、その中央には高々と優勝カップを掲げる中村の姿があった。長い苦しい敗退の歴史を共にしたサポーター達と、勝利に酔いしれた。

そして中村が「勝つことでしか味わえない景色」と語るのが、まさに優勝チームが階段を登り、スタンドに設けられた表彰スペースでカップを掲げる瞬間だ。

一発勝負の決勝で破れたチームは、その悔しさを目に焼き付けるように下から見上げ、満員の観客が優勝チームの栄冠を拍手で称える。トーナメントの決勝戦だからこそ生まれる勝者と敗者のコントラスト。

この歴史ある大会の象徴的なクライマックスだ。
 

ーーやはり上から見る景色って特別ですか?
中村:
全然違いますよ。全然違いますよ。3回負けた人間が言うんだから間違いないです。多分こんな負けた人間はいないと思うんで。
それだけに喜びもひとしおでしたね。サポーターの皆さんも一緒に喜んでくれましたし。あの時スタジアムの上から見た景色は、本当に素晴らしいものでした。あれはもう本当に勝ったチーム、勝った選手にしか味わえない、最高の瞬間だったと思います。


明日土曜日に迎える決勝。今年はどんな戦いが展開され、どんな表彰式になるのだろう。

ワクチン検査パッケージで観客は最大2万人

明日、土曜日の決勝。

その舞台には大久保、乾、清武を擁するタレント揃いのセレッソ大阪と、今季19試合無失点を記録している堅守の名古屋グランパスが勝ち上がった。

グランパスのディフェンスをセレッソの攻撃陣がどう打ち破って行くのか、まさに矛と盾の戦いだ。優勝賞金は1億5千万円にものぼる。

そしてJリーグは、現在定められている観客数の上限1万人に加えて、最大で1万人という規模で「ワクチン・検査パッケージ」による実証実験をこの決勝戦で実施する。いよいよスポーツ界に本格的な大観衆が戻ってくる。

来場者は「ワクチン接種記録証」か「PCR検査陰性証明」のいずれかと、本人確認書類、事前購入の観戦チケットの3点を提示することで入場可能となる(12歳以下は不要)。

今月24日に開催されたJ1名古屋×神戸の一戦でも、「ワクチン・検査パッケージ」によるチケット販売が実施され、今季のJリーグ主管試合で最多となる、1万9257人が来場したばかりだ。

内田:
(中村)憲剛さん、今回のFINALには大事なことがありまして、ワクチン検査パッケージの技術実証実験で、最大2万人までお客さんが入れそうなんですって。こういうJリーグの取り組みについてどうお考えですか?

中村:
昨シーズンコロナ渦の中で無観客から始まって、人数上限が決まりながら有観客になって。
昨シーズンは(内田)篤人も僕も現役でやっていたので、無観客の寂しさや、お客さんが戻ってきて声は出せないんですけど、拍手だったり熱気みたいなところは、凄く感じることがあったので。

状況も少しずつ変わってきて、今回2万人っていうのは、今までここ最近のイベントの中で一番多い人数じゃないかなと思っているので。

内田:
確かに、一番多いんじゃないかな? 

中村:
ここはしっかりと実施しつつ感染が拡大しなければ、これがまた一つ立証されていくわけなので。皆さんが感染対策しながら、予防しながらやっていただければと思いますね。 

内田:
プロのサッカー選手として、お客さんが入ってくれるというのが一番のモチベーションですし、それが僕たちのハイパフォーマンスを引き出してくれると思うので。

最近ではJリーグの練習もお客さんが入って見られるようになりましたし。これが今回成功すれば、また新たなスタートというか、リスタートになるのではないかと思っているので。
良いゲーム、良い試合もそうですけど、感染対策っていう面でもお客さんには色々協力してもらいながら、観る側も気をつかって行きたいと思います。

この週末、最大2万人の観客が詰めかける埼玉スタジアム2002。
最後に表彰台の上から、“勝者だけが味わえる景色”を見るのは、2度目の優勝を狙うセレッソ大阪か、堅守を武器に初の決勝進出を果たした名古屋グランパスか?

決勝は明日、10月30日午後1時05分にキックオフを迎える。

(取材:フジテレビサッカー班 構成・文:吉村忠史)
 

(前編:「娘がサッカー選手連れて来たら嫌」内田篤人が中村憲剛と語った父としての本音と、サッカーへの想い

2021JリーグYBCルヴァンカップ決勝
名古屋グランパス×セレッソ大阪
あす午後1時〜(フジテレビ系列生中継)
宮本恒靖&内田篤人がW解説!二人に囲まれて360度カメラによるVR観戦も!
https://www.fujitv.co.jp/sports/soccer/levaincup/index.html