サッカー・J2に所属する藤枝MYFCにはゴール裏に心強い味方がいる。小杉一左・18歳。熱烈なMYFCファンだ。リーグ戦も残り10試合となる中、チームの戦いを陰で支える若きサポーター代表の思いに迫った。

受験を控えながらも貫くクラブ愛

藤枝明誠高校・小杉一左さん(18)
藤枝明誠高校・小杉一左さん(18)
この記事の画像(7枚)

夏。大学受験を控えた高校3年生にとってはまさに勝負の夏休み。ただ、藤枝明誠高校の小杉一左さん(18)の場合、“勉強一筋”というわけにはいかない。なぜなら愛してやまない藤枝MYFCの試合があるからだ。

小杉さんはMYFCの熱狂的なサポーターで、選手やファンの間ではちょっと知られた存在。ピッチに向かって大きな声で選手を後押しするだけでなく、応援歌や横断幕の作成、さらには試合のない日は集客に向けてビラ配りに参加するなど、高校生ながらクラブとサポーターをつなぐ“架け橋”のような存在となっている。

小学6年でサッカー人生が暗転

サッカーにのめり込んだのは名門・静岡学園高校サッカー部OBで父・真也さんの影響が大きく、小学2年生からサッカーを始めると俊足FWとしてゴールを量産した。もちろん将来はJリーガーになる夢を描いた。

小学校時代の小杉さん(提供:本人)
小学校時代の小杉さん(提供:本人)

しかし小学6年生の時、小杉さんのサッカー人生が一変する。

ある日突然感じた腰の痛み。医師からは椎間板ヘルニアであることを告げられ、競技の続行を断念せざるを得なくなった。父・真也さんによれば「普段の生活もままならない感じ」だったといい、小杉さんは当時のことを「友達みんながプレーしている中、自分はピッチ立つことができず本当に悔しかった」と振り返る。

プレーは出来なくとも…

残酷な現実を受け止めきれずに悶々とした日々。ただ、目標を見失った小杉さんを救ってくれたのもまたサッカーだった。それが地元・藤枝を本拠地とするMYFCだ。当時はJ3に所属し、お世辞にも強豪とはいえないクラブだったが、サポーターの熱い姿に心が震え「応援している人がかっこよく見えた。僕もあの中に入って一緒にやってみたい」と思うようになった。

選手からも知られた存在に
選手からも知られた存在に

高校生になってからは以前にも増してクラブへの愛が高まり、本拠地開催の時はキックオフの4時間も前からスタンドに駆け付ける。もちろん今シーズンのホームゲームは皆勤賞だ。

白星から遠ざかっても心は離れず

取材した8月5日はモンテディオ山形を迎えての一戦。ただ、この時MYFCはホームで直近5試合連続白星なし。苦しい状況が続いていた。

この日も悪い流れを断ち切れず先制を許す。それでも小杉さんは声を張り上げ、選手を鼓舞する。

すると後半開始直後に岩渕良太 選手のゴールでMYFCが同点に追いつく。岩渕選手は「藤枝のホームスタジアムは観客も近くて、すばらしい雰囲気を作ってくれている。それに応えなければとの思いがある」と話す。

試合は試合終了間際の失点が響き、MYFCはまたしてもホームでファンに白星を届けることができなかったが、ピッチには小杉さんが「下を向いちゃダメ!」と選手に檄を飛ばす声がこだました。

藤枝MYFC・岩渕良太 選手
藤枝MYFC・岩渕良太 選手

小杉さんはクラブに、そして選手に対して「『共に戦っている仲間だよ!』『どんな時でも側にいるよ!』ということを伝えたい」と熱く語り、岩渕選手も「彼みたいな人が率先して末永くチームを支えてもらいたい。MYFCがもっと魅力あるクラブになるための仲間」と一目置く。

藤枝MYFCへの愛を語る小杉さん
藤枝MYFCへの愛を語る小杉さん

小杉さんは言う。「前回の自分の応援よりも、きょう、それ以上の応援をする。それを全員がやれば大きな応援になる。みんなが楽しめて、全員が100%以上の応援ができるゴール裏を作りたい」と。

自分に再びサッカーとつながる道をくれたMYFCへの恩返しは、選手が最高の環境で試合に臨めるよう声援を届けることしかない。小杉さんはサポーターを束ねる“若頭”として、これからも選手を鼓舞し続ける。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

静岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。