コロナ禍でインバウンドの姿が消えた北海道の観光地「ニセコ」エリア。

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コロナ後を見据えて開発は進んでいるが、外国人観光客から地元客にターゲットをシフトする動きが進んでいる。ニセコはどう変わるのだろうか。地域に根差した観光のあり方とは?

外国人観光客は98.5%減と過去最低に

コロナ後を見据え、リゾート開発が続くニセコエリア。以前は外国人観光客であふれていたが、その姿が消えた。かわって目につくのは地元や北海道内からの観光客だ。

観光客:
異国的な感じで、すがすがしい。そんな気分を味わいつつ、おいしいものも多いですね

観光客:
イモとか野菜は本当においしいですね。海外の人もたくさん店を出しているのでおもしろいです

昨シーズンのニセコ地区の宿泊者数は、前期から約55%も減少し、調査開始以来最低となった。さらに外国人観光客は、98.5%減の3900人と激減した。

そこで、地元客向けに舵を切る店が続々とオープンしている。

ターゲットは「地元・日本人の客」

紅茶で有名な「ルピシア」は本社を東京からニセコに移し、クラフトビールを醸造。地元の野菜を使った食事も人気だ。

乳製品で有名な「高橋牧場」では、新鮮な牛乳を生かしたチョコレート専門店「カカオクラウン」を始めた。

夏の間開かれたマルシェを企画した自然派食品の店では、客層が変わったという。

PYRAM 小長井真樹さん:
今までオートミールは日本人は買わず外国人が買っていましたが、コロナ禍になって少しずつ日本人が買うようになりました

小長井さんは、ニセコ観光のあり方が問われているとも感じている。

PYRAM 小長井真樹さん:
本当に必要で大事なものって、地元にいる人だと思います。それを無視することはできないし、店も淘汰されていくと思います。地元の人に向けたものを常に発信するのが大事

北海道産のハッカなどでジンを製造

地元客を重視する動きが高まる中、10月1日にオープンしたウイスキーの蒸留所。手掛けたのは新潟県の日本酒「八海山」で有名な酒蔵だ。

ニセコ蒸溜所 南雲二郎 社長:
新潟県の日本酒メーカーが来て何となく作ったということではなく、ニセコから生まれ、ニセコが育てたということを相当強くイメージしています

ウイスキーは出荷までに3年間熟成させなければならない。そこで、当面の間はジンを製造し販売する。「ohoro(オホロ)」という商品名は、アイヌ語で「続く」という意味。

ジンは香りづけのため様々な植物を使うが、地元産のものにこだわっている。

ニセコ蒸溜所 南雲二郎 社長:
ヤチヤナギとか二ホンハッカ、北海道産のものを取り入れています。香菜の特徴を生かしてジンを製造しているので、非常に地産地消を表現しやすい飲料だと思います

ジンを新たな名産品とし、蒸留所では伝統工芸品や他の特産物にも出会える新たな観光拠点にしたいと考えている。今までのインバウンド頼みの観光からの脱却を目指しているのだ。

ニセコ蒸溜所 南雲二郎 社長:
これまでの日本観光は外国人に頼りきっていました。日本人の客がいかに観光、その土地を見直してくれるかということが重要な新しい考え方です

リゾート開発が続くニセコエリア。地元客にとって魅力的な場所となれるのか、観光地が試されている。

【取材後記】
スキーリゾート地として、世界的に注目されているニセコエリア。食、自然、アウトドア、温泉など、札幌から車で2時間で満喫できる魅力あふれる場所です。

ところが冬になると、スキー場は9割ほどが外国人客。おのずと、その外国人客向けのホテルや飲食店の出店が相次ぎ、「ニセコ価格」と言われる値段設定があるほど、海外リゾート化してしまいます。

2030年度の北海道新幹線の延伸・札幌五輪招致と、しばらく大きな話題が続きそうなニセコエリアは年々開発が進み、いつしか日本人が近寄りがたいスキーリゾートになってしまったのです。(私は異国情緒漂う雰囲気も好きだったのですが…)

そんな中、直撃したのが新型コロナウイルスの感染拡大です。インバウンドの姿が消えてしまいました。今後の町はどうなるのかという思いで現場へ向かいました。

すると創業約100年の新潟県の老舗酒蔵が、世界的にも人気のあるウイスキーをニセコで作るという話を聞きました。このウイスキー蒸溜所も、コロナ収束後のインバウンドを狙って作っているのか?と思いきや、取材を進めると…。

「今までの日本観光はインバウンドに頼りすぎていた」「酒は地元に愛されることが大事」と、新潟で愛される酒を造り続けてきた社長が語りました。

この言葉に私は「北海道観光」のヒントがあると思いました。

北海道のように豊かな素材に、外から来た人が魅力を感じるのは当たり前。これに企業や店は乗っかるだけでなく、地元が地元のものをまず愛し、育て、誇りに思い発信することが大事で、そこに国内外の観光客がついてくるのではないかと。

ニセコエリアは北海道の中でも特異な場所です。溢れるポテンシャルをどう生かすことができるのか?観光地としてどうあり続けるべきか?そう問われているのではないかと感じました。今後も注視していきたいと思います。

(北海道文化放送 アナウンサー 八木隆太郎)