アコヤ貝の大量へい死に続いて、新型コロナウイルスの影響で打撃を受ける愛媛県内の真珠養殖業者。起死回生をかけた一手は、業界で規格外品とされる「ふぞろいの真珠」を使ったパールジュエリーだ。

“規格外”が魅力のバロックパール

真珠といえば、玉の丸さや大きさなど、規格がきちんとそろったものが一級品とされる。

一級品は玉の丸さ・大きさの規格がそろっている
一級品は玉の丸さ・大きさの規格がそろっている
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それに比べ、こちらのジュエリーの真珠はどこか形がふぞろい。

あえて一定の基準を満たさない「バロックパール」と呼ばれる規格外の真珠を使った製品だ。

 
 

無茶々園 事業部・高瀬英明部長:
形とか輝き、光りが悪いものに関しては、大量に市場流通させてしまうと業界全体の価値が下がってしまうので、流通しないのが一般的です

一般に流通しないため、販売は通販サイトで消費者と直接行われる。形や色、大きさなどにむらがあるが、その個性も魅力のひとつ。

真珠を並べると色もそれぞれ異なることがわかる
真珠を並べると色もそれぞれ異なることがわかる

通常のパールなら3万円はするネックレスが、バロックパールだと約8割も安い7000円で購入できるなど、買い求めやすい値段も人気だ。

また、製造の過程で労働の搾取や環境への悪影響がない「エシカルジュエリー」としても、いま全国的に注目を集めている。

形が良くても悪くても、かける手間ひまは同じ

これらの商品を販売するサイトもユニークだ。

大手の食品宅配サービスが、食品ロスの削減と生産者の支援を目指して2021年4月からスタートした、ふぞろいの食材などを販売する新しいサイト「ふぞろいRadish」。

オイシックス・ラ・大地 らでぃっしゅぼーや 販売企画室・松山麻理さん:
一番最初のきっかけは、アコヤ貝の大量へい死というところで、数少ない生き残ってくれている真珠の中から、少しふぞろいのものであってもご紹介できたら、生産者さんの支援につながるかなと。それが支援につながればいいなと

このサイトに製品を提供するのは、真珠の養殖から加工まで手がける西予市明浜の生産者団体「無茶々園」。

2019年からアコヤ貝の大量へい死が続く中、追い打ちをかけるように新型コロナの影響で、海外でのジュエリーの展示会なども開催されず、大きな打撃を受けていた。

アコヤ貝の大量へい死で打撃
アコヤ貝の大量へい死で打撃

無茶々園 事業部・高瀬英明部長:
海外の市場シェアが真珠全体の8割くらいですので、コロナが落ち着かないと、まだまだ厳しい状態なのかなと思います。形が良くも悪くも、生産者としては、ひとつひとつかける手間ひまは同じ。適正に評価をしてもらって、少しでも価値をつけて生産者の方に返していく、という取り組みにつながりますので、私どもとしても今回のお声掛けはありがたいなと思っています

自然の恵みを無駄にせず、ふぞろいならではの美しさを楽しんでもらいたい。

“エシカル”な真珠の輝きには、生産者・販売者双方の特別な思いが詰まっている。

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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