これまで捨てるしかなかった工場の産業廃棄物が、“キャンプ用品”に形を変えてヒットしている。

「今治のホコリ」(提供:西染工)
「今治のホコリ」(提供:西染工)
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透明のケースに詰められた、青やピンクや黄色などのカラフルな綿。取り出してみると、まるで綿あめのような見た目だが、実はキャンプなどで焚き火をする際に使う「着火剤」なのだ。

1個40グラム入りで660円(税込み)。わずかな火花で着火し、10グラムで4~5分ほど燃焼するという。

湿気を防ぐケースに入っている(提供:西染工)
湿気を防ぐケースに入っている(提供:西染工)

商品名は「今治のホコリ」。その名のとおり、この着火剤は本当に“ほこり”でできている。タオルの産地として有名な愛媛・今治市の工場で、タオルを染色する工程で出た産業廃棄物なのだ。

染色後の乾燥の際に出たほこり(提供:西染工)
染色後の乾燥の際に出たほこり(提供:西染工)

そんな発想とユニークなデザイン、そして「埃(ほこり)」にも「誇り」にも受け取れるネーミングセンスがSNSを中心に話題になり、注文が殺到。一時期は品薄状態になり、購入点数に制限がかかっていたという。

悩まされた“火の付きやすさ”を利用

商品化したのは、今治市にある西染工。タオルをはじめとした繊維製品を染色加工する会社で、地球環境に優しい製品づくりに取り組んでいる。オリジナルのアウトドアブランド「THE MAGIC HOUR」を展開しており、「今治のホコリ」はそのラインアップの一つだ。

なぜ「今治のホコリ」のアイデアが生まれたのか。しゃれの効いた商品名はどのようにして決まったのか。商品事業部部長の福岡友也さんに誕生の経緯を聞いた。


――なぜこのアイデアが生まれたの?

キャンプで焚き火をしている時にふと思いついたんです。

もともとタオル業界では、染色後の乾燥時に出る綿ぼこりが火災の原因になってきました。漏電やショートによってパチッと火花が起きると、機械などに積もったほこりに引火して、ほこりが導火線のようになって瞬時に燃え広がってしまうのです。

そこで、それほど火が付きやすいものならば、焚き火をする際の着火剤にしてみてはどうだろうかと考えたのです。

元々私は年に何回かキャンプに行っていたのですが、コロナ禍で時間に余裕ができて、キャンプに行く回数が以前より増えました。そんな中で生まれた発想でした。

乾燥機のフィルターについたほこり(提供:西染工)
乾燥機のフィルターについたほこり(提供:西染工)

――商品化するまでは全て捨てていた?

そうです。これまでは毎日120リットルのゴミ袋2つ分を契約の業者さんに持って帰ってもらっていました。

乾燥機のフィルターにほこりがたまると効率が悪くなって無駄なエネルギーもかかりますし、放置しておくと火災の原因になってしまうので、1日7回ぐらい掃除をして、ほこりを取り除いています。


――なぜ商品名を「今治のホコリ」にしたの?

今治のタオルから生まれたほこりを使っているので、ストレートに「今治のホコリ」としました。

最初から「誇り」とかけようと思っていたわけではなく、むしろ、廃棄物である「ホコリ」を商品名にするのはまずいかなと思っていたのですが、他の商品名が全く浮かばなかったんです。

最終的に、プライドの「誇り」にもかけられるから良いのではないかということで、落ち着きました。

売れすぎて足りなくなったのはケース

――売れ行きはどう?

発売当初(2022年2月)から約20倍になりました。品薄になってしまい購入点数を制限させていただいた時もありましたが、今は解消しています。その時は注文が重なって、ケースの入荷が追いつかなくなってしまったんです。ホコリは売るほどあったのですが。

毎日大量に出るほこり(提供:西染工)
毎日大量に出るほこり(提供:西染工)

――多くの反響があることについてどう思っている?

ここまで話題になるとは正直思っていませんでした。


――使った人の反応でうれしかったものは?

アウトドアイベントなどで子どもたちに着火体験をしてもらった時の反応ですね。子どもって、ひとつ物事を達成すると喜ぶじゃないですか。

ほこりの色は偶然の産物、季節感も

――どのように作られているの?

まず、乾燥機のフィルターから取ったほこりから糸くずなどを取り除きます。次に、赤系や青系など、色ごとに大まかに分けます。色ごとに分けたほこりを20グラムずつ量って一つの塊を作り、それを2種類組み合わせて詰め合わせていきます。実は、詰める作業はほこりが飛び回るのでなかなか大変です。

ほこりの計量(提供:西染工)
ほこりの計量(提供:西染工)

詰め合わせる作業は女性社員が担当しています。最初は私もやっていたのですが、どうしても、迷彩柄みたいな地味な色になってしまって。そこで女性社員たちにお願いしてみたら、私では絶対に選ばないような色の組み合わせを作って、「かわいい、かわいい」と言っていたので、これがSNSで受ける「かわいい」ということなのかと…。もう私の出番はないですね(笑)。

ケース詰め(提供:西染工)
ケース詰め(提供:西染工)

――色は選べないとのことだけど、どうして?

その時作っているタオルからできる、いわば偶然の産物のようなものなので、「この色が欲しい」と指定されても用意するが難しい場合があるのです。

ちなみに、寒い時期だと暖色系のタオルの生産が増え、暑い時期だと淡い色が増えてくるので、季節によって「今治のホコリ」の色もちょっとずつ変わります。


――「今治のホコリ」の特長は?

一般的な着火剤はライターで火を付けるものが多いですが、「今治のホコリ」は、「ファイヤースターター」という火花を飛ばす道具でも着火できます。その火種を薪に移して火を大きくしていくという、焚き火を育てる工程を楽しんでいただけます。

また、素材が綿100%なので、石油系の着火剤を使った時に出る黒っぽい煙が出ないことと、匂いが少ないのも特長です。

ファイヤースターターで着火(提供:西染工)
ファイヤースターターで着火(提供:西染工)

――保管の注意点は?

湿気ないようにケースの蓋をしっかり閉めて保管してください。一概には言えませんが、正しく保存できていれば何カ月かはもつと思います。

偶然生まれた色合いを楽しめる(提供:西染工)
偶然生まれた色合いを楽しめる(提供:西染工)

なお、「今治のホコリ」はリフィル(詰め替え用40グラム330円、税込み)も販売している。

そろそろ夏休み。キャンプを予定している人は、「今治のホコリ」を使って火花から焚き火を育てる体験を楽しんでみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。