75歳以上の医療費の4割を現役世代が支える

政府の「全世代型社会保障検討会議」が今月中旬にとりまとめる中間報告では、医療制度改革の将来像が柱の一つになる。その最大の焦点が「高齢者の医療費の自己負担引き上げ」だ。

いまの制度では、 現役世代の窓口での自己負担割合が「3割」なのに対し、原則として、70~74歳は「2割」、後期高齢者と呼ばれる75歳以上は「1割」に抑えられている。

一方で、75歳以上の1人あたり年間医療費は、2016年度時点で平均91万円だ。65歳未満の 18万円の5倍に相当する。そして、その4割を現役世代の保険料が支える構図になっている。

「医療保険のクライシス」が3年後に到来?

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こうしたなか、喫緊の課題となっているのが「医療費の2022年問題」だ。

第一次ベビーブームの1947~1949年に生まれた「団塊の世代」は、3年後の2022年に後期高齢者の仲間入りをし始める。このため、75歳以上の人口は、2019年度の1809万人から、2022年度には1962万人に、団塊の世代すべてが75歳以上になる2025年度には2178万人へと、一気に膨らむ見通しで、医療費の大幅な伸びが予想される。

このままだと、現役世代が高齢者を支えるしくみが限界を迎え、公的医療保険が立ち行かなくなるおそれがあるのだ。
現役世代での賃上げが行われても、支払う社会保険料が増大すれば、その効果は減殺され、経済の好循環にも支障をきたす。

75歳以上も「2割」負担に

そこで、2022年度からのスタートを念頭に、高齢者にも負担を増やしてもらおうと、検討されているのが、75歳以上の自己負担割合の「1割」から「2割」への引き上げだ。
医療費負担をめぐる世代間格差を少しでも是正しようというねらいだが、実施方法をめぐって、現在2通りの案が浮上している。
ひとつめは、
①75歳以上の全員を一気に2割にする案、
もうひとつは、
②導入後に75歳に達した人から徐々に対象を広げるという案だ。

1年の差が明暗を分ける可能性も

①案の場合、これまで「1割」に慣れてきた75歳以上の人が、「2割」に引き上げられることになり、抵抗を感じるケースも多そうだ。他方、②案だと、いまも「2割」となっている70~74歳の人たちが、75歳になって「2割」が続いても、負担感の増大は避けられることから、②案のほうが導入がスムーズだという考え方がある。

しかし、②案だと、誕生年が1年違うだけで、「2割」と「1割」の差が生まれ、「逃げ切り世代」とそうでない世代の間で、生涯の家計負担に違いが出てくることになる。①案が望ましいとする意見は、公平性の観点を重視するものだ。

負担能力に応じた制度づくりを

一方、高齢になるにつれ、仕事から離れ収入が減る可能性が高くなる反面、医療を受ける機会は増えていく。このため、原則を「2割」とするにしても、負担能力に応じた制度設計を行うことが重要だ。

現在、75歳以上でも、「現役並み所得」(年収約370万円以上)がある人の窓口負担は、現役世代と同じ「3割」となっているが、こうしたしくみを維持したうえで、所得が一定以下の層は、生活に過度な負担がかからないよう、「2割」とせずに「1割」に抑える案が検討されている。

給付と負担でバランスのとれた将来像を示せるか

「全世代型社会保障改革」は、働きたい高齢者には健康で長く働いてもらい、全世代で負担を分かち合う制度づくりを目指すものだ。

支え手が現役世代に偏る構造の解消に向け、負担割合を引き上げるだけではなく、予防医療を拡大し、健康寿命を延ばして、雇用環境を整備する高齢者社会保障の将来の姿が示されなければならない。

給付の抑制と負担の増加をめぐり、バランスのとれた全体像を提示することができるのか、調整は大詰めを迎えている。

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【執筆:フジテレビ 解説委員 智田裕一】

【表紙デザイン:さいとうひさし】