日本社会のグローバル化が進む中、世界のどこでも生き抜くために英語力に対する需要はますます高まっている。
文科省も2020年度の教育改革で、英語の4技能、つまり読み書きだけでなく、聞く、話す、の4つの強化を打ち出している。
そこで教育のキモでは、英語力の伸ばし方について、東京インターナショナルスクールの理事長、坪谷ニュウエル郁子(つぼや・にゅうえる・いくこ)さんにお話を伺った。
坪谷さんは、娘さんの学校を探しているうちに、これという学校が見つからず、ならば自分で作ってしまおうということで東京インターナショナルスクールを設立した。
いまや日本に在住の外国人子弟、55か国から360名が通う、超人気校だ。
一方で坪谷さんは、日本人に向けたアフタースクールも作った。
「東京インターナショナルスクールを作ってみて、あらためて日本の教育の素晴らしさへの気づきがありました。日本人は利他的で共生能力が高い。一方で、日本人の子どもに欠けているのは自尊心、発信力、そして国際語としての英語の力でした。じゃあ、日本の学校が終わった後に通える学校を作ればいいと思いついて作ったのがアフタースクールです」(坪谷さん、以下同)
日本の親にとって共通の悩みは、子どもの英語力をどう伸ばすか?だ。
長らく子どもたちの英語教育に携わってきた坪谷さんの答えは明確だ。
「語学の学習は、その言語によって脳が刺激されている時間に比例します。私たちは18歳になるまでに、母国語の日本語に6万3000〜5000時間、接していると言われています。だからこそ私たちは日本語を使えるようになるのですね」
英語を習得するために必要な時間は?
アメリカの国務省は、英語話者が外国に赴任する際に日常会話ができるようになるために必要とされる時間をデータ化した。言語的に英語に近いグループから、遠いグループまでを4つに分け、一番近いグループ1にはフランス語、ドイツ語やスペイン語を。日本語は、最も遠いグループ4に振り分けた。
「日常会話ができるようになる時間は、グループ1でしたら480時間です。しかしグループ4の日本語は2400〜2760時間かかります。グループ1の5倍以上の時間がかかるということですね。このデータから日本語話者が英語で日常会話をできるようになるのも2500時間程度かかると推定できますね」
日本の中学高校の英語の授業はトータルで800時間弱。つまり日本人は、英語が下手なのではなく、そもそも絶対的に英語に接している時間が足りないのだ。
しかも、学術的に論文書いたりできるようになるには5000〜6500時間かかるだろうと言われている。
「ですから、たとえばいま子どもが9歳なら、何歳までに2500時間を達成したいか。逆算して日数で割っていけば、1日当たりの英語の学習時間が算出されますね。しかも、主体的に関わっていくこと。つまり読むだけではダメで、読んで書いて聞いて話す、と全部やらないといけません」
英語を学ぶには、何歳をゴールにしてやっていくかをまず決めて、積み上げていかないとダメだということだ。
早道は英語に囲まれている環境を身を置くこと。留学などで英語にどっぷりつかって日常生活を送ると「1年半か2年くらいで達成できます」という。
英語を学び始めるのにベストの年齢は?
「教育用語で臨界期と言われる9〜11歳くらいがポイントです。臨界期は言葉を1つの塊で覚えて、そのまま話せます。この臨界期をまたいで13〜15歳まで続けるとその言語は定着します。ただ、臨界期の前に覚えた言語は、音だけは何歳になっても発音することができます。身体が覚えているんですね」
年齢が低ければ低いほど英語の覚えは早い。ただし、9〜11歳をいかに過ごすかが重要なのだ。