重度のナッツアレルギーを持つロンドン在住のアートディレクター、ダニエル・ケリーさん(32)が、機内で客室乗務員に「ナッツを食べないようアナウンスしてほしい」と依頼した動画が3000万回以上視聴され、大きな議論を呼んでいる。アレルギー当事者にとっては“命に関わる”行為である一方、「乗客にそこまで求めるべきか」を巡って賛否が激しく対立した。
SNS・メディアで注目を集めるケリーさんは、学生時代に立ち上げたアレルギー啓発プロジェクト「May Contain」を通じて、外食や旅行のリアルな体験、最新の治療、心理的負担などを発信してきた。その活動は今や年間5000万回の視聴を集めるまでに成長したという。

大学の課題から始まった啓発活動

ケリーさんがアレルギー啓発に本格的に取り組み始めたのは大学時代。大学の課題で「アレルギーについて語る雑誌」を制作し、エピペン(自己アドレナリン注射)を医療の文脈ではなくファッション表現として見せることで、当事者以外の興味も引きつけた。雑誌は地元紙で紹介され、一気に海外へ拡散。Instagram、Facebook、TikTokへと広がり、現在のコミュニティへとつながった。

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その原点には、幼少期から続く重度アレルギー体験がある。

5歳のときの誤食をきっかけに、唇・目の腫れや蕁麻疹が出て重度のピーナッツ・木の実アレルギーと診断された。

症状は微量でも反応する。

・近くで袋を開けただけで粉を吸い込み反応
・触れただけでも蕁麻疹
・キス相手が直前にナッツを食べていても危険

最大のリスクはアナフィラキシーで、「エピペンは時間を稼ぐだけ。遅れれば脳に障害が残る可能性がある」と説明する。

機内で起きた“交差汚染”

2024年、ケリーさんは南米8か国以上を6か月かけて旅した。文化や食材の違いが大きく不安は尽きなかったが、アレルギーカードの携帯、事前調査、店への確認などの工夫を重ねて旅を成功させた。

旅の中で最も不安が大きいのが航空機内だ。

ケリーさんは通常、医師の手紙を持って最初に搭乗し、席・テーブル・アームレストを徹底的に拭いて、アレルギー物質などが器具や人の手を通じて伝わる「クロスコンタミネーション(交差汚染)」を防ぐ。

しかし2023年、拭き取りを怠った1回のフライトで、うたた寝から目覚めると腕に蕁麻疹が出ていた。客室乗務員が抗ヒスタミン薬を持っていたため症状は収まったものの、「もし唇に触れていたら」と今も恐怖が残るという。

機内アナウンス依頼動画が3000万再生 賛否割れる

ケリーさんがEasyJet機内でアレルギーアナウンスを依頼する様子を投稿すると、動画は3,000万回以上再生され、海外メディアにも取り上げられた。

コメントは大きく二極化した。

賛成意見:「命の問題なのだから当然」「私も次から勇気をもってお願いする」

反対意見:「自分はナッツを食べたいから我慢しない」「プライベートジェットに乗れ」「自己中心的だ」

「数時間ナッツを我慢できないという態度は、共感の欠如だと思う」とケリーさんは話す。

航空会社の対応にも差がある。イギリスを代表する航空会社British Airwaysや格安航空会社EasyJet、Ryanairは協力的だが、アメリカのある航空会社では「ポリシーにない」とアナウンスを拒否され、「嫌なら別の便に乗れ」と言われた経験もあると話す。

「アレルギーがあっても堂々と旅を」

ケリーさんは最近、アレルギー対応店を探せるアプリ「Trust Diner」を共同開発した。14アレルゲンで絞り込み、対応度を1〜5で評価できる。現在はホームページで、イギリスやオーストラリア、アイルランドで展開しているが、日本を含む国際展開も見据える。

SNSや学校での講演を通じて、特にアレルギーを伝えるのが恥ずかしいと感じる若者に向け、「当事者が堂々と過ごせる世界を作りたい」と強調する。

「アレルギーがあっても旅も外食もできる。大切なのは準備と、周囲の少しの配慮。その積み重ねが、誰かの命を守ることにつながる」

議論の裏側には、同じ恐怖を抱える人たちのために、声を上げ続けるケリーさんの覚悟がある。

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国際取材部
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シバリまりこ
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心は国際人:異文化を楽しむ主義
FNNロンドン支局。日独ハーフ。フジテレビ・ベルリン支局からロンドン支局に異動。ドバイのホテル勤務の経験も。