2024年5月14日の朝、首都高速5号池袋線下りの美女木ジャンクション付近で大型トラックが渋滞の車列に突っ込み、乗用車3台が炎上した。この事故で3人の命が失われ、3人が重軽傷を負った。
東京地裁は2025年11月4日、過失運転致死傷などに問われたトラック運転手の降籏紗京被告に懲役7年6カ月の実刑判決を言い渡した。裁判所が「前例にないほど犯情が悪い事案」と断じたこの事故。被告が重ねた重大な過失や順法意識の欠如が、判決で明らかになった。

炎上した車列…

裁判所が認定した事故の状況は、以下の通りだ。

被告が運転する大型トラックは、首都高速を時速約75~80キロで走行していたが、正常な運転が難しい状態に陥り、渋滞の最後尾の乗用車に追突。

この追突をきっかけに、計6台が巻き込まれる玉突き事故が発生した。そのうち3台が炎上し、事故直後、現場は黒煙に包まれた。

この事故で、54歳の男性、58歳の男性、42歳の男性の計3人が頭部損傷や多発損傷で亡くなった。

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また、負傷した被害者の1人は、高次脳機能障害の後遺症が見込まれる外傷性くも膜下出血などを負った。

高熱で睡眠不足も交替申し出ず

被告はなぜこのような事故を起こしたのか。
裁判所は、被告の体調について詳細に検証した。

判決によると、被告は数日前から高熱を発するなど体調不良にあったという。

検察側は、犯行当日も38度台の発熱があり、激しい喉の痛みや発熱を認識し、頭がクラクラする状態だったと主張していて、判決でも「自分の体調を十分に認識していながら、当時の勤務先に運転の交代を申し出ることもなく」運転を開始したと認定した。

不倫相手と深夜までLINEを…

事故の数日前から体調不良だった被告。

検察側によると、被告は深夜まで不倫相手の女性に「喉の片側だけ痛いのと熱がまた上がってきてて市販の風邪薬効かない」などとLINEのメッセージを送り、やり取りを続けていたという。

メッセージのやり取りは、事故当日の午前1時40分すぎまで続き、被告が会社からトラックを発進させたのは、そのわずか2時間半後の午前4時10分過ぎだった。

判決も、「その夜は十分に眠ることができなかった」と、睡眠不足について触れている。

体調不良の上、睡眠不足にも陥っていた被告は、休むことなく配送業務のためトラックを発進させ、その後、3人の命が奪われた事故が起きた。

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