虐待死した65人の子どもたち 孤独、引っ越し、予期せぬ妊娠が背景に

カテゴリ:国内

  • 1年間で65人の子どもが虐待を受け死亡
  • 過去最多の15万9800件超の児童虐待相談対応件数
  • 原則48時間以内の安全確認ルールの徹底は?

2017年度(おととし4月から去年3月までの間)に虐待を受け死亡した子どもは65人。
このうち13人は心中による虐待死だが、それ以外の52人は両親やそれ以外の大人から虐待を受け死亡した。
52人の内訳は0歳児が最も多く、28人と半数以上を占める。
その中でも14人が、生まれてその日のうちに亡くなっている。
この傾向は例年同様だという。

「遺棄」「予期せぬ妊娠」が主な理由に

なぜ生まれたばかりの子どもが死ななくてはいけないのか。
その大きな理由の一つとして、母親が抱える問題として「遺棄」してしまうこと、「予期しない妊娠」や「計画していない妊娠」があげられる。

また、虐待死にまで及んだ理由は「保護を怠ったことによる死亡」、そして「泣きやまないことにいらだった」ことが高い割合を占めた。

虐待死はあってはならないことだが、「泣き止まないことにいらだった」などは、他人事と思えない人もいるかもしれない。

5歳で亡くなった船戸結愛ちゃん

52人の中には、東京・目黒区で死亡した当時5歳の船戸結愛ちゃんも含まれる。
結愛ちゃんの死亡事件を契機に子どもの虐待に関して国が大きく動き出した。
1年3か月で児童福祉法や児童虐待防止法の改正案が成立したが、幼い子どもの命が奪われたことを考えると、早期の法改正は国として当然のことと思える。

虐待に関する専門家の検証委員会がまとめた昨年度の児童虐待の報告書では、「転居」をテーマに特集が組まれている。

2007年度~2016年度の虐待死事例のうち、心中と0歳児を除く381人のケースについて確認したところ、転居経験があるのは39.4%。
この子どもが同居する家族は「実父母」が最も多いが、「ひとり親」、「内縁関係」の順に並ぶ。

主な虐待者は「実母」「実父」「母親の交際相手」の順であり、実母のうち「10代で妊娠・出産を経験している実母」が回答の40%以上を占める。
地域との接触は「ほとんどない」と答えた人は、転居経験のない人に比べて、虐待傾向が高い傾向がある。
転居した後、孤独に耐えられなかった結果、子どもに矛先が向かう傾向があるようにもこの調査から感じた。

検証委員会は報告書で“新しい家族関係を構築するなど家族に大きなストレスがかかっている状況と、転居によって社会的な支援の希薄さや社会的孤立が深まっていることが想像できる。また転居によりこれまで築いてきた支援が途切れるなど、転居そのものがリスクを高める要因”としている 。

船戸結愛ちゃんも香川県から東京・目黒区へ転居後に死亡し、千葉県野田市で死亡した当時10歳の栗原心愛さんも沖縄県から千葉へ転居後に死亡した。

報告書では提言の一つとして、地方自治体に適切な引き継ぎで切れ目のない支援をすること、転居前後の具体的な情報の共有、転居情報を把握できる仕組みづくりの検討などが盛り込まれた。

10歳で亡くなった栗原心愛さん

過去最多の15万9850件 「面前DV」など心理的虐待が急増 

昨年度、全国212の児童相談所が、児童虐待相談として対応した件数は、15万9850件(速報値)。
1990年の統計開始以来、年々増え続けているが、前の年度からおよそ2万6000件増える結果になった。

子どもの前で配偶者に暴力を振るう面前DVなど心理的虐待は1万6000件ほど増えた。
警察などからの通告が増えたことも増加の要因で、厚生労働省は「大変重く受け止めている。児童虐待に対する意識の高まり、警察との連携の高まりの結果」としている。

詩梨ちゃん事件を契機に行われた緊急点検

2歳で亡くなった池田詩梨ちゃん

今年6月、札幌市で母とその交際相手の男から虐待を受け池田詩梨ちゃんが死亡した事件では、児童相談所が虐待の疑いの通告を受けてから原則48時間以内に安全確認する“48時間ルール”が守られていなかった。

国が、“48時間ルール”が着実に実施されているか調査したところ、去年7月20日から今年6月までに虐待通告を受けた子ども15万3571人のうち、9割は48時間以内に確認できたものの、1万1984人は時間内に確認ができなかった。
このうちの415人は“緊急性が高い”と判断され、家庭訪問や立ち入り調査で安全が確認された。

一方で、1万1569人は“緊急性が低い”と判断された。
詩梨ちゃんも“48時間ルール”が守られておらず、“緊急性が低い”と判断された事もあり、結果として命が奪われる事となった。

悲劇が繰り返されないために

2歳で亡くなった池田詩梨ちゃん

去年から今年にかけて相次いだ幼い子どもの命が奪われる事件。
根本厚生労働大臣は、児童虐待防止に向けた体制強化は待ったなしだとして、厚労省と各自治体の首長らと協議の場を設けている。
自治体側からは、地域の実情や地域性に配慮した施策が必要との意見や児童福祉司など専門性の高い人材確保や増員には財源の支援が必要などの声があがり、国は、自治体からの要望などを聞きながら、今後具体的な検討を進めていく。

現場の児童相談所だけを強化しても人も限られ、限界がある。
国と地方が一緒になってこの問題を真剣に考え、二度と同じような悲劇を起こさないために何ができるか、具体的な対策を含めた真剣な対応がそれぞれに求められている。

※冒頭、統計年度の説明部分を一部修正しました。(8月3日追記)