2025年のプロ野球、セ・リーグは阪神が両リーグ史上最速で優勝し、パ・リーグはソフトバンクが2年連続でリーグ制覇した。日本シリーズでは、第5戦の延長11回までもつれた熱戦を制したソフトバンクが5年ぶり12度目の日本一に輝いた。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2025年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2026シーズンを展望する。

3年目を迎えた新井カープ。しかし2025シーズンは政権史上最低の5位という順位に終わった。それでも、4年ぶりのタイトル獲得者が出たり、助っ人外国人に恵まれたりと、カープの未来へつながるものも多くあった。その明るい希望に迫る。

新井政権史上最低のシーズン5位

2025年10月4日、最終戦。試合終了後、新井監督はこう語った。

「今、チームは変革期にあります。変わろうとするとき、また新しい力が生まれるとき、必ず苦しみが生じます。来年以降もこの苦しみは続いていくと思います」

球場がざわめいた。

最終戦セレモニーでスピーチをする新井監督
最終戦セレモニーでスピーチをする新井監督
この記事の画像(10枚)

5年ぶりのAクラスに導いた、就任1年目。8月末までは首位を走っていたが、9月の大失速で4位に転落した2年目。そして、球団15年ぶりに借金は20、5位に沈んだ3年目。

この結果に加え、少し弱気とも捉えられる発言に、怒号も聞こえてくる球場。

「そこから逃げることなく忍耐強く立ち向かっていきたいと思います」

ファンは安堵の表情を浮かべた。

最終順位こそ5位ではあったものの、2026シーズンも続投となった新井政権。25シーズンで見えた明るい希望とは。

打撃タイトル2冠 小園海斗

2025年の打撃といえば、なんといっても小園海斗(25)だろう。

新たな背番号5を背負い迎えた2025シーズン。球団では鈴木誠也以来4年ぶりの首位打者、そして最高出塁率のタイトルも獲得。打撃タイトル2冠は、こちらも鈴木誠也以来4年ぶりの快挙を達成した。

小園2025年成績:
試138 率.309(セ1位)出塁率.365(セ1位)本3 安161 点47

だが、そんな小園も2025シーズン、ずっと調子が良かったわけではない。

5月4日のスタメン。そこに「小園」の名前はなかった。

5月4日のスタメンに小園の名前はなかった
5月4日のスタメンに小園の名前はなかった

チームでただ1人、全試合スタメン出場を果たした2024シーズン。

2025年1月、香川県での自主トレで、小園は「全部出て一流かなと思う。それをずっと続けていきたい」と力強く語っていた。しかし開幕して約1カ月半でその目標は絶たれた。

新井監督は「誰と戦っているのか見えないから外した」とスタメン落ちの理由を話した。

普段選手のことを悪く言わない監督が、厳しい言葉を述べた。その悔しさをバネに、新たな気持ちで再びスタメンに名を連ねた小園。

約2週間後の5月15日には初の逆転満塁ホームランを放った。

「情けない姿もあったけれど、絶対にやり返すという気持ちは忘れていなかった」

それは2日前にこの世を去った、野球を始めるきっかけを与えてくれた祖父に捧げる、特別な想いを込めた一発でもあった。

ヒーローインタビューに答える小園選手
ヒーローインタビューに答える小園選手

6月以降着々と右肩上がりに打率を伸ばしていった小園は、気がつけば首位打者、最多安打、最高出塁率と3つの打撃タイトルが狙える位置にきていた。

「打率は残したいけど安打も打たないといけないし、どうしたらいいのか正直わからない。けどおもしろい」

日々変動する3つのタイトルがかかる難しさも感じながら、それを楽しんでいるところが小園らしい。9月に打率を3割にのせると、そこから一度も3割を切らなかった。

首位打者が決定的となっている10月3日、小園はスタメンに名を連ねた。

新井監督は「(最高)出塁率は自分の力で獲りにいけ」と発破をかけた。
試合前、トップの阪神・大山と1厘3毛差で3位につけていた出塁率のタイトルを、自ら獲りにいける可能性が残されていたからだ。

そこで小園は勝負強さを見せる。第1打席で詰まりながらもレフトへのヒットを記録すると、第2打席ではショートへの内野安打。持ち前のバットコントロールを見せ、2打数2安打で最高出塁率のタイトルも確実にすると、自身初の栄光を手にした。

打撃タイトル2冠を獲得した小園選手
打撃タイトル2冠を獲得した小園選手

そんな小園はチームの日本人選手では唯一、2026シーズンのレギュラーを言い渡されている。世代を担った25歳の、さらなるレベルアップに期待だ。

助っ人ドミニカンコンビ

2026年に向けた明るい材料の1つに、ドミニカンコンビの活躍がある。ここ数年、新外国人選手の不振に苦しんでいた広島に、強力な助っ人が現れた。

シーズンを通して主にクリーンナップで活躍したファビアン(27)は、チームトップの打点・HRを放ち、主に長打で貢献。

ファビアン 2025年成績:
試138 率.276 本17 安149 点65

そしてモンテロ(27)も開幕直後にはけががあったものの、6月からはほぼすべての試合に出場し、勝負強い打撃で活躍した。

モンテロ 2025年成績:
試105 率.255 本9 安94 点41

2人を象徴する試合は8月16日。先発・森下は防御率こそ低いが、球団ワーストとなる8試合連続で黒星中。打線の援護に苦しんでいる状況だった。

同点で迎えた6回、レフトスタンドへ豪快な一発を放ったのはモンテロ。その瞬間、普段は感情を表に出さないタイプの森下が、両手を天につきあげ喜びを体で表現した。

その直後には休養目的でベンチスタートだったファビアンが代打で登場すると、盟友の一発に続き、アーチを描いた。

モンテロはヒーローインタビューで、「森下がめちゃくちゃ粘り強く投げていたので最高の結果が出てよかった」と振り返り、ファビアンも「2人で打てて非常にいい気分」と喜びを露わにした。

結果これが決勝点となり、球団7年ぶりとなる助っ人外国人2人のアベック弾で、森下を2か月以上ぶりの勝利へ導いた。

モンテロ選手とファビアン選手
モンテロ選手とファビアン選手

またファビアンは打撃だけでなく、陽気な性格も人気を集めている。

試合が雨で長時間中断したとき、チームの雰囲気を盛り上げたのがファビアンだった。

ベンチで防具をつけるファビアン選手
ベンチで防具をつけるファビアン選手

なんと、ベンチで會澤のキャッチャー防具を付けて登場したのだ。

サービス精神旺盛なその姿は、チームの雰囲気を明るくすると同時に、カープファンの心を大いにつかんだ。

會澤選手の防具を付けたファビアン選手
會澤選手の防具を付けたファビアン選手

球団はもちろん、2026シーズンも2人のドミニカンと契約。かつてのエルドレッド・バティスタコンビのように、優勝の引き金となってほしいと願っているファンは多いだろう。

遅咲きのドラ1 …レギュラーの覚悟

あのドラ1が、やっと開花した。

2017年夏の甲子園で多くの歴代最多記録を更新し、地元広島のカープ球団からドラ1指名を受けた中村奨成(26)。

しかしその目覚ましい記録とは裏腹に、プロでの生活はそう甘いものではなかった。入団から7年間、レギュラーの座を掴むことはできずに1軍と2軍を行き来。

広陵の大先輩でもある、巨人・小林誠司に憧れてつけていた背番号「22」は、2024シーズンには96になった。そして捕手として出場したいという願いはおろか、ついに外野手登録になった。

シーズンが終わって行われた契約更改では、球団から「お前のポテンシャルにもう1年かけてみる」と檄を入れられた。

その悔しさを見事に晴らした25シーズンとなっただろう。

開幕こそ1軍スタートとはならなかったが、4月2日に1軍に昇格。徐々にスタメン機会を増やし、負傷で離脱することとなった7月中旬まで1軍に帯同し続けた。

昨シーズン開花した中村奨成選手
昨シーズン開花した中村奨成選手

負傷から約10日。大野練習場でリハビリに取り組む中村の姿には、レギュラーとしての自覚が垣間見えた。

中村選手は、「チームもまだ5位だし、後半戦まだ60試合くらいあるので1試合でも力になりたい。なるべく早く復帰したい」と決意を述べた。

けがから3週間後には、歓迎を受けながら1軍に復帰し、主に1番センターで試合に出続けた。

結果キャリアハイを大きく上回る104試合に出場。目標としていた100安打にはあと少し届かなかったものの、飛躍を遂げたシーズンとなった。

HRを放った中村奨成選手
HRを放った中村奨成選手

中村奨成2025年成績:
試104 率.282 本9 安97 点33

高卒8年目でようやく開花した26歳の、2026シーズンへ掲げた目標は「全試合出場」。

飛躍のシーズンで得たレギュラーの自覚とともに、さらなる活躍が楽しみだ。

他にも26シーズンへ期待のかかる選手はたくさんいる。特にシーズン後半、出番を多く与えられた若鯉たちには、育成から支配下になった選手や、ルーキーなど多くの希望が見えた。

2026シーズン、4年目となる新井政権。昨シーズンの悔しさを晴らすべく、選手たちがどんな活躍を見せてくれるのか。忍耐強く試合に立ち向かう新井鯉に注目だ。

(文・広島担当 新津佑妃乃)