2025年のプロ野球、セ・リーグは阪神が両リーグ史上最速で優勝し、パ・リーグはソフトバンクが2年連続でリーグ制覇した。日本シリーズでは、第5戦の延長11回までもつれた熱戦を制したソフトバンクが5年ぶり12度目の日本一に輝いた。
フジテレビ系列12球団担当記者が、そんな2025年シーズンを独自の目線で球団別に振り返り、来たる2026年シーズンを展望する。
ミスターレオが決めた「人生の大英断」と、それを見守る後輩、同僚の想い。
26年、西武が迎える大きな「節目」とは…
“異例”1年前の引退表明
2025年シーズンを振り返る前に、オフシーズンにビッグニュースが飛び込んできた。
西武一筋24年、“ミスターレオ”、栗山巧(42)が会見し、異例とも言える1年前の引退を表明した。
栗山はプロ25年目を迎える2026年シーズンでの引退をシーズンが始まる前に宣言。その理由については、「今の僕の気持ち、何か伝えられるものを見てもらいたい。そういう思いからこうなりました」と話した。
巧みなバッティング技術で、積み上げた安打数は2150本。
日本一は1回、リーグ優勝3回。常に背中でチームを引っ張ってきた。
そんなレジェンドは来年、25年目のシーズンをもって野球人生を締めくくる。
取材を通して、栗山が語ってくれた言葉や、チームメートの言葉などは、記事の最後に記す。
前例を打ち消し打線を引っ張ったルーキー
2024年、わずか39試合で自力優勝が消滅し、最下位に終わった西武ライオンズ。
チーム打率は.212とパリーグ最下位で、打線が力を発揮できなかった。
そこで、西口文也監督が掲げたのは、今井達也(27)や隅田知一郎(26)や髙橋光成(28)など、先発陣が試合を作り、守護神の平良海馬(26)につなぐ「守り勝つ野球」だった。
迎えた開幕戦、開幕投手には2年連続で今井が指名された。
日本ハム打線相手に9回2失点と試合を作るも、打線が1点も援護できず、完封負け。するとこのカード一度も勝てず、開幕3連敗を喫した。
2024年シーズンと同じ、打てずに負ける姿が脳裏をよぎる。この苦しい状況を打破したのは、ルーキーだった。
ドラフト2位で入団した渡部聖弥(23)は、開幕3連敗の中でも、打率4割5分5厘(11打数5安打)とロケットスタートを決めると、その後もヒットを量産し、ルーキーながら主力としてチームを引っ張った。
渡部聖弥3・4月成績:打率.435 9打点
さらに、来日一年目の助っ人、ネビン(28)の活躍も大きかった。
主に4番に座り、得点圏打率3割超えの勝負強いバッティングを披露すると、ファーストの守備ではゴールデングラブ賞を獲得した。
ネビン2025成績:
打率.277 21本塁打 63打点 得点圏打率.308
ルーキーと助っ人の活躍で投打が噛み合いだした西武は、交流戦を終え、4位ながら37勝31敗と貯金を作った。
狂いが生じた守り勝つ野球
交流戦明け直後の3カードは非常に重要だった。首位日本ハムとの3連戦を皮切りに、2位オリックスと2連戦、3位ソフトバンクと3連戦。上位チームとの落とせない試合が続いた。
結果は、2勝6敗と大きく負け越し。
夏場に入り、投手陣も打撃陣も両方調子を落とした結果だった。上位チームとの力の差ともいえる。
大失速した西武は、前半最終カードも3連敗を喫し、交流戦まであった貯金もなくなり、借金3で前半を折り返した。
後半に入り、立て直したかったところだが、一度失速した流れは、最後まで変えられなかった。去年よりチーム打率は上がったものの、打率、得点共にリーグ最下位。守り勝つにも、一年間の戦いでは限界があった。
順位は最下位を免れるも、Aクラスにはほど遠い5位で2025年シーズンが幕を閉じた。
西武ライオンズ2025年成績:
63勝 77敗 3分け 勝率.450
防御率2.99(パ3位)
打率.232(パ6位)
若手台頭!昨季の経験を今季へ
チームの変革期は、若手にとって定位置獲得のチャンスだ。
強いライオンズ復活へ、多くの若獅子が経験を積んだ。その中で、今シーズン最も飛躍したのは西川愛也(26)だろう。
8年目の昨シーズン、主に1番センターを任されると、オールスターにも選出されるなど、全てにおいてキャリアハイの数字をマーク。
8月2日のロッテ戦では、球団70年ぶりとなる1試合6打数6安打の離れ業を見せた。
さらに打撃だけでなく、広い守備範囲と球際の強さが光った守備が評価され、ゴールデングラブ賞のタイトルを獲得した。
西川愛也 2025年成績:
打率.264 10本塁打 38打点 26盗塁 出塁率.318
西川は昨シーズンについて、「初めてこんなに試合に出させてもらった中で、バッティングの波がまだ少し大きいところがあるので、その波のブレをなるべく無くせるようにやっていきたい」と振り返った。
西川と同様、大ブレイクを果たしたのは、身長164㎝と小柄ながら、大きな存在感を示した4年目の内野手・滝澤夏央(22)。
広い守備範囲とスピードで、人々を魅了するダイナミックなプレーの連続で、セカンドとショートどちらもハイレベルにあり、何度もチームを救った。
さらに今季は課題だったバッティングも進化。5月17日のオリックス戦では、6打数4安打でプロ初のサヨナラヒットを記録し、オールスターにも出場した。
滝澤夏央 2025年成績:
打率.234 14打点 21盗塁
滝澤は、「レギュラーを目指してこの1年間やってきましたし、守備というのは大事にしているところで持ち味でもあるので、そこは今年一年間で少しは自信になった」「守備は僕の中で生命線。いいプレーをすると心も乗ってくるというか、バッティングにも繋がるので大事にしている」と話す。
投手では3年目の山田陽翔(21)が大ブレイク。4月3日の楽天戦でプロ初登板を果たすと、そこから15試合連続無失点。
中継ぎとして欠かせない存在となると、終わってみれば49試合に登板し防御率は2.08と圧巻の内容。契約更改では329%アップの推定年俸3000万円を勝ち取った。
今井のメジャー挑戦&異例の大補強
多くの若手が着々と育ち、まだまだ課題を胸に秘めている中、これまでチームを引っ張ってきた選手がチームを旅立つこととなった。
3年連続二桁勝利、絶対的エースの今井達也がメジャー挑戦を表明し、アストロズへの入団が決まった。チームにとって、とてつもない痛手だ。
ただ、チームは今オフ異例ともいえる大補強を敢行した。
DeNAからFA宣言していた桑原将志(32)外野手と、日本ハムからFA宣言していた石井一成(31)内野手の獲得を発表。球団史上初となる同一年に2人のFA選手を引き入れた。
さらに、台湾代表の林安可(リン・アンクウ)外野手(28)との契約にも合意し、ソフトバンク、巨人などで活躍した、アンダースローの高橋礼投手(30)と育成契約を結んだ。
4年ぶりのAクラス入りを目指し積極的な補強に動いている。
ライオンズ一筋・栗山巧 来季25年目を締めくくりの年に
2025年11月24日、栗山巧は、今シーズン・25年目の節目を締めくくりの年にすると発表した。
近年、低迷が続いている西武ライオンズについて、栗山は2025年のシーズン開始前、「強い西武ライオンズを先輩から受け継いできて、良い伝統が引き継がれていくように、ここでまた力を出していく、力がいることだと思うんですけど、戦っていく姿を後ろにつないでいく、新たな伝統の一部分になれたらなと」語っていた。
強いライオンズ復活へ、強い時代を経験してきた栗山だからこそ、チームにかける思いは人一倍強い。
チームを背中で引っ張る姿を、後輩はちゃんとみていた。
メジャーリーグ・アストロズへの入団が決まった今井は、「出場が無くても毎日グラウンドに最初に来て、毎日同じようなウォーミングアップをしているのを、いつも僕だけじゃなくてチームメートのみんな見ていると思うので、そういうところの準備という部分でもすごく尊敬しています」と話す。
同期の中村剛也(42)は「今は40歳以上が2人しかいないし、みんな若いので、ずっと2人で話すのは多いですね。ああじゃないこうじゃないとかそんな話ですよ、基本は野球ですね」と評する。
炭谷銀仁朗捕手も、「栗山さんと中村さんの間がだいぶ空いていて、若い子達が多い中、いろんなことを(自分が)やらなくてはいけないかなと感じています」と話した。
“信頼と実績の栗山”として、選手、ファンに慕われてきた。
そんな栗山は、2025年のシーズンが始まる前に、こんなことを言っていた。
栗山:
好きで始めた野球なんですけどね、仕事っぽくなってきちゃって、もう一回野球が好きだって気持ちを思いだして、楽しむって言うとあれなんですけど、しっかり味わえるようにかみしめるようにやりたいと思います
ここ数年、不調などで苦しむことも多かった。どう締めくくるかというのを、少なからず考えていたのだろうか。
栗山は引退を表明した会見で、こう決意を述べた。
「すべてを出し尽くして、必ず優勝する。その一員としてメンバー入りして頑張っていきたい。そういうシーズンにしたいと思います」
野球をかみしめながらプレーする栗山を目に焼き付けることが、ファンにとって最大の恩返しなのかもしれない。
(文・西武担当 間下弘規)
