年末の特別企画、熊本市の大西一史市長をTKUライブニュースのスタジオに招き、時間の許す限り、さまざまな質問に答えてもらった。今回は8月の記録的大雨への対応と交通問題に対してだ。
復旧に向けて最大限スピーディーに
まず2025年8月に起きた記録的大雨。熊本県内では死者4人、そして依然1人が行方不明となっている。また、北区清水万石の6世帯に対しては現在も避難指示が継続中で、熊本市ではこれまでに家屋被害の罹災証明が2100件以上発行されている。

また今回の大雨では『内水氾濫』によって車の水没が多かったのも特徴だ。地域住民に川の水位上昇を知らせるサイレンの吹鳴が遅れる人為的ミスやポンプ場の機能停止など、課題も明らかになった。2025年の大雨被害、大西市長はどう総括されているのか。

大西一史熊本市長:
多くの方が被災され、まずはお見舞いを申し上げたい。その上で、いろいろな課題があるが、線状降水帯によって急激に増水するので、油断をしないようにしていただきたいし、我々も防災体制、サイレンの吹鳴も自動で鳴るようにした。被災者の支援策も12月議会に提案して可決されたので、復旧に向けて最大限スピーディーにやっていきたい。必ず次の出水期は来るので、それに備えて態勢も整えていきたい。

今回の『内水氾濫』についてはさらに検証を進めるということだが、次への備えについては?

大西一史熊本市長:
止水版設置の費用の助成をスタートする。多くの方に備えてほしい。ポンプ場の能力もアップしていくが、少し時間がかかる。これからしっかり計画を立ててやっていきたい。
10月に開通した熊本西環状道路
続いては交通渋滞の問題。まずは熊本西環状道路について、花園インターチェンジと池上熊本駅インターチェンジ間が、10月に新たに開通した。

熊本市の調査結果も発表されたが、TKUでも開通前後で朝ラッシュ時の渋滞や所要時間がどう変化するか、西環状と国道3号線でそれぞれ検証を行った。北区役所からJR熊本駅まで西環状を使うと、どちらも40分台。そして国道3号線の場合は開通前後で10数分の短縮につながっていて、結論としていずれも渋滞緩和の効果が出ている。

大西一史熊本市長:
整備に時間がかかったが、池上工区が完成し、多くの方に通行いただいている。時間の短縮効果、多くの方が迂回することで、3号線の渋滞も少し減少することで、浄行寺交差点では1キロも渋滞が減ったデータが出ている。確実に効果は出ている。開通した後、西環状道路の前後の道で渋滞が確認されているので、県や関係機関と一緒になって取り組んでいる。

渋滞緩和をもっと進めるためには、公共交通の利用促進が必要とされているが。

大西一史熊本市長:
多くの方にバス・市電を含めて乗ってほしいと思うが、利便性が悪いと車のほうが便利だから乗ってしまう。運転士不足や運行トラブルなどをなくして、確実な基盤を整備し、公共交通を安定的な運行で快適なものにする。実は今日、3両編成の新型車両が熊本市電に導入された。少しずつ快適な乗車環境を整えていきたい。
課題山積の公共交通 運輸連合とは
一方で、公共交通には運転士不足という大きな課題がある。運転士確保への行政の支援、どう考えているか?

大西一史熊本市長:
バス会社もいろんな形で取り組みをしているが、これから熊本市もヨーロッパでしかやっていない『運輸連合』という形で、バス会社それぞれが連合を組んで行政も公的に支える枠組みを作って待遇改善。運転士がほかのバス会社とも連携して運行することで、利便性の高く、効率性も高まれば、少ない運転士でもいい運行ができるようになる。それが『運輸連合』として目指していければ。

この運転士不足による路線再編が出ている。九州産交グループは松橋・宇土エリアの拠点だった自社の営業所を廃止し、10月から熊本市内への直通路線も廃止した。地域の拠点をJR松橋駅に移して、バスは駅との結節に徹するという路線再編だ。

バスと鉄道が地域の中で役割分担するケース、今後増える可能性が指摘されているが、こうした再編について、どう考えるか。

大西一史熊本市長:
こうした再編も進めることも大事だが、いままで廃止されると不便という考えが、今までの枠を超えた連携につながっていく。これがユーザーの利便性につながる。そういった再編は行政としても支援したい。

運輸連合の話も出たが、大西市長のマニフェストにも『交通事業者の枠を超えた新たなマネジメント会社』があるが、運輸連合を指しているのか。

大西一史熊本市長:
例えばだが、『熊本都市圏交通公社』のようなものを連合をみんなでつくって、いろんな会社が例えば出資をするようなかたちで、行政も出資してやっていくことで。ヨーロッパや韓国でもやっていたと思うが、取り組みが進んでいる。日本ではまだ進んでいないので、試行的にやろうと。共同運行をバス会社5社がやることも、先のマニュフェストで掲げていたもので実現している。これはその次のステップ。来年はそんな年にしていきたい。公共交通を担う意味では、タクシー会社やチャリチャリのような会社も入ってくると、車を使わずに移動できる足が増えていく。そして、都市圏全体をカバーしていく。熊本市内だけではなくて、つながりができることが大事。

交通に関連してもう一つ聞きたいのが『自動運転バス』について、2025年は2度にわたる実証運行が行われた。状況に応じて手動運転が可能な『レベル2』だったが、熊本市は特定の状況下で人が一切運転しない『レベル4』を目指している。2026年はどんな取り組み、そして目指す自動運転の運行とは。

大西一史熊本市長:
今回は南熊本から桜町辺りまでを自動運転の実験をした。多くの方が乗っていただいて、アンケートで90%以上が「また利用したい」という結果だった。比較的受け入れられると思っている。ただ、安全面でどうかということは検証し、運転士不足に有効だと思うので、街中の路線でうまくいけば、郊外で利便性を高めることにも活用できる。国の支援が財政的に必要なのでお願いしたいし、全国でも取り組みが進んでいるので、視察をしたり研究して熊本方式でやっていきたい。
(テレビ熊本)
